連載 ほんとの出会い・3
娘の旅立ちと母親の再生と
岡田 真紀
1
1ノンフィクション作家
pp.618
発行日 2006年6月1日
Published Date 2006/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688100298
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- 文献概要
子育てに悩む母親たちの取材をしたことがある。不登校,非行,ひきこもり……。どの親も子どもの幸せを願って,悩み,苦しみ,もがいていた。その中に,しっかり者で社交的,どこからみてもりっぱなお母さんだが,娘さんの強迫神経症に悩んでいる方がいた。紆余曲折の末,娘さんの症状はおさまったが,お母さんは娘を結婚させたい,しかし娘が見つけた相手は気に入らず,縁談は壊れる,それを何回も繰り返していた。娘を男性に預けてほっとしたい,けれども自分から離れていくのが寂しい,そんなふうに見えた。
さて,今回ご紹介する『小鳥はいつ歌をうたう』は,フランスの女性作家ドミニク・メナールによる母と娘を巡るお話。娘は「言葉」を話すことができず,母は読み書きができない。障がいのある娘を育てる母親の苦労についてのお話,と思われるかもしれないが,そうではない。「言葉」は母と娘の関係,人と世界の関係をつなぐ象徴として使われ,「言葉」をもたないということは,絶対的な孤独であるということ。
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