訪問看護と介護 13巻4号 (2008年4月)

特集 病棟から在宅へのスムーズな移行

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退院の日を前にして,さまざまな不安を抱えている患者と家族。それらの不安を受け止めて,地域の生活(在宅)へと移行していく際には,病棟看護師から訪問看護師への上手なバトンリレーが求められます。

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 退院支援・退院調整看護師という言葉は,病院看護師や訪問看護師にとってどの程度共通理解として普及しているのでしょうか。

 病院の一看護師であった私は,縁あって病院からの訪問看護,さらに8年間訪問看護ステーションの訪問看護師として在宅の患者さんに関わった経験があります。病院という限られた箱から出て,人々が生活する場面で看護師としてどのように関わることで患者の自立を導き,生活の質を向上させ,最期までその人らしい生き方を保障することにつながるのか,訪問看護を行ないながら考え続けていました。

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退院後の生活をイメージしていますか?

 自身や家族が体に何らかの不安を感じた時,病気や障害を抱えた時に,私たちは病院や診療所に救いを求めて駆け込んでいきます。そこから必要があって入院という経過をたどった時,自宅から病院という仮の住まいに場所を移しますが,そこではあたりまえのように治療や症状コントロールが何よりも優先的に動き,回転していきます。自身の体を医療職にゆだね,病院の生活リズムに順応していかなければならないのです。

 その後元気になって「自宅に戻りたい」と願う。これも極めてあたりまえの患者の気持ちでしょう。しかし,いざ退院のゴーサインがでると家に帰れるという思いと,「大丈夫?」という思いが同時に生じることも知っておかなくてはなりません。その本人だけではなく,その人を取り巻く介護者として関わる人々も含めてとらえておくことも大切です。

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患者の思いを聴く

 初めに皆さんに質問。

 「患者は医療に何を期待しているでしょうか?2つ挙げてください」。

 1つは比較的簡単に思いつくだろう。「確実によくなりたい」。つまり「治りたい」「元の健康な体に戻りたい」という思いだ。病気になった人であれば,明日死を迎えてもおかしくない状況であっても,医療にこの思いを期待することは明白である。

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 医療制度改革による急性期病床の集約化・在院日数の短縮化により,急性期病床以外の病院病床のリハビリテーションや回復期病床などへの移行が進み,今後一段と医療サービスの機能分化が進むと考えられる。そして在院日数の短縮化により,医療の継続が必要な多くの患者が,急性期病床からそのほかの医療サービスへとシフトしていかざるを得ない。その結果在宅医療を含む医療連携もその機能分化した医療サービスの一翼を担うことになるだろう。

 例えば,在宅医療を取り巻く環境を考えると,従来であれば入院医療のなかで行なわれていた治療が,在宅医療の現場で行なわれるようになった。しかし,多くの患者・家族の認識として,在宅医療において医療の継続が保証されるとは言い難い現状がある。つまり,医療技術依存度の高い患者を在宅医療の現場で診ていけるような効率的な医療の仕組みの構築が求められているといえる。

連載 マグネットステーション インタビュー・4

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訪問看護師になって1年足らずで所長に

木村 2001年に所長になられたと伺いましたが。

荻原 その年の8月に前任の所長さんが辞めてしまいまして。知らない人が来るよりは,今いる皆で助け合ったほうが頑張れるんじゃないかといわれ,入職してまだ8か月の私がケースが全部なくなった状態からひきつぎました。ほんとうに危機的な状態でしたね。

連載 訪問看護 時事刻々

診療報酬改定 石田 昌宏
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 4月から新しい診療報酬になる。2年に1回の定例行事だ。どの点数が変わるか,管理者は一喜一憂する。今回は久しぶりのプラス改定になり(といっても0.42%とほんのわずかだが),すこし息をつけるのではと期待していると思う。訪問看護ステーションにとって診療報酬はあくまで収入の一部。介護保険が大半なので,経営が劇的に変わるようなものではない。しかし来年度の介護報酬改定を考えると,その布石となるのではないか。

