理学療法ジャーナル 49巻8号 (2015年8月)

特集 地域包括ケアシステムの構築に向けて

EOI(essences of the issue)
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 2011年の介護保険法改定で「国及び地方公共団体が地域包括ケアシステムの構築に努めるべき」という規定が明記されてから,各地でさまざまな取り組みが始まった.地域包括ケアシステムは従来の地域ケア活動にシステム化の道筋をつくり,地域ごとの特色ある仕組みを構築するものである.

 今回は,地域包括ケアシステムの基本的な考え方とその方向性,さらにはその核となる地域ケア会議をはじめとし,より具体的な地域包括ケアシステムについてさまざまな視点から述べていただき,理学療法士が地域への関心を深める機会としたい.

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地域包括ケアシステムの構築に向けて

 団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて,重度な要介護状態となっても,住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう,医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築の実現が急務となっている.今後,認知症高齢者の増加が見込まれることから,認知症高齢者の地域での生活を支えるためにも,地域包括ケアシステムの構築が重要となる.地域の特性は,高齢化の進展状況をとっても,人口が横ばいで75歳以上人口が急増する大都市部もあれば,75歳以上人口の増加は緩やかで人口は減少する市町村部もある.地域包括ケアシステムは,地域の実情を把握している保険者である市町村や都道府県が,地域の自主性や主体性に基づき,地域の特性に応じてつくり上げていくことが必要である.

 地域包括ケアシステムの構築をめざすにあたっては,都道府県・保険者が長期的な視点をもって取り組むことが不可欠となる.現在,第5期の介護保険事業計画から,認知症施策,医療との連携,高齢者の居住に係る施策との連携,生活支援サービスといった地域包括ケアシステムの実現に必要な要素を記載する取り組みが始まっている.第6期以降の介護保険事業計画は,「団塊の世代」が75歳以上となる2025年に向けて,いわば「地域包括ケア計画」として位置づけ,第5期計画で取り組みを開始した地域包括ケアシステム構築のための取り組みを承継・発展させるとともに,在宅医療・介護連携の推進等に積極的に取り組み,市町村が主体となった地域づくり・まちづくりを本格化していく必要がある(図1).

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はじめに

 少子高齢化に伴い,2025年には労働人口である20〜64歳の2人で高齢者1人を支える時代から,さらに2050年には労働人口の1人が高齢者の1人を支える時代が到来すると推計されている.日本国にとっては重要な問題であり,過去に築き上げてきた社会保障制度では対応できず,新しい社会構造への転換が進められている.

 社会構造の転換をめざして2013年社会保障制度改革国民会議が開催され,そのなかで高齢者の増加する都市部と過疎化が進む地域では地域の有する社会資源も異なることから,各地域において地域の事情を客観的なデータに基づいて分析し,それを踏まえて,医療機能の分化・連携や地域包括ケアシステムの構築など医療・介護の提供体制の再構築に取り組んでいくことが必要と報告された1)

 この地域包括ケアシステムとは,ニーズに応じた住宅が提供されることを基本としたうえで,生活上の安全・安心・健康を確保するために,医療や介護,予防のみならず,福祉サービスを含めたさまざまな生活支援サービスが日常生活の場(日常生活圏域)で適切に提供できるような地域での体制と定義されている.

 その際,地域包括ケア圏域については,「おおむね30分以内に駆けつけられる圏域」を理想的な圏域として定義し,具体的には,中学校区を基本として掲げている2)

 上記のようにその運営主体は市区町村で,地域の特性を考慮したネットワークの構築が求められている.つまり,増加する高齢者に対する医療・介護,認知症,介護予防などの問題,課題を市町村レベルの地域においてネットワークを構築し効率的で効果的な運用を行い,質は維持しつつ膨大に膨れ上がる社会保障費の削減をめざすことが求められている.理学療法士も国民の一人として,さらに医療費,介護給付費のサービスに従事する立場として目的を達成する役割を担っている.本稿では,地域包括ケアシステムの構築に向けて必要とされる理学療法士の役割について述べる.

