訪問看護と介護 11巻6号 (2006年6月)

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介護保険導入後の訪問看護の実態把握から

 近年の医療制度改革は,在院日数を短縮し,病床数の削減とともに病院の機能分化を促進して,在宅医療を充実する方向にある。したがって,訪問看護サービス利用者に占める,高度で複雑な医療・看護ケアを必要とする利用者の割合は,今後さらに増加することが予測される。

 横浜市訪問看護ステーション連絡会(以下「連絡会」と略)は,横浜市内の訪問看護ステーションの情報交換と協力を目的とした組織である。しかし,2000(平成12)年の介護保険導入以降,横浜市内における訪問看護業務や利用者に関する医療の実態はほとんど把握されていなかった。そこで,訪問看護ステーションからみた在宅医療やその周辺の実態を把握し,課題を整理した上で,訪問看護ステーションが地域医療における自らの役割を遂行するために,今後どうあるべきか,何をなすべきかを検討することが望ましいと考え,2004(平成16)年に調査を行なった。

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頼まれたケースは断らない

医療依存度の高い利用者が多い

 青葉区メディカルセンター訪問看護ステーションは,1996(平成8)年1月に設立された区医師会立の訪問看護ステーションです。スタッフは,看護師13名,PT 2名,ケアマネジャー2名,事務4名です。

 さらに,5月から新たに療養通所介護を始めるにあたり,看護師2名,ヘルパー6名が入りました。介護職を雇用するのは初めてなのですが,これからはどんどん在宅に医療依存度の高い方が帰ってくるので,利用者さんの処置をするところを見て知識や技術を学んで,将来はその経験を別の場所で生かしてほしいと思っています。

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入院診療は高速回転

 医療制度改革により現在の退院事情は急速に変わってきた。特に急性期病院における退院患者は医療依存度が高く,在宅での支援サービスを必要とする患者が急増している。

 北里大学病院は,神奈川県北部に位置する人口63万,高齢化率14.6%の中核都市である相模原市にあり,1033床を有する特定機能病院である。2003(平成15)年から診断群別包括評価制度(DPC)を取り入れ,クリティカルパスを用いながら医療の標準化や診療の効率化を図ってきた。在院日数は年々短縮し,2004(平成16)年度は15.7日,病床回転数1.9であった。

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 当ステーションは大分県看護協会立で,1995(平成7)年に設立された。現在常勤4名,非常勤3名で月に310件~350件の訪問を行なっている。高血圧・心臓関連疾患,神経難病,脳卒中後遺症,内分泌・腎臓などの慢性疾患,認知症高齢者,身体障害者,重度身心障害児,がん終末期など,依頼があれば断らずに受けるようにしている。

 がん終末期については,介護保険開始以来5年間で32名の利用があった。訪問体制は2~3人でチームを組む,あるいは単独で受け持つ,スタッフ全員で分担など,ステーションの訪問件数事情により,あるいは利用者の希望に合わせている。本稿では,在宅療養を選んだ患者や家族に対して希望どおり最期まで在宅で過ごせるよう支援するために訪問看護に求められているものは何かを,「自己決定」支援に焦点をあてて振り返る。

連載 つなぐ―親子2代・6

うなぎ 天宮 吉久 , 天宮 久嘉
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 創業250年の老舗を守る天宮さん親子。柴又で川魚料理の店を開いた初代から数え,吉久さんは9代目,久嘉さんは10代目である。

 吉久さんが「あの時はヘルパーさんをはじめとして,たくさんの人にお世話になりました」とふり返るあの時とは,介護保険制度が施行されてすぐの,ご両親を自宅で介護していた頃のこと。「明治の人間なので,病院に入院したがらず,それで自宅で介護しました」 と。吉久さんの姉妹も,久嘉さんも介護を手伝い,ノートに記録して,ヘルパーに引き継いだという。

連載 訪問看護 時事刻々

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 年度末ぎりぎりの3月29日,在宅や施設の臨床現場では診療報酬改定に新人迎え入れにと忙しくしている頃,厚生労働省では「看護基礎教育の充実に関する検討会」が始まった。前回の1996(平成8)年看護基礎教育カリキュラム改正で,「在宅看護論」が新設され,いよいよ教育の分野でも在宅へと目が向け始められてからはや10年。その間の状況は大きく変わった。

