理学療法ジャーナル 50巻10号 (2016年10月)

特集 生活支援につなぐ小児理学療法

EOI(essences of the issue)
  • 文献概要を表示

 今日の脳性麻痺児や発達障害児の小児理学療法では,医療から生活へつなぐアプローチが求められ,医療機関から児童福祉法に基づく障害児通所事業,教育領域までを包括した生活支援の視点が理学療法士には不可欠である.本特集では,生活支援につなぐ小児理学療法を軸に重症児の呼吸管理から外来理学療法,そして社会資源である地域療育センターや児童デイサービス,訪問リハビリテーションなど生活支援につなぐ理学療法士としての取り組みと課題に焦点を当てた.

  • 文献概要を表示

はじめに

 重度の肢体不自由と重度の知的障害とが重複した状態を重症心身障害といい,その状態にある子どもや大人を重症心身障害児(者)[以下,重症児(者)]とよぶ.現在,重症児(者)は,全国に約43,000人で,在宅で養育されている児(者)は28,660人と推定されている1).重症児(者)は日常生活のあらゆる場面で介助が必要であり,しばしば活動・参加が制限される.そしてその家族は「自由になる時間がない」,「子どもの養育による睡眠不足」,「体力の限界」などさまざまな負担を背負っている1)

 近年では,気管切開や呼吸管理,経管栄養などが必要な,いわゆる「在宅重症心身障害児」が増加しているといわれている.その背景として,出産年齢の高齢化などのハイリスク分娩の増加や,早産・低出生体重児の増加が挙げられる.近年の医学の進歩により新生児死亡率,特に早産児や低出生体重児の死亡率が低下してきている一方で,以前であれば救命できなかったが,救命できることによって気管切開や呼吸管理,経管栄養などが必要な重度の障害を抱えた児が増加している2).このように重症心身障害に呼吸機能障害を併せ持つと,日常生活の介助に加えて医療ニードが高まり,人工呼吸器や吸引器,酸素ボンベなど常に持ち運ばなければならない高度な機材が増加する.それらが子どもと家族の活動・参加の制限をさらに助長してしまう.

 呼吸管理を伴う重症児(者)とその家族の支援を行うにあたっては,彼らの日常生活を把握・理解し,活動・参加などの日常生活の支援をするための援助が必要であるということを念頭に置かなければならないと筆者は感じている.

  • 文献概要を表示

はじめに

 発達障害とは,2005年に施行された発達障害者支援法の定義で,自閉症,アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害(pervasive developmental disorders:PDD),学習障害(learning disorders:LD),注意欠陥/多動症(attention deficit/hyper-activity disorder:ADHD)その他これに類する脳機能の障害であって,その症状が通常低年齢において発現するものと定められている.

 2012年の文部科学省の実態調査1)では,特別な教育上の支援を要する児童生徒は,通常学級に6.5%存在するとされ,近年急激に増加している.これは発達障害が啓発活動などにより,広く社会に認知されるようになり,対象となる子供が小児科や各都道府県に設置された発達支援センターなどの専門機関や療育機関に相談,受診するようになったことが主たる要因と思われる.また,PDD,ADHD,LDなどの発達障害の発症率が高いといわれている低出生体重児の増加2)もその一因と考えられる.

 筆者らが勤務する愛媛県立子ども療育センター(以下,当センター)でも,自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder:ASD),ADHDなどの発達障害児に対するリハビリテーション処方が増加している.特に姿勢,バランスの問題や運動の不器用さ(clumsiness)を主訴とする,米国精神医学会による「精神疾患の診断と統計の手引き第5版(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition:DSM-5)」で分類されている,運動症群(motor disorders)の発達性協調運動症/発達性協調運動障害(developmental coordination disorder:DCD)3)の児に理学療法(physical therapy:PT)を処方されることが多い.

 そこで本稿では,DCD児の姿勢運動の特性について,臨床経験と諸家の報告を概観し,当センターで行っている理学療法を紹介する.

