連載 間の間・8
帯電生活—「はっくしょん」「ブレス・ユー」
伊藤 亜紗
1
1東京工業大学リベラルアーツ研究教育院
pp.433
発行日 2019年9月15日
Published Date 2019/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689200652
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ボストンに住んでいると、アメリカ人って散漫だなあと感じる。気が散っているのだ。別の言い方をすれば、まわりのことによく気がつく。そしてためらいなく声をかける。
たとえばバスに乗って足を組むと、向かいに座っていた女性が「その靴下すごく好き」と褒めてくれる。あれ、あなたさっきまでスマホの画面に見入っていなかったっけ? いったいいつの間に私の靴下に気づいたの? たぶん「ふと視界の隅に入った」程度だったのだろうけど、たかが靴下程度のこと(と言ったら彼女に怒られるかもしれないが)でも、それが気になったらパッとスマホから離れて声をかけてくるのだ。
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