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はじめに

 本特集の鶴田論文,森本論文において,理学療法士に求められること,果たすべき役割について,それぞれ論述されている.本稿では,地域包括ケアシステムの構築に向けて必要とされる理学療法士の臨床技能と今後どのように行動すべきかについて述べ,養成校における理学療法士教育の方向性について示唆することにする.

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はじめに—地域包括ケアシステムとは何か

 地域包括ケアとは何を意味しているのであろうか.『地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律』第2条で,「『地域包括ケアシステム』とは,地域の実情に応じて,高齢者が,可能な限り,住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう,医療,介護,介護予防,住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制」とされている.これは在宅生活の限界点を挙げていくことが目的であるが,日常生活圏域を設定していることに特徴があり,30分程度で駆けつけられることが想定されている.そこでの中核機能を担うのが地域包括支援センターである.

 「包括」の意味は,海外で“comprehensive”や“integrated”と訳されるが,① 対応するニーズが包括であり,利用者の医療,介護,住宅,雇用,所得等のあらゆるニーズに対応することである.これには,個々の利用者に対してワン・ストップでサービスが提供されることが含まれる.② 対応する提供者が包括であり,セルフケア,インフォーマルケア,フォーマルケアで対応することである.③ 対応する利用者が包括であり,本来であれば,子供から高齢者までを含めたすべての住民に対応する.ただし,今回は介護保険財源で実施しているため,高齢者が中心になっている.これらの包括の内容に,利用者の時間的な変化に合わせて継続的にサービス提供されることを加え,包括的・継続的ケアと呼ぶ場合もある.

 ここで言われる地域包括ケアはコミュニティケアの推進であることに違いはないが,地域の単位を,日常生活の場である中学校区を基本に設定していることに特徴がある.また政策的には,保健・医療・介護といった厚生労働省の施策だけでなく,住宅といった国土交通省の施策を土台に取り込んだものとなっている.ただし,介護保険制度をもとに推進されていることから,高齢者を対象にしたものから住民を対象としたものに,財源も含めてどのようにシフトしていくのかは大きな将来課題である.同時に,対象者を拡大することになれば,所得保障,雇用,教育,人権擁護といった施策も包含して地域包括ケアを検討していく必要がある.

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地域包括ケアシステムにおける情報共有の課題

 在宅医療における医介連携の問題点は,かかわる多職種が,職種ごとに所属する施設が異なり,各職種が持つ情報も,個別に独自の形式で保存管理されているため,従来の連絡方法では情報共有が困難なことである.電話やFax,面会など1対1の連絡方法では,他の多職種には伝わらない.全員が同時に集まる対面会議は,各職種がきわめて多忙であるため,頻回には開催できない.患者宅に連絡帳を置くのは良い方法だが,訪問した時間,患者宅という場所でしか利用できない.これらに共通するのは,「時間と場所の制限」という障壁である.地域包括ケアシステムでは「すまい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される」ことになり,今まで以上に幅広い範囲で,行政や地域の組織などとの情報共有が必要となるため,さらに情報共有が困難になる.

 その点,Information Technology(IT)技術は「いつでも,どこでも使える」ことを可能にし,多人数での情報共有を得意としているので,地域包括ケアシステムにおける情報共有には,IT技術の活用がきわめて有用かつ必要と考えられる.

とびら

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 私が理学療法士になって15年が経ちました.キャリアをスタートした2000年は,介護保険の導入や回復期リハビリテーション病棟入院基本料の新設など,医療も介護も大きな節目を迎えていました.

 入職して数年は,私の病院では療法士数も少なく,毎日残業となり帰宅してもすぐに寝てしまう毎日でした.当然,勉強もままならず,先輩方に指導されるのは必然でした.私は要領も悪く,仕事のできないセラピストの典型のようなものでした.

初めての学会発表

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 2015年6月5〜7日,50周年を記念する大会として,第50回日本理学療法学術大会が東京で開催されました.今回,学会2日目の肩関節・徒手療法のセッションにてポスター発表の機会を得ました.本稿では,学会発表までの経過や,発表を終えて感じたことを報告します.