  • 文献概要を表示

はじめに

 今日小児リハビリテーションにおいて,理学療法の対象となる疾患は神経疾患や整形外科疾患だけでなく,呼吸器疾患,循環器疾患,小児がんなどさまざまな疾患が含まれる.また,一般病院で小児理学療法に携わる理学療法士には,さまざまな疾患についての知識だけでなく,退院後の生活を想定した物的な環境の準備,社会的支援の計画,家族への心理的サポートなど幅広い知識と対応能力が求められる.本稿では,一般病院における退院後の生活支援を含んだ小児理学療法の内容,さらに新生児集中治療室(neonatal intensive care unit:NICU)退院後の生活支援と発達フォロー外来での理学療法について,その具体的内容や注意点について述べる.

  • 文献概要を表示

はじめに

 現在,生まれてくる子どもの約33人に1人が何かしらの病気や障害,低出生体重などで新生児集中治療室(neonatal intensive care unit:NICU)を必要とし1),出生直後から医療的な介入を必要としている.また,成長の過程で保護者が育てにくさを感じたり,就園・就学後の集団生活で困難さがみられる子どもたちも年々増加し2),療育を必要とする子どもの数は増加している.地域療育センターは,そのような病気や障害をもつ子どもとその家族が「地域で育ち,生活することを支援する」ために存在し,子どもとその家族,そして保育園,幼稚園,小学校をはじめとした地域の各機関の支援を行っている.

 本稿では,横須賀市療育相談センター(以下,当センター)の利用児の特徴や,理学療法業務について紹介し,地域療育センターにおいて理学療法士が果たすべき役割について考えたい.

  • 文献概要を表示

はじめに

 児童デイサービス(通所支援)とは,障害を抱えた児童が可能な限り地域や自宅で自立した日常生活を送ることができるように,児童およびその家族を支援する公的な社会福祉事業である.主たる支援の概要は児童に対する療育サービスの提供であり,発達や学習を促すことで心身機能の維持・改善を図り,基本的な動作能力,知識技能,集団生活への適応能力を獲得させることである.また,地域における児童や家族の孤立感の解消,家族の介護の負担軽減など,児童の生活拠点である地域や家族に対する支援という役割も担っている.これまでデイサービスは医学的リハビリテーションが終了したあとの機能低下の防止や社会参加の拡大を目的とする社会的リハビリテーションの色合いが強かったが,現在のデイサービスには,対象が障害者や高齢者の場合には機能回復,児童に対しては発達や学習への支援が求められるようになり,その役割が大きく様変わりしようとしている.

 児童デイサービスは2012年に法改正が行われ,これまで知的・難聴・肢体不自由など障害種別に行われてきたサービスを一元化し,それら3障害に対する総合的かつ身近なサービスの提供が求められるようになった.NPO法人子どもの発達・学習を支援するリハビリテーション研究所(以下,当法人)では,全国に先駆け機能訓練担当職員としてセラピストを常勤で配置することで,さまざまな障害を抱える子供たちに個別療育と集団療育をサービスの両輪とする児童デイサービス事業を展開している.本稿では当事業所で提供しているサービス,利用している児童の変化についても具体的に紹介する.

  • 文献概要を表示

はじめに

 近年,小児科医療は著しい進歩を遂げ,超早産児や染色体異常などの致命率は顕著に向上している.その結果,経管栄養や酸素療法,人工呼吸器などの高度な医療ケアを日常的に必要とする重症児が退院し在宅生活を送ることが増えている.2013年度の厚生労働省科学研究による全国調査1)でも人工呼吸器を装着したまま新生児集中治療室(neonatal intensive care unit:NICU)から1年以内に退院する児が顕著な増加傾向を示していた.

 1994年の健康保険法改正により訪問看護ステーションにおいて,医療保険制度による小児の訪問看護・訪問リハビリテーションが算定・実施できるようになった.樫本ら2)は,「療養児も子どものQOLや成長発達からみると,可能な限り家族のなかで生活することが望まれる」と述べており,今後も訪問リハビリテーションの需要は増加していくと考えられる.

 在宅で日常的に医療ケアを必要とする児は,その家族やきょうだいとともに外出の制限を受けることが多い.今回柊訪問看護ステーション(以下,当ステーション)が中心となり,近隣地域の医師・看護師などの多職種と連携して,医療ケアが必要な子どもと家族が安心して外出できるイベントを企画・実行した.それと同時にボランティアや医療従事者への在宅小児医療の研修会も開催したので報告する.なお,参加者や症例紹介の家族には倫理的配慮をし,同意を得ている.