 さて,一番の改定は,「訪問看護基本療養費」が250円プラスとなったことであろう。12年ぶりの引き上げだそうだ。実は多くの国会議員たちも特に関心が高かった項目で,何点上がるか注目されていた。日本看護協会はこの引き上げに対し「250円の引き上げは依然として低い」とコメント。その通りだと思う。今後も訪問看護ステーションの経営の安定に向け,更なる引き上げが必要である。今回の改定で次の介護報酬改定へのステップができた。

連載 わたしのことをわたしから・16

看護・介護職への期待 鈴木 信行
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 私は先天性疾患である二分脊椎症の患者であり,そのために下肢や排泄機能に障害がある。また,二分脊椎症の患者会である日本二分脊椎症協会の運営に携わっており,障害者の理解と社会参画に関する活動を推進してきた。

 なお,二分脊椎症は個々による症状の程度の差が大きいのが特徴の1つであり,上肢や知的な能力に障害が及ぶ場合は,乳幼児期より訪問看護や訪問介護の力を要することもある病である。

連載 高齢者虐待にどう対応するか・1【新連載】

高齢者虐待とは何か? 和田 忠志
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はじめに

 2006年に高齢者虐待防止法が制定されたこともあって,高齢者虐待に対する社会的関心が高まっています。私はこれまで20年近く在宅医療に携わり,多くの虐待ケースに対応してきました。在宅ケアの現場はADLの低下した高齢者や障害者を対象とするため,虐待が先鋭化しやすく,虐待ケースに遭遇することが少なくありません。

 千葉県松戸市は法制定前の2004年より「高齢者虐待防止ネットワーク」を立ち上げ,私も虐待防止システムの構築や,多数のケース会議にかかわってきました。これらの経験から得た高齢者虐待への対応について12回にわたって連載します。

連載 もの忘れを補うモノたち―簡単な道具と機器による認知症・記憶障害の方への生活支援・12【最終回】

明日の笑顔を信じよう 安田 清
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 本連載も最終回となりました。この間,フランスのアルツハイマー医学協会から依頼され,ここで紹介した支援法をまとめたものが最近英語に翻訳されました。海外の方にも興味をもってもらい嬉しいです。最後に今までのまとめと,現在混乱が見受けられる認知症の予防やリハビリに対して,私の考えを述べさせてください。

連載 イギリスの小児訪問看護の歴史と現状・1【新連載】

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 イギリスでは小児専門の訪問看護サービスが近年急速に普及し,現在では240を越す小児専門訪問看護チームが活動している。このチームは自宅や学校など,子どもの慣れ親しんだ場所で日常生活を大きく妨げることなく適切なケアを提供するための組織であり,小児のプライマリケア全般を担う。また,同時に継続的なケアを提供するための2次・3次医療施設との連携役や小児緩和ケアの職務も果たしている。

 100年以上前に誕生したイギリスにおける小児訪問看護サービスの発展の歴史とその現状について報告する。

連載 家族にできるケアの手引き―在宅で療養するがん患者の家族のための事前説明ブックレット・18【最終回】

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1 在宅で療養する際に利用可能な制度と経済的負担

 日本では,がんによる死亡者の死亡場所は92.7%が病院・診療所などの施設内であり,在宅死はわずか6.2%です1)。このようにがん末期のごく少数の方だけが在宅で療養しているのが現状であり,わが国における在宅緩和ケアはいまだ十分に浸透していないといえます。

 この理由として,在宅緩和ケアの対象者に最初に関わる病院の医療従事者に,がん末期になっても在宅医療を受けながら自宅での生活が可能なことが周知されていないということ,また,がん末期になったら,病院で過ごすものだという考えが国民と医療従事者の間で通念化しているといったことが挙げられます。なかでも,がん末期の方が在宅療養を選択肢の一つとして考える際の必須情報である「在宅療養を行なうときにどのようなサービスが制度を使って受けられるのか」と,「その経済的負担はどのくらいなのか」という2つについて,国民や医療従事者の知りたいという高いニーズがあるにもかかわらず,それを知る機会がないということが,筆者らのこれまでの研究調査結果や,末期がん患者とそのご家族および医療従事者とのやり取りで明らかになっています。

