耳鼻咽喉科・頭頸部外科 86巻9号 (2014年8月)

特集 前庭機能検査の新展開

赤外線眼振検査 中村 正
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POINT

●眼振の回旋性成分を的確に評価することがめまい診断には重要である。

●急性期を過ぎためまい患者でも赤外線眼振検査により潜在的な眼振を検出すれば診断に貢献できる。

●赤外線眼振検査を行うことはめまい診断にとっては必要不可欠である。

●赤外線眼振検査はすべてのめまい患者にルーチンに施行すべきである。

●VOGにより眼振の水平・垂直・回旋性成分の定量的な解析を行うことができる。

自覚的視性垂直位検査 小川 恭生
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POINT

●SVV測定は巨大装置を必要とせず,短時間でできる耳石器機能検査であり,めまい患者の経過観察に有用である。

●SVVは主に卵形囊機能を反映すると考えられている。

●SVVは急性期をすぎると,末しょうの障害部位の機能が回復しなくても正常化する。

●今後,内耳異常検出率を向上させるためのSVV検査法の発展が期待される。

重心動揺検査 國弘 幸伸
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POINT

●重心動揺検査は静的な体平衡機能検査である。

●平衡機能を定量的に評価するだけでなく,計測結果を保存し経時的に経過を追跡できるという特長を有する。

●本検査を行うにあたっては,計測の結果から得られた種々のパラメータの意味を理解しておく必要がある。

●重心動揺計で計測するのは体重心ではなく,プレートに加わる垂直荷重の作用中心点であることを忘れてはならない。

前庭誘発筋電位(VEMP) 瀬尾 徹
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POINT

●cVEMPは,球形囊-下前庭神経の機能を評価することができる。

●oVEMPは,卵形囊-上前庭神経の機能を評価することができる。

●cVEMPによって,聴神経腫瘍や前庭神経炎の障害部位の推定,内リンパ水腫の推定が可能である。

●oVEMPによって,BPPVの卵形囊障害が推定できる。

●耳石障害によるめまいという新しい疾患概念が確立されつつある。

Head impulse test 牛尾 宗貴
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POINT

●Head impulse test(HIT)は一般外来やベッドサイドで施行可能なほど簡便であり,比較的生理的な刺激が可能な半規管機能検査である。

●温度刺激検査などで評価してきた外側半規管に加え,前・後半規管機能も検査できる。

●被験者と対面して行う定性的HITにおけるcorrective saccadeの評価は主観的となるが,診療機器を全く必要としない優れたスクリーニング検査であると考えられる。

●高速CCDカメラを利用して行う定量的HITでは,前庭動眼反射(VOR)の絶対値と肉眼では確認しづらいcorrective saccadeも評価できる。

●今後のめまい診療において重要な位置を占めると考えられる検査であり,ひろく普及することが望まれる。

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はじめに

 頸部郭清術は頭頸部癌の治療にはかかせない手術手技であり,その必要性は広く認知されている。郭清範囲や術式(図1)は多少異なるものの,頸部を広く開創し,脂肪組織に含まれたリンパ節を一塊として摘出することは同じである。多少の後遺症が出現するのはやむを得ないとはいえ,患者にしてみれば少しでも後遺症が少ない状態を望むのは当然である。以前は転移性頸部リンパ節があれば根治的頸部郭清術が必須であったが,最近では内頸静脈と離れているものは,内頸静脈を切除せず保存することが普通になっている。副神経や胸鎖乳突筋に対しても同様で,リンパ節が神経や筋肉に癒着したり,播種が疑われる場合のほかは温存されている。最近は癌治療後のQOLの維持を重視するようになっている。

 頸部郭清術による肩の運動制限や肩の痛みは決して軽いものではなく,術後長期間継続するために患者のQOLは著しく低下する。頸部郭清術の合併症を予防するためには,郭清範囲の縮小(特にⅡB領域)やリハビリテーションの早期導入が考えられている1)