とびら

原点回帰 沖田 実
  • 文献概要を表示

 早いもので理学療法士になって28年目を迎えた.今だから言えるが,高校時代の同級生に勧められ,理学療法士という名前がなんとなく格好良く思えたため,特に調べもせず,本学の前身である長崎大学医療技術短期大学部に入学した.そのため新入生オリエンテーションの際の進学動機を含んだ自己紹介では,非常に困惑しながらその場を取り繕った.しかし,不思議なもので,このような理由で入学した私が今では母校の教壇に立ち,しかも専攻主任を務めている.

 理学療法士となった1989年の7月,上司の指示で長崎県地域リハビリテーション事業に参画することになり,五島列島の上五島地区で在宅訪問を行った.その際,最初に訪問させていただいたケースが四肢・体幹に重篤な拘縮を抱えており,言葉は悪いが「くの字に曲がった寝姿」であり,その衝撃は今でも忘れられない.発生していた拘縮はすでに強直に近い状態で,実践できたことと言えば,先輩の指導のもとでの手掌面の清拭と定期的な爪の切除といった家族への助言程度であり,理学療法士としてあまりにも無力であることを痛感した.つまり,この時点から私の拘縮研究はスタートしていると言っても過言ではない.

初めての学会発表

  • 文献概要を表示

 2016年5月27〜29日,第51回日本理学療法学術集会が北海道札幌市にて開催され,2日目となる5月28日に口述発表の機会を得ました.本稿では学会発表までの経過,学会当日の状況,発表を終えて感じたことを報告します.

  • 文献概要を表示

歴史の町 京都上陸!

 2016年6月9日(木)〜6月11日(土)に京都府立医科大学副学長の久保俊一大会長のもと,京都にて第53回日本リハビリテーション医学会学術集会が開催されました.

 学会前夜に京都の町を散策していると,至るところに幕末史上人物の石碑が建てられていました.「近江屋跡・坂本龍馬と中岡慎太郎遭難之地」,「池田屋跡」,「佐久間象山先生・大村益次郎卿遭難之地」,「武市瑞山先生寓居之跡」などがあり,幼い頃から幕末史が大好きな私には石碑との突然の出会いがとても衝撃的でした.我を忘れて興奮していたため,同行していた先生方に驚かれてしまったほどです.興奮冷めやらぬなか,歴史的人物がそこにいた史跡が現代と融和していることに不思議な違和感を覚えつつ,京都の地に立っている実感がにわかに沸いた瞬間でした(図).

甃のうへ・第41回

人は財産 渡邊 亜紀
  • 文献概要を表示

 高校生の頃より理学療法士をめざし,念願かなってこの職に就いて16年が経とうとしている.理学療法士をめざしたきっかけは,自分が働くことで人から「ありがとう」と言われるような仕事に就きたいと思ったからである.しかし,「人に何かしてあげよう」「感謝されるような仕事をしよう」といった考えは間違っていたような気がしている.

 私は理学療法士になってからずっと回復期リハビリテーション病棟に携わっている.多くは脳血管障害の患者さんを担当し,入職した当時は1病棟60床を3,4人の理学療法士で担当するという,今では考えられない人員で働いていた.現在のような教育システムはなく,入職1か月後には患者さんを受け持ち,練習中に患者さんを転倒させ,患者さんに満足いく練習が行えず,先輩療法士への担当変更を余儀なくされるといったことを経験した.なぜうまくいかないのかと悩み,自分の経験不足,未熟さが要因であろうと自分なりに納得したことを思い出す.

1ページ講座 理学療法関連用語〜正しい意味がわかりますか?

転換性障害 渡辺 俊之
  • 文献概要を表示

 麻痺,発話障害などで病院を訪れる患者のなかには,身体的原因の検索を詳細に行っても問題が発見されない人がいる.かつては転換型(性)ヒステリー,あるいは単にヒステリーと呼ばれていた患者であり,現在は転換性障害[精神疾患の診断・統計マニュアル,第5版(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(DSM),Fifth Edition)]と診断される.

1ページ講座 理学療法関連審議会・協議会

  • 文献概要を表示

 リハビリテーション専門職団体協議会(以下,協議会)とは,日本理学療法士協会,日本作業療法士協会,日本言語聴覚士協会(以下,3協会)の連携のもと,リハビリテーション医療の発展および向上に努め,もって国民の保健・医療・福祉の向上に寄与するとともに,会員相互の資質の向上と交流を図ることを目的として,2009年4月に発足しました.