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学会の概要

 4年に1回開催されているWorld Confederation for Physical Therapy Congress(WCPT学会)2015が,今年はシンガポールで行われ,参加する機会を得ました.シンガポールは赤道からわずか140kmほど北に位置しているほぼ赤道直下の国だけあって,1日の気温は25〜30℃くらい,2日に1回程度はスコールに見舞われるという常夏の気候でした.

 シンガポールの国土は小さく,日本でいえば東京23区や琵琶湖と同じくらいの面積だそうです.学会が行われたのはシンガポール島の南部に位置するSuntec Singapore Convention and Exhibition Centreというコンベンションセンターです.会場の1,2階はショッピングモールやフードコートがある複合施設で,正面入り口には2階天井付近まで及ぶ超巨大液晶パネルがありました.その液晶パネルに大きく「WCPT2015」と書かれているのを見て一気にテンションが上がりました.

甃のうへ・第28回

俯瞰図を思い描く 八木 麻衣子
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 思えば,病院という特殊な環境で働きだしてから,長い年月が経ちました.今では,患者さんと向き合う時間だけでなく,ほかのことにもかかわる機会が増えました.

 医療サービスは,国民皆保険制度によりすべての人に医療を受ける権利が保障されています.言わば,「国民がいつでもどこでも必要なときに医療サービスにアクセスできる状態を提供するインフラ」1)であり,その目的は,患者さん一人ひとりの健康状態を改善することにあると言えます.

1ページ講座 理学療法関連用語〜正しい意味がわかりますか?

運動関連脳電位 縄井 清志
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 自分の意思で身体を動かすとき,実際の運動が起こるよりも前に脳の活動は始まっている.この随意運動の前の脳電位活動を準備電位といい,ヒトの頭皮上から記録される脳波である運動前陰性電位を運動関連脳電位(movement-related cortical potentials:MRCP)という(図)1,2)

 MRCPは,誘発電位の事象関連電位に含まれる.しかし,MRCPは通常の誘発電位と異なり,感覚刺激により惹起されるものではなく,自発的な意思による運動に関連してみられるもので,一定の随意運動を行わせた場合に運動側とは反対側の運動野を中心に出現する穏やかな陰性電位である.

1ページ講座 日本理学療法士学会・分科学会の紹介

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 わが国のスポーツを取り巻く状況は,2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会,2019年ラグビーワールドカップなど,世界規模のイベントの開催に向けて大きく変わりつつある.スポーツ理学療法に求められる内容はますます高度化,多様化していくことが予測され,理学療法士の活動への期待は増していくものと思われる.

 日本スポーツ理学療法学会は,これら社会からの要望に理学療法士が応答できるよう,機能していかなければならないものと考える.

入門講座 臨床に活かす理学療法研究・4

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はじめに

 国際雑誌においても,投稿論文で受理されない理由の最も多いものは研究デザインの問題であるといわれる1).研究デザインの問題には,標本の抽出における問題,介入の方法における問題,結果の測定に関する問題とさまざまなものがあるが,本稿では仮説の作成と統計手法の選択,統計手法の利用という点を中心に解説する.

講座 リハビリテーションにおけるロボットのいま・1【新連載】

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はじめに

 なぜ最近になって日本でロボットがこれほどまでに注目されるようになったのか.ロボットテクノロジーは世界中で研究開発されているが,その多くは産業用ロボットである.日本も長年にわたり産業用ロボット大国として世界に君臨してきた.しかし,新興諸国の台頭により産業用ロボット大国としての地位はいまや危うい状況である.そこで,日本は次世代の国家成長戦略として医療・福祉介護分野へのロボットテクノロジーの応用を重視した方針を打ち出したのである.この方針こそ,日本においてロボットが注目されるようになった大きな要因である.さらに,この方針を打ち出した背景には,もちろん日本における技術力の高さが根底にあるのであるが,世界に先駆けてまず日本が直面する超高齢社会の到来に対する対策であることを忘れてはならない.その方向性から,超高齢社会の担い手である介護者の負担軽減や代替,高齢者の生活支援に重点を置いたロボットが脚光を浴びていることは周知のとおりである.