連載 訪問看護ステーションの現場をあるく・4

群馬へ 川越 博美 , 宮崎 和加子
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 「空っ風」と「かかあ天下」で知られる群馬県に行ってきました。まず私たちを迎えてくれたのは美しい山々とその裾野に広がる関東平野。上毛かるたに「つる舞う形の群馬県」とうたわれるように,空に舞う鶴の形によく似た地形を,車であちこちと移動しました。尾瀬や,利根の清流など,美しい自然や温泉にめぐまれていて,穏やかで広々とした感じを与えてくれる地です。

連載 ほんとの出会い・25

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 昨年末,「冬の昼食会」という名のもとに,母方の親類が新宿の中華料理店に集まった。出席者はなんと75人。最高齢は母の姉で90歳。下関から新幹線で姪に付き添われてやってきた。母の一番下の弟が72歳。彼らを第1世代とすれば,私といとこたち第2世代,そしてその子どもたちの3世代が集まった。もちろん当日仕事で参加できなかった人も多く,これは一族郎党の一部ということになる。

 明治生まれの祖母が3回結婚しており,再婚のときに4人,再々婚で6人の子をもった。さらに最後の結婚相手,つまり私の祖父も再婚で,亡くなった前妻の子どもが4人いた。だから全部合わせて14人の子がいたわけだ。祖父は一番下の子が生まれて1年もたたないうちに脳溢血で亡くなったが,祖母がこの14人の子どもを,それぞれに愛情をかけて慈しんだので,父親が違っても,母親が違っても,きょうだいの付き合いが続き,みんなで集まるのを楽しみにしている。

連載 萌黄色のハンカチーフ―杉原爽香、三十五歳の春・8

不信のとき/弾丸 赤川 次郎
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 2008年2月23日(土),「老人の専門医療を考える会第30回全国シンポジウム」が大手町サンケイプラザ(東京都千代田区)において開催され,およそ90名の参加を数えた。

 昨年に引き続き今回のテーマは4月から施行が予定されている「後期高齢者医療制度」。まず会長である平井基陽(秋津鴻池病院院長)氏より基調講演として制度の概略が解説された。その後,高齢者医療の在り方,診療報酬体系の骨子について説明が加えられ,「75歳という年齢による医療の制限」「高齢者の選択に基づかない在宅医療」と2つの大きな問題を掲げた。

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 2008年2月24日(日),「30年後の医療を考える会第2回全国シンポジウム」が聖路加看護大学(東京都中央区)において開催された。

 秋山正子(白十字訪問看護ステーション所長)氏の開会の挨拶の後,第1部が村上智彦(夕張医療センター理事長)氏による基調講演を皮切りに行なわれた。村上氏は限界自治体と呼ばれる夕張は将来の日本の縮図であると強く警鐘を鳴らし,「医師はこれまで『命を守る』というneedsに応えるよりも患者のwantsに応えてきてしまった結果,過剰な期待をかけられるようになってしまった」と語った。続いて,宇都宮宏子(京都大学医学部附属病院地域ネットワーク医療部看護師長)氏や安中正和(長崎在宅Dr. ネット理事)氏が発言を重ねた。村田由佳(東京都福祉保健局高齢社会対策部在宅支援課長)氏はこれから急速に高齢化を迎える都民に自主性がないことを警告する一方,都としても東京の強み・弱みを活かして高齢者対策を推進していくと発表した。なお,鈴木信行(鈴木医院院長)氏も発表の予定だったが,折からの強風のため新幹線がとまり,資料を秋山氏が代読した。

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今年,1月19日の北海道・旭川会場を皮切りに,3月末まで,全国で在宅褥瘡セミナーを開催中の日本褥瘡学会。その目指すところを在宅褥瘡医療ネットワーク委員長の石川治先生にうかがいました。

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はじめに

 いわゆる居宅系高齢者施設(第三類型)への在宅医療に力をいれて,3年目を迎えました。この2年間は僕たち医者が24時間365日しっかり医療管理を行なったとしても,最期まで高齢者施設で支えることが困難な状況に遭遇することが多く,こういった事態を改善するにはどうしたらよいのか悩んでいました。

