胃と腸 4巻4号 (1969年4月)

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Ⅰ.X線検査法(第1表)

1.腹部透視および単純撮影法

 小腸の疾患で本法の適応となるのは主としてIleusのときだが,穿孔や結石との鑑別のためにも腹部を広範囲に撮影すべく,使用フイルムは大きい方がよい(大角,半切).立位撮影が原則だが,仰臥位,腹臥位,側臥位も撮っておくと判定がより確実さを増すことになる.しかしガス像のないIleusのために本法の限界があることは周知の通りである.近年螢光倍増管とテレビジョンの進歩で,透視により麻痺性Ileusと機械的Ileusの区別ができるようになった.

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Ⅰ.はじめに

 消化吸収に関する研究法としては,わが国では主として吸収試験法,とくに各種栄養素の摂取量と排泄量を測定して,その比から吸収率を算出するBalance studyや,特定の物質を経口投与した後の血中濃度や尿中排泄量から腸管吸収能をみる方法が臨床上広く用いられている.しかしながら,これらの検査法は腸管内の消化吸収を間接的に知る方法であるから,より直接的に挿管法によって得られた腸内容物について,構成成分や酵素活性を測定することが重要であることはいうまでもない.古くEinhornが十二指腸ゾンデを考案して,十二指腸液を採取したのが腸液検査法の最初ではあるが,1934年MillerらがMiller-Abbott管を作成して,下部小腸からも腸液を採取する方法を確立したのを契機に,腸液検査法は著しい発展をとげた.ここでは今日までの腸液検査法の発展のあらましを,われわれの研究と併せて述べることにする.

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Ⅰ.歴史的考察

 挿管法に関する歴史をみると,最初は1790年LondonのJohn Hunterが筋肉の麻痺による嚥下障害をきたした患者に経管栄養のため胃内に挿管したのにはじまり,Philip Syng Physick(1813)は胃洗源のため挿管し,Hemmeter(1896)は十二指腸内挿管を,Scheltema(1908)が始めて小腸内に挿管を報告している.その後Einhorn(1909),Gross(1910),Jutte(1912),Palefsky(1914),Rehfuss(1914),Lyon(1920)などが各種の改良を行ない,Levin(1912)はSmooth Catheter-tipped tubeを考案し,今日もその名前が付けられている.またBuckstein(1920)はバリウム注入のためIntestinal tubeの使用に成功し,これによる腸管の生理学的および細菌学的研究の可能性を指摘している.更にWangensteen(1913)は単管のtubeによる持続吸引法を発表,Miller-Abbott(1934)がDouble Lumened Rubber tubeを作り,生理的実験法あるいは腸閉塞に対する一つの治療法として認められる様になった.またHarris(1944),Cantor(1946),Wild(1948)は2重管の幽門通過を助けるため各種の改良,工夫を行なっている.

 これらのtubeによる小腸の生理学的検索も行なわれ,Van der ReisとSchembra(1924)がDarm Patroneによって,小腸の計測を行ない,Ganter(1925)およびNickel(1933)は,挿管により小腸はAccordion-likeに短縮することを報告している.本邦においては河石(1931)がEinhorn十二指腸ゾンデにより小腸計測を行なっている.その後伊藤(1944),深草(1957)が計測を行ない,計測値は短縮により大きな影響を受けると報告している.また安井(1960)はpoly-ethylen tubeで計測し,最近ではHirsch,AhrenおよびBlankenhorn(1956),篠崎(1962)らが各種の方法で計測した長さおよび腸管の移動性についての報告がみられる.

小腸粘膜生検 木原 彊
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Ⅰ.はじめに

 消化管の病理解剖学的研究は古くから行なわれているが,諸臓器の病理組織学的研究のなかで最も遅れていたのは腸管系の研究である.