 一方では,治療手段として障害をもった方々を対象とした医療分野への応用のためのロボットテクノロジーを用いたリハビリテーション(以下,ロボットリハビリ.「ロボットリハビリ」は社会福祉法人兵庫県社会福祉事業団の商標登録)はいまだ途上であり,未熟である.リハビリテーション医療分野におけるロボットは「義肢」から「リハビリ支援ロボット」まで実に幅広く研究開発が行われている.しかし,確実なエビデンスをもって医療分野に応用できるロボットはいまだきわめて少ないことにも留意が必要である.今ようやく,その目的を達成するためのロボットテクノロジーの基盤が整いつつあるというのが正しい認識であろう.近い将来,間違いなくリハビリテーションの分野においてロボットリハビリは主要な柱となる.これからまさにその真価が問われるといっても過言ではない.

臨床実習サブノート 臨床実習で患者さんに向き合う準備・4

上腕骨頸部骨折 地神 裕史
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はじめに

 超高齢社会を迎えている本邦において,高齢者の転倒による骨折は後を絶たず社会的な問題となっている.高齢者の骨折は運動機能の低下のみならず,身体活動や精神活動の低下を引き起こし,ひいてはQOLや認知機能の低下にまで影響する.高齢者に好発する骨折には上肢・下肢・体幹問わずさまざまな種類があるが,いずれも骨の脆弱性に起因しているものが多く,若年者と比較して骨癒合が得られにくいことが特徴として挙げられる.そのため,徹底した安静管理のもとで理学療法を実施しなければならず,適切に情報収集しながら愛護的にかかわるなかでも最大限の効果をあげることが求められる.

 本稿では,臨床実習でも扱う機会が増えている上腕骨頸部骨折に対する理学療法をどのように実施していくのか,また実習で担当する際の注意点について整理する.

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要旨:[目的]今回われわれは骨盤臓器脱(pelvic organ prolapse:POP)患者の運動機能を評価した.また,人間ドックを受診した成人女性(健常対照者)と比較しPOPの運動機能に与える影響について調べた.[方法]手術治療の適応となったPOP患者93名と健常対照者96名を対象とした.運動機能評価は開眼片脚起立時間,Timed Up and Goテスト,立ち上がりテスト,2ステップテストを行った.[結果]POP患者と健常対照者の年代別の比較では,各年代ともPOP患者群は健常対照者群と比較し運動機能の有意な低下が認められた.[結論]手術治療の適応となったPOP患者は同年代の健常対照者と比較し動的バランス能力,脚力,歩行能力といった運動機能の低下と関連があることを明らかにした.

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はじめに

 世界的に理学療法教育制度が再編される時代を迎えている.例えば,ヨーロッパにおいては,「ヨーロッパ高等教育圏」を創る動きのなかで,理学療法教育が再編されている.米国においては,専門職業人養成の大学院化が進んでおり,理学療法士養成も博士課程へと移っている.

 本稿では,各国における理学療法教育制度の再編動向を紹介したい.

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次号予告

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 運動器に対する超音波画像診断装置の解像度が著しく進歩し,臨床での使用が普及しつつある今日,そのトップランナーである著者による時宜を得た価値ある書籍が出版された.

 本書は「関節拘縮を超音波で見るとは」との総論に始まり,上肢と下肢の関節における組織の超音波観察と拘縮との関連,さらに近年注目が高まっているエラストグラフィーを用いた組織弾性の計測を示した章により構成されている.

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 理学療法MOOKは1998年に刊行され,シリーズを重ね17年目を迎えた.自宅の書棚にも初刊の『脳損傷の理学療法』が鎮座しており,診療や執筆に大いに活躍した.このたび刊行された本書のテーマは,わが国に理学療法士が誕生し半世紀を迎えるこのタイミングにふさわしいものである.この10年で,数多くの診療ガイドラインが整備され,私たちにはEBPTの実践が求められている.編集を手がけた福井勉先生,神津玲先生,大畑光司先生,甲田宗嗣先生は,時代をリードする専門家として名高く新たな技術やエビデンスの提唱者でもあり,本書の内容は大変興味深いものになっている.その特徴は,中枢神経疾患,運動器障害,内部障害,発達障害の領域に分類され,該当領域の理学療法の問題点を整理し,科学的検証と反証,そして今後の動向について言及する構成になっている.

