JIM 6巻5号 (1996年5月発行)

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特集　腹痛診療のガイドラインを求めて

腹痛―その発生のメカニズム正田　良介 6巻5号 , 1996年5月 , pp.392-397

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　■腹痛はその原因となる疾患の確定診断が困難な症状であるが，発生のメカニズムの理解により，的確な治療法を迅速に決定することが可能となりうる．

腹痛診療ガイドライン―総合外来の立場から鄭　東孝 6巻5号 , 1996年5月 , pp.398-403

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　■腹痛の診断はしばしば困難で診断不明なことも多い．しかし，診断は不明でも緊急性，初診時の治療の要否を正しく評価できれば重大な間違いは避けられる．

　■この評価は病歴，身体所見から腹痛の発生機序を推定することでかなりの程度可能である．

腹痛診療ガイドライン―開業医の端から倉井　亮 6巻5号 , 1996年5月 , pp.404-407

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　■日常診療において，腹痛を主訴とするものは極めて多い．その原因も，腹部諸臓器に起因するものはもとより，インフルエンザや感冒のような呼吸器疾患も少なくない．

　■高齢者の多くなった昨今，心筋梗塞のような循環器疾患も，一応は視野に入れておかなければならない．さらに，家庭，学校，勤務先でのトラブルがその原因であることも少なくない．

　■開業医の守備範囲は極めて広い．目前の患者の問題点は何かをしっかりと把握し対応することが，最も大切である．

腹痛の実用的鑑別診断アルゴリズム―prevalence, presentation, pathophysiology, prognosisを総合判断する小泉　俊三 6巻5号 , 1996年5月 , pp.408-410

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　■腹痛診断の第一歩は有病率（prevalence）である．

　■身体診察上の所見（presentation）を，病態生理学的（pathophysiological）に分類して理解する．

　■患者に最も良い結果（prognosis）をもたらす選択肢を選ぶ．

Key Articles 小泉　俊三 6巻5号 , 1996年5月 , pp.452

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　腹痛患者を目の前にして，すぐに使えるリファレンスとしては以下を挙げる．

1．今日の治療指針，1996年版，p8,427，医学書院，1996

腹痛診療における画像診断

腹部単純X線写真松尾　義朋 6巻5号 , 1996年5月 , pp.412-414

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　■腹部単純X線検査の役割は主に異常ガス像と異常石灰化の検出であり，フィルム上のすべてのガス像と石灰化について，病的か否かを考えながら読影する習慣が大切である．

腹部超音波検査石綿　宏敏 6巻5号 , 1996年5月 , pp.415-419

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　■超音波検査は「第2の聴診器」と言われている．ビームを当てて簡単に分かる疾患もあるが，しっかりした技術を身に付けなければ，落とし穴が待っている．

主な疾患の治療ストラテジー

急性虫垂炎今井　俊積 6巻5号 , 1996年5月 , pp.420-423

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　■急性虫垂炎は急性腹症の中で最も頻度が高い疾患であるが，症例によってはその診断・治療ともにかならずしも容易ではない．

　■手術適応の基準としては筋性防御，Blumberg徴候などの腹膜刺激症状の存在，発熱，白血球増多，CRP上昇，超音波エコ―検査での腫大虫垂や糞石の描出，超音波エコー，CTスキャンにおいて盲腸周囲の液体貯留の証明などであり，これらの所見を総合的に判断する必要がある．

胆石症・胆嚢炎中村　義徳 6巻5号 , 1996年5月 , pp.424-426

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　■胆石の存在部位と急性炎症の有無を的確に診断し，安全性・低侵襲性・経済性を優先し，状況に応じた治療法を選択する．

　■腹腔鏡下手術（J1）は新しい選択肢である．

膵炎中野　逸郎 6巻5号 , 1996年5月 , pp.428-430

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　■慢性膵炎は他疾患として治療されていることがある．膵酵素が低いこともある．左背部痛と心窩部痛が特徴．

