訪問看護と介護 22巻4号 (2017年4月)

特集 開いてわかった! 「保健室」と地域の姿

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全国で「保健室」が広まっています。社会的な意義の理解も進み、「わが町にも保健室を」という声まで聞かれるようになりました。

そんな“揺籃期”にある保健室ですが、現状、制度と紐づく取り組みではありません。そのため、「実際に運営を開始させるには?」「地域の理解を得て、活動を軌道に乗せるには?」など、運営上の疑問が湧いてきます。「来訪者への対応」という点でも、専門職として培ってきた経験だけでカバーしきれぬ難しさがありそうです。

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東京都新宿区。都営大江戸線東新宿駅から徒歩5分ほどの場所に、「暮らしの保健室」はある。戸山ハイツという高齢化50%を越える大型団地の一角に、2011年7月にオープンされた。ここは近隣住民が健康や生活のこと、医療・介護のことを気軽に相談し交流できる場だ。平日は毎日オープンしており、予約不要・無料で、誰でも利用できる空間となっており、ボランティア・利用者・来訪者は年間、延べ5000人にのぼる。

暮らしの保健室の試みは人々の共感を生み、現在、全国各地で「保健室」が展開するに至っている。こうした動きを、暮らしの保健室を開設した秋山正子氏はどのように見ているのだろうか。現在の保健室の発展、「暮らしの保健室」の活動において一貫して大事にしてきた考えについて話を聞いた。

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 「コミュニティヘルス」とは、コミュニティの構成員1人ひとりが自分、そして、周囲の健康や幸せを実現することに主体的に参加し、専門家や提供者とも協働しながら、結果としてコミュニティ自体も健康で豊かになっていく営みである。各地に生まれつつある「保健室」は、このコミュニティヘルスを実践し継続していくための場、すなわち人々の「居場所」としての機能と同時に「活動拠点」としての機能を併せもつことが期待されている。

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不思議な縁に導かれて

 私は兵庫県西宮市での訪問看護モデル事業から関わり、東京、名古屋などで訪問看護師やケアマネジャーとして働いてきました。その後、2012年4月から2014年5月までの約3年間、東京都新宿にある「暮らしの保健室」に看護師として務めました。暮らしの保健室の開設者である秋山正子さんのもと、地域に根差した訪問看護の在り方を試行錯誤しながら、気づけば地域包括ケアシステムづくりをしていたような気がします。

 ある日、1人の方が暮らしの保健室を訪ねてこられました。「先日のNHKの放送で、暮らしの保健室の活動を知った。両親の亡きあと、実家が空き家になっている。ぜひうちの実家を使えないか」。驚くご提案に、そのご実家がどちらにあるのかをお訪ねすると、場所は福岡県北九州市だといいます。なんと、主人の転勤に伴って、もうすぐ私が転居する地域だったのです。

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 「よどきり医療と介護のまちづくり株式会社」(以下、よどまち)は、2015年4月、淀川キリスト教病院(大阪市・630床)の母体である宗教法人在日本南プレスビテリアンミッションと、官民ファンドである地域経済活性化支援機構の共同出資によって設立しました。1年間の準備期間を経て昨年4月、大阪市東淀川区(人口17万人)に、地域包括ケアの拠点の新しいモデルとなるべくオープンしたのが「よどまちステーション」です。

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 訪問看護ステーションSTORY学芸大学は、2014年7月、目黒区に設立した事業所です。当ステーションではまちかど保健室を2015年9月、事務所の引っ越しに伴って開設しました。私たちの保健室の特徴は、事務所の“中”にあること。つまり、事務所を開放するスタイルをとっており、スタッフのデスクなどと同じ空間が保健室となっています。

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 「みんなの保健室」は、2013年7月にJR福井駅前の商店街の一角に開設されました。ここは今、シャッター街となりつつある商店街を盛り上げようと、行政や民間団体が協力して「賑わい創出」に取り組んでいます。最近では北陸新幹線開業を契機に新たな駅ビルも竣工し、商店街に新規出店が見られるなど、時代の流れに乗って進化途上にあり、昔ながらの住民と新たに訪れた人たちが行き交う地域となっています。

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 石川県輪島市にある「みんなの保健室わじま」は、2015年4月から活動を開始している。母体は、歯科開業医とともに開設した「一般社団法人みんなの健康サロン海凪(みなぎ)」だ。

