とびら
原点回帰
沖田 実
1
1長崎大学大学院医歯薬学総合研究科運動障害リハビリテーション学分野
pp.901
発行日 2016年10月15日
Published Date 2016/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551200676
- 有料閲覧
- 文献概要
早いもので理学療法士になって28年目を迎えた.今だから言えるが,高校時代の同級生に勧められ,理学療法士という名前がなんとなく格好良く思えたため,特に調べもせず,本学の前身である長崎大学医療技術短期大学部に入学した.そのため新入生オリエンテーションの際の進学動機を含んだ自己紹介では,非常に困惑しながらその場を取り繕った.しかし,不思議なもので,このような理由で入学した私が今では母校の教壇に立ち,しかも専攻主任を務めている.
理学療法士となった1989年の7月,上司の指示で長崎県地域リハビリテーション事業に参画することになり,五島列島の上五島地区で在宅訪問を行った.その際,最初に訪問させていただいたケースが四肢・体幹に重篤な拘縮を抱えており,言葉は悪いが「くの字に曲がった寝姿」であり,その衝撃は今でも忘れられない.発生していた拘縮はすでに強直に近い状態で,実践できたことと言えば,先輩の指導のもとでの手掌面の清拭と定期的な爪の切除といった家族への助言程度であり,理学療法士としてあまりにも無力であることを痛感した.つまり,この時点から私の拘縮研究はスタートしていると言っても過言ではない.
Copyright © 2016, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.