看護管理 10巻5号 (2000年5月)

特集 第4次医療法改正と看護

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 厚生省は,病院における看護職員の配置基準の引き上げなどを盛り込んだ医療法改正案を今国会に提出した。しかし,衆議院議員選挙を控え,与党内には,改正案に難色を示す病院関係団体などに配慮して「慎重審議」を求める声が強く,改正案の成立は困難な情勢になっている。

 医療提供体制の改革について議論してきた医療審議会(厚相の諮問機関)は,看護職の配置基準に対する日本医師会などの猛反発で二転三転した末,2月21日,改正案(資料)に反対する少数意見をつけた上で,厚生省の諮問通りに了承する答申を出した。これを受けて,丹羽雄哉厚相は改正案を社会保障制度審議会(首相の諮問機関)に諮問,答申を得て法案を国会に提出したが,①中小病院への5年間の経過措置延長の検討,②人員配置の改善命令に従わない病院に対する知事の開設許可取り消し規定の見送り,などを盛り込み,日本医師会寄りの法案となった。

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 1998年から2000年にかけての,第4次医療法改正に向けた医療審議会の議論において,主要な論点の1つが,半世紀を経て放置されてきた病棟の看護職員配置基準「入院患者4人に1人」の行方だった。

 本稿では,病院の入院部門(病棟)における看護職員配置をめぐり,①看護職員配置の実態,②最近の看護職員需給状況,③看護職員配置基準の意味するもの,という3つの角度から統計データ等を紹介する。第4次医療法改正案で新たに示された看護職員配置基準「入院患者3人に1人」の持つ意味を,客観的に測る一助としていただければ幸いである。

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改正案の評価

病床区分の方針は3段階で変化

 ──第4次医療法改正案の柱の1つとして,一般病床を「一般病床」と「療養病床」に分類するという新たな病床区分が示されました。まずはこれに対する評価をお聞かせ下さい。

 二木 評価の前に,病床区分に関する厚生省の方針は,ここまで3段階で変化しています(表)。1998年7月に出された最初の報告書では,急性期病床としてふさわしい標準を,「平均在院日数を基に設定する」という方針が明確に出されました。ここでは分岐点となる平均在院日数の数字は出ていませんでしたが,大方の予想では20日前後と言われていました。しかし一部の雑誌やジャーナリストはもっと厳しく,欧米並みに15日か10日になるという煽りに近い予測をし,医療関係者,特に民間病院の関係者は大変な混乱に陥りました。

速報●2000年4月診療報酬改定
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 2000年4月の診療報酬改定は,全体で実質0.2%のプラス改定となった。大きな改定点としては,現行の入院環境料,看護料,入院時医学管理料を統合・簡素化した「入院基本料」の創設があげられる。これは新看護体系を基礎に看護配置基準などで算定するもので,基準看護やその他看護は廃止される。これを含む医科点数改定の主な特徴は以下のとおり。なお本誌次号では,今改定の全体像について,岩澤和子氏(厚生省保険局医療課)のインタビューを中心に解説する。

特別記事

医療事故の刑事裁判 吉川 壽純
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はじめに

 私は1964(昭和39)年4月に検事に任官して以来,ロッキード事件,別府保険金殺人事件,大洋デパート火災事件などの捜査,公判を担当し,医療事故の捜査にも関与してきました。1989(平成元)年4月に弁護士に転身しましたが,医療事故の民事事件にも数多く関与してきたこともあって,医療関係者の方々から,医療事故を防ぐにはどうしたらよいのかをテーマにした講演を依頼されるようになりました。そのような経験から,今回は医療事故を刑事事件の側面からとらえ,過去の判例についても振り返ってみたいと思います。

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 ──遙さんの著書『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』(筑摩書房)が評判になっています。ナースにもケンカ上手になりたいと思っている人は多いと思いますが,この本を読み,東大で上野千鶴子(東京大学教授)にケンカを学ぶのは並大抵ではないことがよくわかりましたので,本日は「遙洋子にケンカを学ぶ」ということで,お話を聞きたいと思います。