 解決の第一歩は,まずグループホームをはじめとした高齢者施設の職員のみなさんがどのような意識をもって,日ごろのケアにあたっているのかの実態を知ることだろうと考えました。そのうえで終の棲家としての役割を果たすためには,これからどう行動したらよいか,一緒に考え,行動することにしました。

 在宅医療助成勇美記念財団からの研究助成を受けて,現場の意識調査を行なった結果と,調査から感じたことをお伝えします。

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 病棟看護師による退院支援の検討を目的として,退院した療養者と家族から入院中に病棟看護師が行なった退院支援についての意見・要望を調査した。「介護知識・技術の指導」「在宅環境の整え」「関係機関・職種等との調整」などの病棟看護師が行なった主な退院支援は,療養者・家族からおおよそよい評価が得られたが,今後検討が必要な課題も明らかになった。

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はじめに

 がん末期となり入院での治療が終了し,自宅で最期を迎えたいと願い退院する患者にとって,在宅医療機関は必要不可欠な存在である。病院では在院日数の短縮化が進められており,2006(平成18)年診療報酬改定においても「在宅療養支援診療所」の評価・緊急訪問看護加算の新設・重傷者管理加算の引き上げ・ターミナルケア加算の引き上げ等が行なわれたことからも,訪問看護がより重要性を増していることが認められる傾向となっている。

 当訪問看護ステーションは在宅ホスピスを目指し,在宅での看取りに積極的に取り組んできた。私は3年間で20余名の在宅看取りを行ない,その1人ひとりと向き合う中で,悩みが生じるたびに参考書などを読み対処してきた。主にスピリチュアルペインへの対処に悩んできたが,それについて特別学んでいないのにもかかわらず「死」という人生最大の重要な場面に関わってしまったことの重大さに気づき,うまくいかなかった事例を後悔し悩んだ。悩むとは,こうであらねばならぬ自分と,あるがままの自分にギャップがあるということである。自分には何が不足していたのかを知りたいと考えた。ペプロウは「自己を知るということは,看護の仕事を行なう者には絶対に欠かせない必須条件である」1)と述べている。今回,自己を知る出発点として印象に残っているSさんとの場面を再構成し,自身の看護援助と対人関係の課題について考察することができたので報告する。

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 要支援者に対してアセスメントを行なう場合,要介護者に対するようなアセスメントシートはなく,介護予防サービス・支援計画書にある4つの項目〔① 運動・移動について,② 日常生活(家庭生活)について,③ 社会参加,対人関係,コミュニケーションについて,④ 健康管理について〕によってアセスメントすることになっています。

 ある訪問時にこの4つの項目でアセスメントし,いざプランを作成しようとした時,気付いたことがありました。① 本人の全体像がつかめていない,② ケースが情報不足で整理しにくい,③ 4つの項目だけでは,本人の問題点のみに気が取られて,ほかの情報を収集し忘れる。

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編集後記
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●今年は寒いなぁ,などとまだまだ冬の気分でいたところ,いつの間にやら鼻がムズムズし,目をこすりがちになっている自分がいました。ああ,もうそんな季節なのかと桜前線の接近を待つことなく,春の訪れを実感しています。ある意味においては連載が最終回を迎え,また新たな連載が開始となるのも春の訪れの一端なのかもしれません。新連載による新たな視点を楽しみにしつつ,一抹の寂しさも覚える今日この頃です。…富岡

●特集の細谷論文に,「病院ではなにも言えないさ」と,がんの痛みを訴えず「痛みなし」の患者として退院したケースの紹介がありました。訪問看護師がすぐに気づき,適切なケアが行なわれたからよかったけれど,独居のターミナルはこれからの課題です。連載「家族にできるケアの手引き」と「もの忘れを補うモノたち」が最終回となりました。2つの連載から知識を得て,いざそのときに少し備えられた気がしています。…伊藤

基本情報

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訪問看護と介護
13巻4号 (2008年4月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

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