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はじめに
少子高齢化に伴い,2025年には労働人口である20〜64歳の2人で高齢者1人を支える時代から,さらに2050年には労働人口の1人が高齢者の1人を支える時代が到来すると推計されている.日本国にとっては重要な問題であり,過去に築き上げてきた社会保障制度では対応できず,新しい社会構造への転換が進められている.
社会構造の転換をめざして2013年社会保障制度改革国民会議が開催され,そのなかで高齢者の増加する都市部と過疎化が進む地域では地域の有する社会資源も異なることから,各地域において地域の事情を客観的なデータに基づいて分析し,それを踏まえて,医療機能の分化・連携や地域包括ケアシステムの構築など医療・介護の提供体制の再構築に取り組んでいくことが必要と報告された1).
この地域包括ケアシステムとは,ニーズに応じた住宅が提供されることを基本としたうえで,生活上の安全・安心・健康を確保するために,医療や介護,予防のみならず,福祉サービスを含めたさまざまな生活支援サービスが日常生活の場(日常生活圏域)で適切に提供できるような地域での体制と定義されている.
その際,地域包括ケア圏域については,「おおむね30分以内に駆けつけられる圏域」を理想的な圏域として定義し,具体的には,中学校区を基本として掲げている2).
上記のようにその運営主体は市区町村で,地域の特性を考慮したネットワークの構築が求められている.つまり,増加する高齢者に対する医療・介護,認知症,介護予防などの問題,課題を市町村レベルの地域においてネットワークを構築し効率的で効果的な運用を行い,質は維持しつつ膨大に膨れ上がる社会保障費の削減をめざすことが求められている.理学療法士も国民の一人として,さらに医療費,介護給付費のサービスに従事する立場として目的を達成する役割を担っている.本稿では,地域包括ケアシステムの構築に向けて必要とされる理学療法士の役割について述べる.
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