 遙 今回の本は,「東大」「上野千鶴子」「学問」と格闘する私の体験です。一見,ケンカの勝ち方のハウツー本のようですが,書いてあることは,私が毎日,東大と上野さんと学問と格闘する中で,ちょっとずつ見えてきたものなんです。

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はじめに

 1962年,国立がんセンターは病院,研究所,運営部からなるわが国初のナショナルセンターとして発足した。1994年,東京都中央区にある中央病院に加えて千葉県柏市に東病院が作られ,現在に至っている。

 国立がんセンター中央病院は12部門,24診療科で構成されており,1999年1月の新病院の開院とともに,従来の診療体制である受持医制から臓器別グループ診療体制(図)に切り替え,1年以上が経過した。

連載 ケアの質とスタッフ配置のための研究・1【新連載】

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本研究を連載するにあたって

 私たちは,平成8,9年度の厚生省看護対策総合研究事業である「わが国および諸外国の変動する看護提供システムに関する研究」班で,ともに研究にあたった。わが国の病院で働く看護職員の夜勤・交代制勤務の現状と課題を明らかにし,さらに,6か国の病院に勤める看護職員の交代制勤務の比較から,その改善策を提案した1~4)

 私たち3人はこの研究を通じてさまざまな問題を共有しあい,議論を重ねていった。平成9年度に厚生省研究班の仕事は終了したが,その後も自分たちが残した問題を継続して研究することにした。私たちの問題意識を継続して行なった研究の概要は次のとおりである。

連載 環境?!・17

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 写真は,ウィーン大学総合病院の放射線検査部門にある,患者が利用する廊下に掲示している案内板である。モノクロ写真のためにわかりにくいが,撮影室と待合室が赤,緑,紺,黄色の4色で塗り分けられている。これを見たとき,この塗り分けは検査器械の種類を示しているに違いないと思いこみ,私は院内を案内してくれた人に「それぞれの色は何の検査器械を示しているのか」と質問した。彼はその質問の意味が分からずに首を傾げ,「これはただ単に撮影室と待合室の関係を示すものです。たとえば患者には『赤の待合室で待っていてください』とだけ言えば迷うことはないですからね」と答えてくれた。よく見ると4つの撮影室に1室の待合室が対応していて,その組み合わせを4色の色で塗り分けており,「一般撮影室」「CT」「透視」といった検査機器の機能によりグループを構成しているのではなかった。また,撮影室はA,B,Cなどと表示されており,親しみのない検査器械の名前が掲示されているわけでもなかった。

 病院は看護部,診療部,各種検査部などいくつもの組織から構成されており,その複雑な組織を空間として具現化している。そのため,患者にとっては複雑で迷いの生じやすい建物ができ上がる傾向にあると言える。院内に案内板を設置する際にも,医療者にとっては常識の,病院の組織や機能を前提に作成してはいけないのかもしれない。

連載 現場の学としてのアクションリサーチ―ソフトシステムズ方法論の理論と実際・2

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 前回は,アクションリサーチを研究のスタイルとして現場密着型で間主観的な方法論として分類し,主に解釈主義や科学的実証主義との違いについて議論した。

 今回はさらに,アクションリサーチの特徴である経験的知,思い入れのモデルと行為からの学習といった概念について詳述し,アクションリサーチの輪郭を明らかにしていく。そしておわりに学問研究としてのアクションリサーチの妥当性について論じる。

連載 看護管理業務の改善―長野赤十字病院の取り組み・2

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はじめに

 「あの人がもう少しリーダーシップを発揮してくれたら,私の病棟はもっと活気づくのに」と悩んでいる看護管理者は多い。しかし,部下のナースたちのリーダーシップ発揮を期待はしていても,実際には学習する機会を与えていないのが現状ではないだろうか。

 当院では,中堅層である卒後10年以上の到達目標を表1のとおりに作成している。これらの目標が達成されるように計画したのが前回紹介した看護管理研修である。研修生23名の経験年数は,7年目が1名,11~15年が5名,16~20年が10名,21~24年が6名,28年目が1名で,平均17.8年であった。