 1996年以降の看護に関わる保健医療福祉の主な制度改正をみてみよう。1997(平成9)年,臓器移植法が施行。1999(平成11)年,新エンゼルプラン策定・感染症法改正,精神保健福祉法改正。2000(平成12)年,介護保険制度と健康日本21,健やか親子21がスタート。2003(平成15)年健康増進法スタート,新障害者プラン策定,感染症法再改定。2004(平成16)年医師の臨床研修必修化スタート,第3次対がん10ヵ年総合戦略。2005(平成17)年心神喪失者等医療観察法,児童虐待防止法施行,健康フロンティア戦略スタート,介護保険法改正。2006(平成18)年,障害者自立支援制度スタート,薬剤師の教育年限が6年に。制度だけでもこんなに変わっている。もちろんこれだけでなく医療技術の高度化,IT化,在院日数短縮化,少子高齢化の進展,人口減少……など私たちの環境は劇的に変化してきている。看護基礎教育カリキュラムの見直しが行なわれるのは当然だ。

連載 わたしのため・からはじまる在宅介護・6

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 今回はケアの話,と思っていた矢先に大変なことが発覚しました。富山の射水市民病院の呼吸器外しです。折りしも事実が判明した3月26日,私は品川区内で「安楽死・尊厳死法制化を阻止する会」の研究集会〈検証 死の法〉に参加していました。昨年6月25日に続き2回目で,今年も日本各地から100名前後の方が集まりました。

 終末期における治療停止は,脳死臓器移植とならぶ本集会の中心テーマでしたので,なんというタイミング。閉会後も参加者はそれぞれの立場から報道陣のインタビューに応じることになりました。

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 季羽倭文子さんは,看護教員として研修中のイギリスで訪問看護と出会い,1975年に日本大学医学部附属板橋病院(以下,日大板橋病院)に訪問看護室を立ち上げて,当時初めて大学病院からの訪問看護を始めた方です。また,ホスピスケアの日本への紹介,日本看護協会での訪問看護開発室の設置など多数の功績をお持ちです。現在も日本訪問看護振興財団の理事として訪問看護の推進に関わっている季羽さんに,イギリスでの経験と日大板橋病院での訪問看護実践を中心にお話をうかがいました。

イギリスで訪問看護と出会って

 看護学校を卒業後,臨床を経て,日本大学医学部附属看護専門学校で看護教育に従事していた季羽さん。訪問看護に携わるきっかけはイギリスへの研修だった。

 私が初めて訪問看護というものに出会ったのは,1970年にイギリスに研修に行ったときでした。看護の教育法についての研修コースに入ったのですが,その中でイギリスのさまざまな看護活動についての紹介があり,訪問看護のことも出てきたのです。「訪問看護? それって何?」という感じで興味を持ちました。当時日本では訪問看護という名称も一般的でなく,実績もほとんどなかった頃です。それで1年間の予定だった研修を少し延長して,イギリスの訪問看護を見学させてもらいました。

連載 住宅改修はジグソーパズル・6(最終回)

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 これまで私たち(恒吉,牛木彩子,田中康之)の3人は,リレー方式で住宅改修について述べてきました。今回の私の担当分で最終回となります。

 私たちは在宅の現場にいるからこその視点で,日頃から感じてきたことや関わりの実例を記述してきました。建築士,作業療法士,理学療法士と,それぞれの職種による立場の違いはあっても,在宅で暮らしたいと思っている人たちや家族を支援したいという願いと,それには生活の基盤である住まいの環境整備が重要であるという共通の認識を持っています。

連載 訪問看護と法 現場の疑問に答えます・5

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契約関係の混乱 家族が「訪問看護を中止したい」と

Q 認知症の方に訪問看護をしています。訪問看護の内容は,ADL(日常生活動作)維持のためのリハビリテーションが中心で,訪問看護導入時は家族の方が代理で契約しました。本人は訪問看護師が来ることを心待ちにしていますが,このたび,家族から「利用料が高いので訪問看護をやめたい」との申し出がありました。医師からも訪問看護の必要性を話してもらったのですが,家族は聞き入れません。このような場合には,代理契約した家族の意向が優先されるのでしょうか。本人の意思を優先させる手段はありますか。

連載 花凪の人々─なりたい自分になる介護・24(最終回)

みんなが好きだから 木村 美和子
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5年目の春に

 Tさんを花凪に迎えてから,5回目の春がやってきました。また今年も一緒に桜を見に行こう!ジンギスカンに舌鼓を打って,大好きなビールをグイッと飲んで,花凪家族の誰もが桜に負けない満開の笑顔になるはず。今年の冬はいつもより雪が多い上に,寒さも厳しかったから,その分来た春がいつも以上に嬉しい。

 思えば,9年前に病院のベッドの中で「後悔しない生き方をしたい。自分らしく生きたい。そういう場所を創ろう」と決心したことが,花凪の始まりでした。そして,5年前に私にとって前代未聞のTさんとの出会いがあって,花凪高齢者下宿が突然生まれ,気がついたら4号館までできていました。