 輪島市は人口約2万7000人、高齢化率42%、高齢独居率22%という、高齢過疎が進む地域である。同市宅田町にある地元商店街が集まって設立したショッピングセンター内に店舗を構え、近隣住民が健康や介護、生活上の困り事を相談できるカフェとして、さらには地域にいる医療・看護・介護専門職の栄養アセスメントの拠点を兼ねた場とすることをめざして活動している。

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 豊明市は愛知県にあり、名古屋市に隣接しています。人口は約6万9000人で高齢化率は年々増加し、現在25.0%(2017年1月時点)です。名古屋市のベッドタウンとして昭和40年代(1965〜1974年頃)に栄え始めた町ですが、現在は高齢化率が愛知県平均より少し高い状況にあります。その要因の1つとなっているのが、豊明市内にある豊明団地です。

 豊明団地は55棟あり、1971年にできた公団で、現在、UR都市機構が管理・運営しています。豊明団地の人口は、約4500人(2000世帯)で、65歳以上の人が約1300人、そのうち1人暮らしの方が380人(約30%)と、独居世帯がたいへん多くなっています。75歳以上では200人の方が1人で暮らしています。また、生活保護者や外国人の居住者も増えています。入居契約や緊急時の連絡先がNPO法人というケースも増えつつあります。

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 三重県名張市は、三重県西部、大阪や奈良まで特急で40〜50分ほどのところにあります。古くは万葉の時代から東西往来の要所、宿駅として栄えた歴史のあるまちです。1955年以降はそれぞれの都市のベッドタウンとして大規模な住宅開発が進み、急激に人口が増えました。その後は2002年をピークに微減し、現在の人口は8万人弱となっています。

 平成の大合併の最中の2002年に現在の亀井利克市長が当選し、翌年の住民投票では「合併反対」が賛成を上回る結果となりました。単独市として歩むことを決断した名張市は、財政的には厳しい状況のなか、「暮らしの町、住み続けたい町」をコンセプトにしたまちづくりをスタートさせました。

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 日野病院組合日野病院は、鳥取県西部に位置し、1940年に鳥取県日野郡民(鳥取県西部地区)の悲願として設立された自治体病院です。1996年3月に日野町、江府町、溝口町(現在は伯耆町)の3町の一部事務組合として、厚生連から移管されました。

 診療圏は岡山県に隣接している地域から、中山間地域の広範囲にわたります。病床数は99床と小規模ですが、鳥取大学医学部附属病院との連携もあって診療科目は19診療科。内科系はもちろん、外科系も充実しており手術機能も完備し、さらには人工透析、検診事業に加え、訪問診察も行ないます。2か所の診療所、病院に併設された在宅介護支援事業所も設置し、地域住民が安心して暮らしていける地域づくりに貢献しています。

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約30年務めた総合病院を辞して、ライフワークとして続ける食事支援を通した看護の役割をかたちにしてきた。「ゲスト」と呼ぶ利用者の生きる力を引き出し、できるかぎり人の世話にならず、わがままで自分らしくいられる場所を提供する。優しい眼差しで次世代の人材を育成しながら、未来を見つめる思いはかぎりなく熱い。

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 「第2回全国“まちの保健室”フォーラム」が1月29日(日)、梅田阪急ビルオフィスタワー(大阪府大阪市)にて開催された(主催:よどきり医療と介護のまちづくり株式会社)。同フォーラムには全国の保健室活動に関わる約100人が集まり、各保健室の個性的な取り組みを共有した。

連載 在宅ケア もっとやさしく、もっと自由に!・91

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 夜中、突然、宮沢賢治の詩が頭を巡りました。そして「今日会った方との会話はこのことだったんだ」と思いました。

連載 認知症の人とその家族から学んだこと—「……かもしれない」という、かかわりの歳月のなかで・第1回【新連載】

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どうしても書いてみたいこと

 格言なのか、誰が言ったことかも知らないが、「過去に起こったことが、未来にも起こる」という言葉が好きだ。全体を俯瞰できるところで、もたもたしている自分の「いまの状況」を見つめるのが、好みに合っているのかもしれない。そういえば、“それ、面白いね”というのが私の口癖だそうである。そして、私の悪い癖は“教えたがり”である。教員病であろう。教員歴約40年、看護の世界に居続けて50年以上にもなるのだから仕方のないことだと弁解するしかない。そういう私には、いま、どうしても書いてみたいことがある。