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はじめに

 喉頭癌は頭頸部領域で発生頻度の高い悪性腫瘍で,声門上癌は頸部リンパ節転移をきたしやすく,遠隔転移が多い。治療法は放射線療法,化学放射線療法,喉頭全摘術,喉頭温存手術と多岐にわたり,T2症例,T3症例での喉頭温存率,治療の選択などに関しては施設間差が存在する。今回われわれの施設において,今後の方針を再検討するために過去13年間に当科で一次治療を行った声門上癌症例について検討を行ったので,若干の文献的考察を加えて報告する。

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はじめに

 悪性リンパ腫(malignant lymphoma:ML)は頭頸部領域に初発する症例が多く,しばしば耳鼻咽喉科初診となるが,試験切除などの診断確定を目的に血液内科や化学療法科から診察を依頼されることも多い。しかし,組織試験切除術やリンパ節摘出術を行っても,炎症,感染症,良性疾患や上皮性悪性腫瘍の場合もあり,診断確定には苦慮することが多い。また,それら検査を繰り返さざるを得ないために,患者の負担も大きい。

 血清可溶性インターロイキン-2レセプター(soluble IL-2 receptor:sIL-2R)とチミジンキナーゼ(thymidine kinase:TK)活性は,血液悪性腫瘍のマーカーとして保険が適応されており,特にMLの再発時に有意に測定値が上昇する症例が多いことから1),経過観察に有効な腫瘍マーカーとして用いられている。一方,耳鼻咽喉科・頭頸部外科の領域では前述のとおりMLあるいはその疑い症例に遭遇する機会は多いが,文献的に渉猟した限りでは初回診察に際してのスクリーニングを目的とした上記2マーカーの有用性を検討した報告はなく,わずかにsIL-2R測定値による予後を検討した報告がみられるのみであった2)

 当科では,日常の一般外来診察でMLが疑われた症例の初回診察時に,両者同時に測定を行い診断の補助としてまた試験切除術決定の判断基準としてきた。今回,この2マーカーの測定結果をレトロスペクティブに統計的解析を行い,いずれのマーカーが,またいかなる測定法が最も望ましいかを確定することが本報告の目的である。

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はじめに

 良性発作性頭位めまい症(benign paroxysmal positional vertigo:BPPV)は,ある一定の頭位をとることによりめまいをきたす疾患で,現在では卵形囊から脱落した耳石がその病態に関与しており,半規管のクプラに耳石が付着するものをクプラ結石症,半規管内に浮遊耳石が移動するものを半規管結石症として理解されている。またBPPVに関与する半規管は後半規管が最も多いが,外側半規管によるものも考えられている。一般的には特発性で,通常は聴力が正常もしくは左右差を見いだせない場合が多い。しかしながら一側性感音難聴や聴力の左右差を伴った症例に少なからず遭遇する。

 今回,われわれはめまいを主訴に来院し外側半規管型BPPVと診断した症例のなかで,すでに純音聴力閾値の左右差を伴っていた症例を検討したので報告する。

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はじめに

 副鼻腔真菌症の大部分は予後が良好な非浸潤型であるが,稀に副鼻腔の骨破壊をきたし,頭蓋内や眼窩内に浸潤し,予後不良となる浸潤型が認められる。今回,浸潤型蝶形骨洞アスペルギルス症に対して蝶形骨洞単洞化手術を施行した1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。

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はじめに

 副甲状腺に発生する腫瘍は比較的稀な疾患であるが,原発性副甲状腺機能亢進症の原因となることは広く知られている。副甲状腺腫瘍の治療方法は手術による切除であるが,術後にhungry bone syndrome(HBS)を発症する可能性がある。HBSとは過剰に分泌された副甲状腺ホルモン(PTH)により脱無機質化された骨が,手術後に血清カルシウムを貪欲に吸収するために,低カルシウム血症が遷延する病態である。HBSを発症するとカルシウム補正に時間を要するため入院期間の延長や退院後の長期間の内服加療が必要になる。そのため術前のHBSのリスク評価や予防が重要となっている。