 現在の協議会の代表は,日本理学療法士協会の半田一登会長です.また,協議会の代表と事務局は,2年ごとに3協会が持ち回りで運営しています.

入門講座 症例を担当するということ・8

上司を活かす 池村 健
  • 文献概要を表示

はじめに

 「上司を活かす」—この言葉に,なにやら畏れ多いイメージを抱く方も少なくないでしょう.若い理学療法士にとっては,上司は自分たちに指示を出す立場であって,上司を活用するなんてとんでもない,と思う方が圧倒的に多いのではないでしょうか?

 超高齢社会に突入し,医療・介護においてリハビリテーションの重要性が高まる昨今,診療報酬制度においてもアウトカム評価が導入されるなど,私たち一人ひとりの理学療法士に求められる結果と責任もますます高まっています.対象者へのチームアプローチはもはや当たり前という時代において,経験の少ない若い理学療法士が理学療法の効果を最大限高めるためには,上司に力になってもらうことも重要です.しかし,普段からかかわりが多くない上司とどのようにコミュニケーションをとればよいのでしょうか? またその上司に何を頼り,何を相談し,何を提案していけばよいのでしょうか?

 本稿ではこれまであまり考えたことがないかもしれない「上司を活かす」というテーマについて,実際の現場の意見も加えながら述べさせていただきます.若い理学療法士の皆さんが上司と接するうえでの何らかのヒントになれば幸いです.

講座 高次脳機能障害・1【新連載】

  • 文献概要を表示

はじめに—高次脳機能障害のみかたの変遷

 近年,失語・失行・失認・記憶障害・注意障害などの「高次脳機能障害」をみる視点は大きく変化してきた.その理由は大まかには3つある.1つ目には,画像診断の進歩がある.核磁気共鳴画像(magnetic resonance imaging:MRI)などの形態画像の進歩によって,脳損傷患者の病巣部位がリアルタイムでわかるようになった.そのため,多くの症候の責任病巣が明らかになった.また,脳血流SPECT(single photon emission CT)やPET(proton emission tomography),あるいはfMRI(functional MRI)などの機能画像の進歩も,脳機能の局在に関する多くの知見をもたらした.

 2つ目には,脳血管障害の治療そのものが変化したことがある.例えば,血栓溶解療法などの治療介入によって,従来の血栓や塞栓による梗塞巣とは異なる病巣分布に遭遇する機会が増えた.あるいは,狭窄血管に対して,バイパス術や頸動脈内膜剝離術,ステント留置などの治療介入も,従来と異なった血行動態を脳に与える.これらの変化によって,非典型の病巣分布が増え,それらにも対応できる視点が必要になった.

 3つ目には,関連領域(神経心理学,認知神経心理学,認知科学など)の進歩がある.関連領域の進歩は,脳機能の枠組み,考え方,評価方法に大きな変化をもたらした.これらの3つの変化によって,さまざまな新しい知見が蓄積され,その結果,高次脳機能障害をみる視点そのものが大きく変化してきた.本稿では,これらの変化のなかで,特に,失語における新しい考え方,具体的症候の概要を紹介する.

臨床実習サブノート 臨床実習のリスク 地雷を踏むな!・5

糖尿病 井垣 誠
  • 文献概要を表示

はじめに

 平成26年国民健康・栄養調査によると1),糖尿病有病者の割合は,男性15.5%,女性9.8%であり,70歳以上では男性の4人に1人(22.3%),女性の6人に1人(17.0%)が糖尿病とみられている.理学療法士と糖尿病患者のかかわりは,血糖コントロール(疾患管理)を目的とした運動療法を指導する場合,糖尿病神経障害や足病変などの特有の合併症に対応する場合,中枢疾患や運動器疾患などの理学療法対象患者が糖尿病をもっている場合がある.いずれの場合でも,患者に運動を負荷させることは同様であり,糖尿病およびその治療によってもたらされるリスクを十分に把握したうえで臨床実習に臨む必要がある.本稿では,実習で担当する患者が糖尿病をもっている場合を想定し,地雷を踏まないためのポイントを概説する.