 それは「かもしれない」という目でモノをみること、聴くこと、そうした「構え」の立ち位置から、全体を見回すこと、時を待つこと、そして、いざダッシュするときは、それまでの“たまり”すべてのパワーを使う。これがとても大事だという経験について書いてみたい。

連載 ただいま訪問看護師のキャリアラダー開発中!・第5回

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 本連載では4回にわたって、訪問看護師の発達段階、到達目標・能力、言葉の定義の制作エピソードを紹介してきました。訪問看護のキャリアラダーの概要と、それに伴う構成要素の定義をまとめるまでに、実作業としてはプロジェクトスタートから約1年を要しています。

 私たちはこれを「試行版」として、3段階のステップでブラッシュアップしていきました(図1)。第1段階はプロジェクトメンバー所属のステーションでのプレテスト。自分たちのステーションで使ってみながら、「私たちが意図して使っている言葉はきちんと伝わるか」「理解しやすい言葉になっているか」「訪問看護師の発達段階のレベルは実像と合っているのか」などの点を確認し、必要に応じて修正作業を行ないました。そして第2段階では、作成に関わったメンバー以外の訪問看護師や管理者に試行版を使用してもらい、ヒアリング(聞き取り調査)を実施。さらに第3段階として、昨年の日本在宅看護学会学術集会で企画した交流集会にて、在宅の現場で活躍する方々や教育関係者とも意見交換を行ないました。

連載 訪問看護実践と成果のつながりを可視化するために—日本語版オマハシステムの開発に向けて・第11回

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 今回はオマハシステムに関する海外の動向をご紹介したいと思います。2012年に発表されたシステマティックレビュー*1によれば、「利用者のアウトカム」を明らかにする調査を中心に、オマハシステムに関する報告は増加傾向にあります(図1・2)。世界各地でさまざまな実践家、研究者たちが報告してきたオマハシステムのありようはどのような姿なのか。そして、オマハシステムの将来像はどのように描かれているのか。いくつかの調査結果を紹介しながら、俯瞰的にオマハシステムの“今”をとらえてみたいと思います。

連載 どう読む!? 在宅医療・看護・介護政策・第16回

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 厚生労働省は2月7日に「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案」を国会に提出した。

 改正のねらいは、団塊の世代が75歳以上になる2025年に向けて地域包括ケアシステムの構築を進め、制度の持続可能性を確保することにある。一方、増え続ける介護費の財源を賄うために利用者負担の引き上げを盛り込んでいることから、議論を呼びそうだ。

連載 シンソツきらきら・第4回

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 新卒訪問看護師のキャリアを歩む人に直接会ったことがある、という方はまだごくわずかだと思います。

 私は、これまで全国新卒訪問看護師の会の代表や所属しているケアプロ訪問看護ステーションでの活動を通して、50名程度の新卒訪問看護師と出会ってきました。全国の新卒看護師数と比べるとまだごくわずかですが、少しずつ増えてきています。また、個人的に把握している限りでは、2016年度では20〜30名程度が新卒訪問看護師になっています。

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今月の5冊

Information 学会・研究会情報

バックナンバーのご案内

次号予告・編集後記 小林 , 小池
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秋山正子さんは、本誌2011年8月号の連載(第23回)のなかで「暮らしの保健室」の立ち上げの模様を紹介し、「看護職がボランティアで地域サロンを開くブームがおこるといいかなあと、思います」と書かれていました。それから約6年、看護職が関わる「保健室」の有用性は認知され、全国的に取り組みが広がってきています。今後の成熟のなかで、どのような展開がみられるのか楽しみです。行政含め地域との連携や協働が発展の鍵と思われますが、教員と看護職との協働により少子化で空いた教室を利用して小中学校のなかに地域に開かれた「保健室」ができたらおもしろいと妄想が広がりました。…小林

突然現れた人のあいまいさを伴った相談に応える。一見できそうで、すごく難しい営為ではないでしょうか。そんななかで伺った秋山さんの相談支援のあり様は、「来訪者の問題」に関わるのではなく、「問題の解決に向かおうとしているその人」に関わるというスタンスがキモなのだと感じました。根が問題解決思考にできている私としては、この基本的なものに最大の学びがありました。●保健室は、制度の枠にとらわれず、「地域に必要だ」という思いのもと取り組んでいるものです。こうしたものが各地で散発的に行なわれる事実に、地域で行なうケアの外殻を押し広げんとする実践者の志が垣間見え、なぜだか「私もがんばらねば」と力をいただきます。…小池

基本情報

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訪問看護と介護
22巻4号 (2017年4月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

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