 本書を読み終えた感想は,理学療法全般の変遷を概観することができ,現時点の医療全体における理学療法の位置づけや役割が再確認できたことである.自分が専門とする領域以外の動向を手短に把握できて,自分の知らない知識でメタ認知が促され,診療の幅を広げてくれたように感じられた.著者のこだわりが読み手に伝わってくるものもあり,自分も頑張ろうと思い立たせてくれる.各領域の内容をまとめると,中枢神経疾患では,理学療法モデルの変遷に触れ,エビデンスより過去の診療への反省と再考を促している.そして新たな理学療法モデルに対応した評価指標と治療戦略について提案している.運動器障害では,定説を見直し,日常生活に即した評価の視点や介入について紹介している.罹患部位にとどまらず全身的な影響を考慮することや,病態や病期を詳細に捉えてエビデンスを再構築する必要性を説いている.内部障害では,理学療法手技の一部が科学的根拠に乏しいことを明示している.ガイドラインに採用されているものについては,対象者に合わせて適応を吟味する必要性を説いている.発達障害では,本邦の理学療法の主流であった神経発達学的アプローチの問題に触れている.新生児期からのライフサイクルに合わせた目標設定が重要で,これに合わせた理学療法が提唱されている.新たに開発された粗大運動能力の評価法の普及がエビデンス構築につながると期待されている.

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 チーム医療がうまく稼働している現場では,チーム内で構成されている専門家同士が互いに信頼関係にあるのと同時に,ある職種によって実施された診断および評価結果が,他職種にとっても必要かつ有益な情報となり,しかもその内容(意図)が的確に伝わっている.例えば,整形外科領域のチーム内に理学療法士がいれば,関節可動域検査は,理学療法士が測定した結果を信頼し,活用するはずである.つまり,理学療法士が評価した関節可動域は,罹患した関節の構造とその動きを的確に捉えたうえで疼痛等の制限因子を十分に考慮し,日々の理学療法(治療)後の変化(効果)を加味した最新の結果(角度)であり,その後の治療計画や患者の日常生活を推し量るうえでも貴重な情報となるに違いない.他職種からすれば,言わば「達人」による検査報告であろう.

 もともと検査法や評価法は,その性質から,誰が実施しても正しく実施でき,同じ結果と解釈が得られることが求められる技法である.むしろ,上述のような「達人」技は敬遠されることが多い.しかし,理学療法士が臨床現場で実施する評価は,一般に,相手(対象)が「人」そのものであるだけに一様には行えず,患者の病期,病態および個人の特性に応じて実施方法を工夫し,しかも出てきた結果を解釈するにしても多くの情報を統合しなければならない.つまり,「達人」技が要求され,それには熟練を要する.ただし,「達人」技というと,達人たちによって技が異なり,千差万別の技があるように思われがちだが,そうではない.長い臨床経験をもつ理学療法士には賛同いただけると思うが,10年以上ともなると,どの理学療法士も,関節の持ち方,角度計の当て方,測定中の留意点など,ほぼ同じ方法で実施していることに気づく.実施者の手法を見れば,概ねどのくらいの臨床経験をもつ理学療法士であるかがわかるほどである.つまり理学療法士が実施する評価の技は,経験ある達人から的確に学べば,短期間にしかも汎用できる技として身につけることができる可能性があるわけである.

文献抄録

編集後記 金谷 さとみ
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 これからは地域包括ケアシステムが重要だ!

 近年,この言葉を何度聴いたことか.「地域包括ケアシステム」や「連携」は,施設等の基盤整備と異なり,形の見えないものである.国が箱ものでなく見えないものに力点を置くのは,いわゆるIT社会の波であろうか.疑問に感じながらも,医療と介護の狭間は日々狭くなり,たかが地域包括ケアシステム,されど地域包括ケアシステムなのである.

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基本情報

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理学療法ジャーナル
49巻8号 (2015年8月)
電子版ISSN:1882-1359 印刷版ISSN:0915-0552 医学書院

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