連載 ほんとの出会い・3

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 子育てに悩む母親たちの取材をしたことがある。不登校,非行,ひきこもり……。どの親も子どもの幸せを願って,悩み,苦しみ,もがいていた。その中に,しっかり者で社交的,どこからみてもりっぱなお母さんだが,娘さんの強迫神経症に悩んでいる方がいた。紆余曲折の末,娘さんの症状はおさまったが,お母さんは娘を結婚させたい,しかし娘が見つけた相手は気に入らず,縁談は壊れる,それを何回も繰り返していた。娘を男性に預けてほっとしたい,けれども自分から離れていくのが寂しい,そんなふうに見えた。

 さて,今回ご紹介する『小鳥はいつ歌をうたう』は,フランスの女性作家ドミニク・メナールによる母と娘を巡るお話。娘は「言葉」を話すことができず,母は読み書きができない。障がいのある娘を育てる母親の苦労についてのお話,と思われるかもしれないが,そうではない。「言葉」は母と娘の関係,人と世界の関係をつなぐ象徴として使われ,「言葉」をもたないということは,絶対的な孤独であるということ。

連載 人工呼吸器とともに生きる・18(最終回)

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生活環境を分析するための視点

本人たちの手記を通して見えてきたこと

 本連載では,人工呼吸器を装着して在宅生活を送っている福井県在住の6名の方に,患者・家族の立場から,現在利用しているさまざまな医療・福祉のサービスと日常生活を紹介していただき,筆者が解説を行なってきた。

 6名はいずれも日本ALS協会福井支部患者会員の方々で,生後まもなくウエルドニヒホフマン病を発症した立石郁雄君を除く5名(高澤信一さん,濱中正行さん,國冨貞夫さん,小川照美さん,高本一良さん)は,30代,40代で,ある日突然,ALSを発症し,徐々に日常生活に多くの不自由を抱えることとなり,最終的に前述の特徴を持つ重度身体障害者となった。

連載 真珠色のコーヒーカップ―杉原爽香、三十三歳の春・10

出直し/血縁 赤川 次郎
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はじめに

 介護保険制度は,病気や障害を抱えた高齢者のための制度であり,医療や介護に携わる職種の人々にはこれらの制度本来の趣旨を十分理解し行動することが国民から期待されている。

 現在の高齢者の方々は,敗戦で焼け野原となったわが国を現在の繁栄する国への礎を創られ,さらに我々後輩の多くの世代を育てられた。その方々が高齢となって医療や介護を必要とする時,1人ひとりの尊厳を尊重した思いやりある生活を,医療や介護の制度を通じて保障されるべきである。

 高齢者の尊厳や幸せを守る社会保障制度は,経済面からの視点だけでは構築されるべきではなく,高齢者の立場に配慮された適切なサービスが提供される制度として構築されることが最も重要である。

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はじめに

 日本で排泄,とくに尿失禁が問題にされはじめたのは,尿失禁に対する手術や薬物療法が導入された1985年頃からである。当時,諸外国では健康女性の3人に1人が尿失禁症状を持つといわれていたのだが,日本ではまったく表面化しておらず,統計調査もされていない状況であった。しかし,その後の研究で,日本においても健康女性は海外の研究とほぼ同程度の有症率であること,また高齢者に関してはより高値であることがわかってきた。とくに65歳以上の,在宅高齢者の尿失禁頻度は,欧米の22~53%に対し,男性は50%,女性は61%と報告されている1)

 このように尿失禁は,男女を問わず有症率が高く,介護負担を高めるにもかかわらず,「年齢のせい」「おむつは仕方ない」と,介護者も本人もあきらめてしまうケースが多い。しかし尿失禁の治療法や排泄のための用具は,年々進歩してきている。個々のケースの原因をさぐり,尿失禁のタイプをきちんとつかめば,改善できることはかなりある。

 本稿では在宅での排泄ケアに必要な最新の知識と情報のうち,① 排尿ケアについてを述べる。② 排便ケアについては次の機会に述べる予定である。

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 本研究は,在宅医療に携わる医師・看護師が在宅における医療処置に対して必要かつ十分な医療・衛生材料が確保されていると認識しているのか,また,職種や属性によりその認識に相違がないか明らかにすることを目的とした。

 対象はI県内で居宅療養指導管理料を算定している医療機関の医師代表者362名と訪問看護を実施している訪問看護ステーション45か所・医療機関訪問看護部(室)48か所の看護師代表者93名とし,郵送質問紙調査を実施した。分析対象は,医師82名と看護師61名,計143名であった。結果,「確保されている」と認識していた者71名(49.7%),「確保されていない」と認識していた者72名(50.3%)とほぼ同数であった。さらに属性による分析を行なった結果,職種,医師の所属する医療機関の平均病床数,訪問看護の種類によって認識に相違がみられた。

基本情報

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訪問看護と介護
11巻6号 (2006年6月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

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