精神看護 20巻4号 (2017年7月)

特集 “精神看護”という、一見外側からは見えにくい学問を、学生にどうやって教えるか。

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「精神看護学」という、形のないものを教える立場の人の多くが、どのように教えればよいのかについて迷いをもっています。

学ぶ人の主体性を引き出すにはどうしたらよいのか、協同的な時間にするにはどうしたらよいのかという教授法についても、見本を見る機会が少ないなかで孤軍奮闘しています。

そこでこの特集では、学校の教員を中心とする執筆者の方々に、「私はこういう工夫をし、こんな方法を取っています」ということを紹介いただきました。

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自らの考えをベースに答えを探す練習として

 一方向講義による知識伝達は、単一解(最適解)を伝えることに向いているのに対して、学生同士や教員との間での双方向性のやりとりで進行するアクティブラーニング(Active Learning)は、妥当解や周辺の知識を獲得しやすいという特徴があります。精神看護学は、最適解よりも妥当解によって行動する場面が多い*1・2ので、アクティブラーニングに向いていると言えます。学生が主体性をもって学ぶ環境を作ると、教員としても楽しいと感じます。

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“精神”を教えるってどういうことなんでしょうね

 精神看護学を学生に教える立場となり10年が経過した。科学的根拠に基づいた実践が重要視される医療現場において、精神という、一見外側からは見えにくい事象を取り扱う学問を学生に教えるのは、なかなか至難の業である。

 精神看護学における知の力は、最終的には★1精神疾患という病を抱えた対象者を理解し、支援の手立てを構築するためにある。対象を理解する営みというのは、「知る」といった情報量の有無だけにとどまらない。そこには、人間が精神を病むという人間存在への本質的な理解が不可欠であり、そのためには、事象をさまざまな角度から検証するための肺活量が必要となってくる。また、講義や演習、実習を通して、学生自ら、精神疾患に対するイメージを検証し★2、専門職としてのあり方を模索する作業も必要になってくる。

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実習中にプロセスレコード発表会をする

実習中は毎日がプロセスレコード

 精神看護学実習では、患者さんとの相互作用を通して相手や自己を理解することが大切です。そのため本学では、実習中にプロセスレコードを2回書くようにしています。実習中の日々の記録も、問題解決型の様式ではなく、学生のかかわりと患者さんの反応を具体的に書くことができるようなものになっています。ですので、本学の精神看護学実習では、毎日プロセスレコードを書いているようなものだと思います。

 記録用紙には枠がありません。初めは何を書いてよいのかわからず戸惑う学生もいますが、会話したことや観察したことを第三者にも状況が伝わるように詳細に書くように指導すると、臨場感のある記録ができるようになります。このような記録ができると、その場に居合わせなかった教員や臨地指導者にも、患者さんのことがよくわかります。

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ACTの衝撃

⦿「いつか地域で」という思いに火をつけてくれた本

 筆者がACTという言葉を初めて知ったのは、『こころの医療宅配便 精神科在宅ケアの事始』(2010)*1という本である。これは京都市でACT-Kを立ち上げたたかぎクリニックの院長・高木俊介氏が、ACTの立ち上げから支援の実際まで、現場で奮闘するスタッフの活動を記録したものであり、病棟で勤務していた自分にとっては衝撃的な内容であった。

 当時の筆者は、長期入院患者の退院支援やアルコール依存症患者の看護を中心に携わり、そのなかで長期入院患者が退院できた時の喜びや、アルコール依存症者が退院後も断酒を継続し回復していく姿を見て、精神看護のやりがいや楽しさを見出していた。だがその反面、再入院も多く、そのたびに憤りや無力感を感じ、自分自身の看護に自信がもてず葛藤していた時期でもあった。

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救命救急ナースに聞いてみてわかった、あちらの需要とこちらの思いのズレ

救命救急病棟では、精神科からの搬送を受ける時に、どんな情報を必要しているのでしょう。今回、精神科専門看護師の中村創さんが、先方にじかに質問してみました。

するとわかったのは、「緊急搬送時に必要な情報」と、「容体が安定してから必要になる情報」は違う、ということでした。

そこでこの特別記事では、「段階的に2回に分けて書く」新しいサマリーの形を提案していきます。

これにより、送る側、受ける側、双方の時間と労力が削減できそうです。

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こんにちは 水谷緑と申します

4月12日に「精神科ナースになったわけ」(イースト・プレス)という本を出させていただきました

今回はこの本を紹介させてくださいませ

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クロス書評

お互いに本を書評し合いました!

滝川一廣氏と青木省三氏は、共に中井久夫氏(精神科医・神戸大学名誉教授)に学んだバックグラウンドをもつご朋友の関係。時のめぐりあわせか同時期に出ることとなった2つの新刊を、お互いに書評していただきました。

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 日本で作業所や地域活動支援センターを当事者が運営するといった形が見られ始めたのは1970年頃。その後諸外国の取り組みを参考に厚生労働省が制度化し、障害者自立支援法では「ピアカウンセリング」が明記されました。現在は、入院中の長期入院者の元へピアが訪問するといった「ピアサポート」が、障害者総合支援法に基づく地域生活支援事業のメニューの1つとして加わっています。

 皆さんの病院ではピアサポート事業は行われていますか?