 今回われわれは,高カルシウム血症を契機に発見され,術後にHBSをきたした原発性副甲状腺機能亢進症の1例を経験したので報告する。

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はじめに

 上顎洞血瘤腫は1917年に田所1)が報告した片側の上顎洞にみられる臨床上の疾患概念で,しばしば骨破壊を伴って悪性腫瘍との鑑別が困難なことがある2)。今回,硬口蓋を広範囲に穿破した上顎洞血瘤腫症例を治療する機会を得たので,経過を報告するとともに,文献的考察を行った。

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内視鏡下鼻副鼻腔手術の優れた実用的学習書

 内視鏡下鼻副鼻腔手術が鼻科手術のスタンダードとなって久しい。内視鏡の登場で見えなかった部位が見えるようになり指導もしやすくなった反面,立体解剖の把握が困難となった。鼻副鼻腔手術はポピュラーな手術であるが,入りやすい一方で非常に多くの術式があり,個々の症例ごとの解剖学的バリエーションも多い奥行きの深い手術である。今日の鼻科手術では多くの手術装置や道具を使用するが,本書ではそのことを前提として,まず術者が座位で手術することのメリットを第1章の「セットアップ」で論理的に述べている。そして,内視鏡を把持する腕の安定のための手台をきちんとセットすること,モニターとナビゲーションの位置,さらには各種フットスイッチの配置などが詳細に解説されている。

 第2章の「基本操作」でも初心者にわかりやすくシェーバー使用法のコツが解説されている。第3章の「鼻副鼻腔炎に対する手術 基本編」では,ポリープ切除や鉤状突起切除手技に始まり後鼻神経切断術や嗅覚温存の工夫まで11項目についてしっかりとポイントが解説されている。鉤状突起切除の項では「最も重要なことはしっかりと観察すること」で,具体的には「内視鏡所見と術前CT所見を整合させること」が手術上達のカギであると述べられている。多くの画像を用いて解説されており,具体的なポイントがつかみやすい。

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あとがき 丹生 健一
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 今日は7月31日,IFHNOS(国際頭頸部癌学会連合)のWorld Congressから帰ってきたところです。会場はNew YorkのTimes Square。夏休みに入り観光客でごった返し,横断歩道を渡るのも一苦労でした。今回は世界を代表するがんセンターMemorial Sloan Kettering Cancer Centerの100周年記念ということで,学会というよりもお祭り。開会式ではニューヨーク市警のバンド演奏に誘導されて各国の代表が旗を持って入場し,マイケル・ダグラスがスピーチという派手な演出でした。参加者は約3,500名,日本からも100名以上参加したそうです。進行頭頸部扁平上皮癌に対して化学放射線療法が広く行われるようになったためかプログラムは「甲状腺癌」一色でした。ちょっと物足りない感じもしましたが,予後がよいためついつい等閑になりがちな甲状腺癌に正面から向きあうよい機会だったかもしれません。

 さて,今月号の特集は「前庭機能検査の新展開」です。保険収載されて赤外線眼振検査は一気に普及しましたが,それ以上の精密な検査となると多忙な日常診療ではなかなか手が回らないですね。本特集では重心動揺検査や前庭誘発筋電位(VEMP),そして自覚的視性垂直位検査やHead impulse testなどの新しい検査法を取り上げ,エキスパートの先生がたに解説をお願いしました。久しぶりのCurrent Articleは,浜松医科大学峯田周幸教授による「頸部郭清術後の肩関節障害の予防とリハビリテーションの検討」です。QOL向上のために副神経や胸鎖乳突筋を温存し郭清範囲を縮小する機能的(選択的)頸部郭清術が広く行われるようになりましたが,それだけでは上肢挙上障害は予防できません。リハビリテーションの重要性を峯田先生の総説からぜひご理解ください。

基本情報

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耳鼻咽喉科・頭頸部外科
86巻9号 (2014年8月)
電子版ISSN:1882-1316 印刷版ISSN:0914-3491 医学書院

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