連載 看護管理者の眼・5

病院ボランティア 田中 由紀子
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 1995年の阪神淡路大震災以来,ボランティアに対する社会の認識が高まりました。

 病院ボランティアについては,長い歴史を持っている施設も多く,それぞれの病院の特性によりさまざまな活動が行なわれています。

連載 災害看護―金田和子の救護人生から学ぶ・5

救護は「心」 大和田 恭子
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後輩へのまなざし

 去る3月8日朝,東京目黒で営団地下鉄日比谷線の脱線衝突事故が起きた。多くの方々が死傷し,筆者の所属する日赤医療センターも数名の被災者を受け入れた。

 筆者は救急部の婦長として,第一報が入ると同時に救急外来の体制を整え,医師や他の看護婦らとともに次々に搬送されてくる負傷者の処置に当たった。救急外来はさすがに混乱を極めたが,診療中の医師・看護婦だけでなく,事務をはじめとする他職種の職員も大勢応援に駆けつけてくれ,その協力のもと比較的迅速に救急処置を終了することができた。その傍らに教え子の看護婦や医師の動きを見守る金田の姿があったが,その表情は満足気であった(かどうかは,残念ながら定かではない)。

連載 カウンセリングの現場から・5

宿主としての親たち 信田 さよ子
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 テレビや週刊誌でこのところ「引きこもり」という言葉が氾濫している。ショッキングな事件と関連づけられて,まるで諸悪の根源のようである。

 不登校については,教育委員会などというものがあるし,生徒はもともと管理されているのだから当然その人数も把握されやすい。しかし引きこもりとなると,そもそもどこにも所属していないのであるから,その数などはカウントされない。一説によると100万人などという記事を読んで驚いた。地方自治体によっては,精神保健福祉センターで引きこもりの若者のグループ活動を実施しているところもある。

連載 ニューヨーク人間模様・5

発信のかたち 大竹 秀子
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 あっという間に,締切である。

 あいかわらず毎日の睡眠時間は3時間から4時間。新聞もテレビのニュースもロクに見ないから,世の中で何が起きているのかさっぱりわからない。買って積んである新聞の山だけがうず高くなっていく。あーあ。

 いまのアパートに住み始めた頃,いまから思えばこの界隈はまだけっこう危うい場所だった。家を出て西に2本ほど通りを歩いたあたりは,バワリーと呼ばれ,ひと昔前から酔っ払いのたまり場として悪名高い場所だった。といって,通行人の身に危険があるわけではない。酔っ払いは,「ナイトトレイン(夜行列車)」とか「サンダーバード(雷鳥)」だとか,名前ばかりはなかなかに風情のある,ひと瓶99セントくらいの安ワインを茶色の紙袋の中に隠し持ち,というのもニューヨークでは路上での飲酒が法律で禁止されているからで,警察につかまらないように,一応見えないように気をくばり,道の傍で赤い顔をして寝っころがったりしているのだ。

連載 町看護婦から医療を見ると・5

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ある失敗体験

 先日,私はある失敗をしでかしました。その日,たまたま早起きした私は,早朝からマンションのベランダでガタガタと音をたてて掃除をしていたところを,隣人に注意を受けてしまったのです。すぐに謝りましたが,自分の不注意に愕然としてしまいました。私はその時,まったく隣人の存在を忘れていたのです。

 私は100世帯あまりが入居するマンションに住んでいます。日中は仕事に出ていますので,近隣の方と関わりをもつ機会はとても少ないのです。マンション内で他の居住者の方とまったく顔を会わせない日さえあります。そんな関わりのなさが隣人への無関心となって現われ,隣人の存在自体を忘れさせたのです。関係性の忘却です。そしてその結果,不注意な行動で早朝に騒音を生じさせ,隣人に迷惑をかけるという失敗を起こしてしまいました。

基本情報

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看護管理
10巻5号 (2000年5月)
電子版ISSN:1345-8590 印刷版ISSN:0917-1355 医学書院

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