 2009年の実態調査では、ピアサポーターを病院へ訪問させている事業所は全国に42と報告されています*1。以来8年が経ちますが、まだピアサポーターを活用できていない病院のほうが多いようです。

 石川県の七尾松原病院は、民間病院でありながら現在病棟を削減し、地域移行を進めています。そしてその動きを側方的に支援しているのが、地域で暮らす当事者、ピアサポーターたちだそうです。そこで今回、ピアサポート事業に参加している当事者である飯井司さんに、活動の経緯と今感じていることをうかがってみることにしました。

 これからピアサポート事業に挑戦しようと思っている皆さんにとって、飯井さんの経験談が参考になれば幸いです。

連載 訪問看護で出会う“横綱”級ケースにくじけないための技と型、教えます・2

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症状なのか感情なのか

 対人援助職の経験が長い人ほど、利用者さんから激しい怒りや攻撃性を示されて、その対応に疲れ切る経験をしていると思います。妄想や幻聴から表出された攻撃性であれば明らかな精神症状なので、「ケアとしてどう組み立てていこうか」と前向きに考えられますが、ちょっとした言葉尻を捉えて「俺のことをバカにしているんだろう」「俺を見くびって軽くあしらっているんだろう」といった攻撃を受けると、支援する側も疲弊します。

 初回面接時に支援者に対してスーパー家政婦のような過剰な援助を要求してくる人も多くなってきています。「しんどい私をどうにか支援するのが支援者の役割ですよね?」「支援者は私たちの代わりに動くのが当然ですよね?」。そんな要求のされ方をしたら、あなたならどのように支援を展開しますか?

連載

べてる新聞『ぱぴぷぺぽ』・116

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 「納棺師」という職業は、映画『おくりびと』(滝田洋二郎監督)が第32回日本アカデミー賞最優秀作品賞(2008年)、海外では第81回アカデミー賞外国語映画賞(2009年)を受賞するなどして、日本でも一躍有名になった。最近ケーブルテレビで放映されているスイスの人気ミステリードラマ『納棺師の事件ファイル』の主人公も、元刑事の納棺師である。

 今回紹介するのは、英国とイタリアの合作映画『おみおくりの作法』である。原題は“Still Life”。その意味は「静物画」もしくは「静物」である。この邦題にしたのは『おくりびと』にあやかろうという魂胆からだろうか。描かれているのは作法ではなく、人物なのに。

連載 失恋の話を聞きまくる男たち。桃山商事・19

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今回ご紹介するのは、28歳の会社員・奈々子さんのエピソードです。彼女は7か月つき合った恋人と別れ、我々の元へやってきました。彼との出会いは友人と一緒に参加した婚活パーティ。そこで3つ年下の消防士・Kさんとマッチングが成立し、3回デートを重ねた後に「つき合って欲しい」と告白され、交際がスタートします。「正直言うと彼の外見はあまり好みではなかった」という奈々子さんですが、つき合いを重ねるなかでKさんの真面目で誠実な人柄に惹かれていき、最終的には彼をカッコイイと思うほどゾッコンになったようです。

ところが、交際7か月目のある日、突如別れがやってきます。いつものようにデートをしていた週末、彼から改まった面持ちで「大事な話がある」と言われ、移動したカフェで「別れてほしい」と切り出されたそうです。「このままつき合っても結婚を考えられない」というのがその理由でした。

書論

中動態の歌 伊藤 亜紗
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1 世界に対してできる作用

 15年ほど前に、初めてバリ島のウブドという村を訪れた時のこと。薄靄の中で目が覚めた私は一瞬、国立競技場のピッチのど真ん中、しかもサッカーW杯の決勝戦がまさに行われているピッチのど真ん中に自分が横たわっているのではないかと錯覚した。満員の観客席から湧き上がる歓声にも似た、地鳴りのような生き物たちの大合唱が、夜明けのウブドを包んでいたのである。ホテルといっても壁のない部屋で私は、天井から吊られた蚊帳の中でじっと横になったまま、ジャングルのあらゆる葉の陰、あらゆる石の下、あらゆる水の辺に生き物がいて、それら一匹一匹が自分に可能な方法で音を出し、満足し、また沈黙に帰っていく様子に、じっと耳を澄ませていた。

 虫もいたし鳥もいたしトッケイという鳴くヤモリもいた。面白いのは、この大合唱には時間的に移ろう「模様」のようなもの、パターンの変化のようなものがあったことだ。もちろん楽譜はないが、かといってただのカオスでもない。右の藪からある種類の虫の声がわーっと聞こえてきたかと思えば、今度は奥の田んぼから別の種類の虫が一斉に声をあげ、その音の層に穴を開けるようにトッケイが鳴き始め、その違和を埋めるようにして樹冠で鳥たちが鳴き出す。そんな具合に、ゆるやかな構造が生まれては消え、消えてはまた生まれながら、生き物たちの大合唱は日が昇るまで続いたのである。

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基本情報

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精神看護
20巻4号 (2017年7月)
電子版ISSN:1347-8370 印刷版ISSN:1343-2761 医学書院

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