　■最新の治療としては膵石溶解療法（トリメタジオン）と体外衝撃波破砕療法（ESWL）が行われ，CCK受容体拮抗剤が治験中である．

イレウス高橋　慶一 6巻5号 , 1996年5月 , pp.431-433

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絞扼性イレウス

　■絞扼性イレウスを除外できるかどうかという観点で初期治療にあたるべきである．

　■CPK上昇およびアシドーシスを認めなくても絞扼性イレウスのことがある．

大腸癌イレウス

　■腸管の減圧を計り，一期的吻合を心掛ける．

　■治癒切除が可能なら通常のリンパ節郭清を行うべきである．

胃・十二指腸潰瘍樋口　和秀 , 伊藤　裕之 , 荒川　哲男 , 小林　絢三 6巻5号 , 1996年5月 , pp.434-435

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　■消化性潰瘍の治療は，潰瘍治癒の質（quality of ulcer healing；QOUH）を考慮した防御因子増強薬の併用療法が基本である．

　■再発性の胃・十二指腸潰瘍に対しては，Helicobacter pylori　（H．pylori）の除菌療法を試みる．

過敏性腸症候群北守　茂 6巻5号 , 1996年5月 , pp.436-437

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　■過敏性腸症候群（IBS）は便通異常を伴う機能的な疾患であり（表1），心理社会的因子をも含めた全人的アプローチが必要である．

骨盤内感染症―特にクラミジア感染症について榊原　繁樹 6巻5号 , 1996年5月 , pp.438-439

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　■初交年齢の低下に伴い，若年者層のSTD　（性行為感染症）が増加して，これが，骨盤腹膜炎の主たる原因となっている．この内で最近注目されているクラミジア感染症（J1）について述べる．

　■このクラミジア感染症の治療には，キノロン系の抗菌薬もしくは，テトラサイクリン，マクロライド系の抗生剤が用いられる．

尿路結石林　正 6巻5号 , 1996年5月 , pp.440-441

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　■尿路結石の治療は最近の10年余りで革命的変化を遂げている．それは体外衝撃波結石破砕術（extracorporeal shock wave lithotripsy；ESWL），および内視鏡的結石破砕術（percutaneous pyelolithotomy；PNL, transurethral ureterolithotomy；TUL）の発達の結果である．

急性腸間膜動脈閉塞症田畑　隆文 6巻5号 , 1996年5月 , pp.442-443

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　■血管由来の急性腹症は緊急度が高い．急性腸間膜動脈閉塞症，腹部大動脈瘤破裂の可能性は常に念頭におく．

　■急性腸間膜動脈閉塞症に特異的な身体所見，検査所見はない，激しい腹痛，持続する腹痛があるときは，腹膜刺激症状がないことを理由に漫然と経過をみてはならない．血管造影か，試験開腹か．

　■second look operationをためらうな．

JIMデータ

腹痛診療の現場の悩み―アンケート青木　誠 , 小泉　俊三 6巻5号 , 1996年5月 , pp.444-451

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　■「腹痛診療のガイドラインを求めて」をテーマに特集号を企画したのを機会に，腹痛診療の現場の悩みについてアンケートを行いました．このアンケートは，本誌編集アドバイザー，総合診療研究会，家庭医療学研究会の会員の方々を中心に，総合的な診療と研修にご関心の高い第一線の医師の方々にお送りしました．

JIM臨床画像コレクション

蕁麻疹様血管炎宮地　良樹 6巻5号 , 1996年5月 , pp.391

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　本来，蕁麻疹は真皮の一過性の浮腫であるので，24時間以内にあとかたもなく消退するのが普通である．発疹は明らかに膨疹であるのにもかかわらず，24時間を越えて個々の発疹が持続して同部位にみられる場合には2つの病態が考えられる．

