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はじめに—地域包括ケアシステムとは何か
地域包括ケアとは何を意味しているのであろうか.『地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律』第2条で,「『地域包括ケアシステム』とは,地域の実情に応じて,高齢者が,可能な限り,住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう,医療,介護,介護予防,住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制」とされている.これは在宅生活の限界点を挙げていくことが目的であるが,日常生活圏域を設定していることに特徴があり,30分程度で駆けつけられることが想定されている.そこでの中核機能を担うのが地域包括支援センターである.
「包括」の意味は,海外で“comprehensive”や“integrated”と訳されるが,① 対応するニーズが包括であり,利用者の医療,介護,住宅,雇用,所得等のあらゆるニーズに対応することである.これには,個々の利用者に対してワン・ストップでサービスが提供されることが含まれる.② 対応する提供者が包括であり,セルフケア,インフォーマルケア,フォーマルケアで対応することである.③ 対応する利用者が包括であり,本来であれば,子供から高齢者までを含めたすべての住民に対応する.ただし,今回は介護保険財源で実施しているため,高齢者が中心になっている.これらの包括の内容に,利用者の時間的な変化に合わせて継続的にサービス提供されることを加え,包括的・継続的ケアと呼ぶ場合もある.
ここで言われる地域包括ケアはコミュニティケアの推進であることに違いはないが,地域の単位を,日常生活の場である中学校区を基本に設定していることに特徴がある.また政策的には,保健・医療・介護といった厚生労働省の施策だけでなく,住宅といった国土交通省の施策を土台に取り込んだものとなっている.ただし,介護保険制度をもとに推進されていることから,高齢者を対象にしたものから住民を対象としたものに,財源も含めてどのようにシフトしていくのかは大きな将来課題である.同時に,対象者を拡大することになれば,所得保障,雇用,教育,人権擁護といった施策も包含して地域包括ケアを検討していく必要がある.
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