--------------------

次号予告

「作業療法ジャーナル」のお知らせ

  • 文献概要を表示

 著者の郡健二郎先生は泌尿器科学を専門とされておられ,そのご業績に対して紫綬褒章をはじめ,数々の賞を受賞されておられるが,その中に2004年に受賞された,「尿路結石症の病態解明と予防法への応用研究」と題する論文に対する日本医師会医学賞がある.私はそのとき,日本医学会の会長として医学賞の選考に携わったが,この医学賞は日本医学会に加盟している基礎・社会・臨床の全ての分野の研究者から申請を受け,そのなかの3名だけに受賞が限られるので,泌尿器系の先生が受賞されるのは珍しいことであった.そのため郡先生のことは私の記憶に強く残っていた.その郡先生が上記の題で200ページ近い本をご自身で執筆されたことは私にとって大きな驚きであった.

 この本は「研究の楽しさ,美しさ」「科研費の制度を知る」「申請書の書き方」「見栄えをよくするポイント」の4章に分かれているが,特に第3章の「申請書の書き方」では実際の申請書の執筆形式に沿う形で,それぞれの項目において基本的に注意すべき点(基本編)と,実際にどのように書くか(実践編)について詳細に記載されており,科研費を申請される方にとって極めて有用かつ実用的な内容となっている.

  • 文献概要を表示

 『脳卒中治療ガイドライン2015』の歩行障害のリハビリテーションにおいて,「内反尖足がある患者に対して歩行の改善のために短下肢装具を用いることが勧められる(グレードB)」として推奨されている.また,「歩行や歩行に関連する下肢訓練の量を多くすることは,歩行能力の改善のために強く勧められる(グレードA)」という推奨もあり,脳卒中のリハビリテーションにおいて歩行練習は不可欠なものとなっている.さらに,日本理学療法士学会から出版されている『理学療法診療ガイドライン2011』において装具療法は推奨グレードA/エビデンスレベル2とされ,FIM得点の向上,歩行速度の向上やエネルギー消費の減少,転倒予防に効果があるとされている.いずれも推奨グレードが高いことから,脳卒中片麻痺の歩行再建やリハビリテーションのなかで装具療法は大きな位置づけとなっていることがわかる.

 しかし装具療法の担い手となる理学療法士の卒前教育のなかで,装具療法に関する内容は教科書をみる限り,昔から使用されている両側支柱型のダブルクレンザックタイプや後方支柱型靴べら式短下肢装具などがいまだ代表格として掲載され,比較的わかりやすく解説されているものの,新しい材料や部品など日々開発されている装具に関しては,臨床場面で試してみないとわからないというのが現状である.そしてこれらの情報が不十分なために,新しい装具作製に躊躇することもしばしばである.

文献抄録

第28回理学療法ジャーナル賞について

編集後記 鶴見 隆正
  • 文献概要を表示

 世間を震撼させた神奈川県相模原市の障害者施設での殺傷事件は,インクルーシブな共生社会の実現に向けた課題をいま一度整理する必要性を感じさせます.「重度障害者は安楽死させるべきだ,不幸をつくる」という優生思想を思い起こさせるような容疑者の発言には憤りを覚えますが,リハビリテーションの理念,国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health:ICF)をベースに日々の実践に取り組む理学療法士界が「障害のある人とともに明日の社会を創る」という想いで地道に共生社会を築く努力を続けることが犠牲となった方々に報いることになると思います.

 さて,今月号の特集は「生活支援につなぐ小児理学療法」です.30数年前,私が新生児集中治療室(neonatal intensive care unit:NICU)での早期理学療法にかかわっていた頃,「元気に育ってほしい」という祈るような母親の心の叫びをいつも背中に感じていました.それだけに児の生育ステージに寄り添った家族支援を第一にしようと強く思い,統合保育のために役場担当者と折衝したり,入園が許可された際には園生活の指導に出向いたり,さらに小学校入学では市の教育委員会と話し合ったり,就学願いの手紙をしたためたことが思い出されます.

読者の声募集

基本情報

09150552.50.10.jpg
理学療法ジャーナル
50巻10号 (2016年10月)
電子版ISSN:1882-1359 印刷版ISSN:0915-0552 医学書院

文献閲覧数ランキング(
2月11日~2月17日
)