　1つは，いわゆる遅発型アレルギー反応の表現としての，遷延する蕁麻疹である．とくにアトピー素因のある人に蕁麻疹が生じると，肥満細胞からのサイトカインの関与により好酸球の浸潤を伴う紅斑が持続する場合がある．実際，6～8時間後に生検すると血管炎の像はないものの好酸球の浸潤がみられるとされる．

臨床研究

医学生に対する診断の思考過程の訓練―病態生理を重視した症候学を用いたアプローチ加藤　博之 , 江村　正 , 福岡　麻美 , 高島　敏伸 , 大森　啓造 , 須永　俊明 6巻5号 , 1996年5月 , pp.453-457

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目的

　医学生に対する教育において，思考過程そのものが問題となる「診断の過程」を学習させることは容易ではない．患者が何らかの症候を呈して受診し，医師が問診と診察を行って（確定診断には至らぬまでも）ある程度の診断を下し，初期対応の方針を決定していくことは，医療現場で当然のように毎日行われていることであり，最もプライマリケア的な臨床能力である．しかしながら医学生にはその能力が乏しく，したがってこのような診断能力を備えることを目的とした訓練が必要となる．佐賀医科大学（以下本学）では，6年生の学生に対し症候学の1つのテーマを与えて，病態生理の理解と考察を重視した自己学習を行わせることにより，診断の思考過程の訓練に効果を上げているので報告する．

総合外来

消化管出血を見逃さない（2）―ルーチン検査で出血源が発見できない場合奥脇　治郎 6巻5号 , 1996年5月 , pp.458-459

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　■吐血や下血の原因を調べる場合，まず問診で出血部位を推定して検査をすることが重要である．

　■検査の盲点を意識しておくことが必要である．

　■小腸出血はまれな病気であるが，反復する下血でなかなか診断がつかない例では小腸出血も念頭に置く．その際，下血の色調が重要な手がかりとなることがある．

漢方診療室・11

小児てんかんに対する漢方治療星野　恵津夫 6巻5号 , 1996年5月 , pp.461-462

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　■今回は小児てんかんの患者に対する漢方治療がテ―マである．てんかんは漢方医学が得意とする疾患であるとされるが，精神科治療学の中での漢方治療の位置付けはいまだ明確にされていない．どのようなタイプのてんかんにどの漢方薬が有用かの検討が必要である．

臨床疫学・決断科学

Wait or Treat 山本　和利 , 福井　次矢 6巻5号 , 1996年5月 , pp.465-467

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　■治療すべきかどうかは，当該疾患が存在する確率と治療を行った場合に得られる利益と不利益の割合によって決まる．それらを数値化して判断する方法を理解して欲しい．

卒後研修レポート

国立東京第二病院での研修体験記―後期研修を中心に北西　史直 6巻5号 , 1996年5月 , pp.468-470

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後期研修の重要性

　従来からプライマリケアの研修と言えば卒後2年間のいわゆる初期研修が話題になることが多い．最近しばしば耳にする卒後研修の義務化の話題にしても卒後2年間が対象のようである．最近は多くの臨床研修指定病院，一部の大学病院でスーパーローテイト方式の研修を取り入れているものの，未だ卒業後各医局に入局し，いわゆるストレート研修を行っている大学が大半である．現在の各大学における卒前教育の内容を合わせて考えてみても，医師として最低限の知識と技術を身につけるため，卒業直後のプライマリケア研修は確かに重要である．ただ初期研修終了後の循環器，消化器などの専門医研修が話題になるように，プライマリケア医（総合内科医，家庭医）の「専門医」の研修がもっと話題になってよいと思う．

　筆者は1994年度まで国立東京第二病院（以下東二）においてプライマリケア医指向の教育を受けてきた．当院は以前より初期研修終了後の医師に対し，ポリシーのある独得な研修を行っている．自分の研修を振り返り，研修内容の一例として紹介したい．

基本情報

JIM
6巻5号
(1996年5月発行)

電子版ISSN：1882-1197 印刷版ISSN：0917-138X 医学書院

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