 このことは,剖検では死後直ちに腸管を固定しないかぎり粘膜の自家融解が起こることや,腸管の腫瘍性病変,腸結核,腸チフスなどの病理に目が向けられ小腸の機能面からみた吸収障害などの病理学的な解明のてがかりが得られなかったことに原因したと思われる.Shiner,M.(1956)1)に始まった小腸粘膜生検方法による小腸粘膜の病理学的研究は小腸疾患の研究に画期的な進歩をもたらし,以来,器具や術式の改良が加えられ,小腸機能検査法の進歩とあいまって,剖検組織では到底なし得なかった臨床病理学的な検索がすすめられるようになった.生検標本では,疾患の経過に従って生検し組織学的な検討ができ,またその病期における消化管の機能障害やレ線所見と組織学的変化を対比しうるので,小腸疾患の病態生理の研究の上でも欠くことのできないものになった.さらに,組織片を利用しての組織化学,酵素検査法,電子顕微鏡的検査への応用などが行なわれるようになり,小腸粘膜生検は小腸粘膜の基礎的な研究にも寄与するところが大きくなった.本稿では教室で行なっているMultipurpose Suction Biopsy Tubeを利用した生検方法の実際,組織診断における二,三の問題点を具体的に述べ,著者が経験した十二指腸粘膜生検で認めた病変にっいて記述し,おわりに最近の研究方向について紹介することにした.

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Ⅰ.緒言

 「小腸の内視鏡」というテーマをあたえられたとき,すでに胃内視鏡が十二指腸内にかなりの頻度に挿入可能となっていたし,あちこちで十二指腸専用のファイバースコープの試作が進められていた.この勢では,この原稿の締切頃にはきっと世界の誰かが空腸内挿入に成功するだろうと思っていた.それほどこの方面の研究は次第に白熱度を増してきているように思う.

 ファイバー光学系の応用によって,どうやら内視鏡は幽門輪というながい間挿入観察をはばんでいた関門を突破するに至った.そして十二指腸病変を内視鏡観察の対象とすることができるようになってきた.

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Ⅰ.症例

 患者:田○井〇三〇 65才 男子

 主訴:食慾不振,体重減少.

 家族歴:父は91才で老衰で死亡し,母は71才でリウマチで死亡した.同胞は5人で長兄は肺結核で死亡,次兄も死亡(死因不明),他は健在である.

 既往歴:33才の時に扁桃腺摘出術をうけ,37才の時に腸チフスに罹患した.4~5年前より気管支喘息といわれていた.酒は全く飲まず,喫煙は1日20本位である.

 現症歴:昭和41年8月初め頃より食慾不振,体重減少をきたした.昭和42年2月テール便が10日位つづいたので近医を受診し治療をうけていたが,心配なので4月15日当癌センター外来を訪れた.4月15日のX線検査では立位正面像で前庭部に陰影欠損様所見をみとめ要再検査となった.4月19日のX線検査では胃体下部後壁に陰影欠損をみとめ,Ⅱaではないかと老えられた.4月25日にFGS検査を行ったところ,前庭部後壁から胃角部後壁にわたって白色を呈する隆起をみとめ,生検を2カ所に行ったが組織学的にはポリープ様病変で悪性は否定された.それで,経過を観察していたが,7月28日のX線検査でやはり胃体下部後壁に隆起性病変をみとめ,強く悪性を疑わしめた.8月1日に再度のFGS検査を行い,前庭部から胃角下部後壁にわたり表面凸凹不平で白色の隆起をみとめ,生検を7カ所に行い組織学的に乳頭状腺癌と診断された.それで胃癌と決定し手術の目的で8月15日に入院した.

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まずこれからのべる2症例のレ線所見をごらんいただこう.第1図,と二重造影像であり,第3図,第4図は第2例目のそれである.

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症例

 患者:須○正○,74才,男.

 主訴:上腹部重圧感.

 既往歴:約10年前,大腸炎に罹つたほか著患を知らない.当病院を訪れる数カ月前から,上腹部の重圧感,げっぷ,咽頭部狭窄感,軽度食思不振を覚えるようになった.しこう品は煙草1日20本程度である.

 臨床諸検査成績:胃液は低酸を示し,下記X線所見および胃内視鏡所見のほか特記すべき異常所見はなかった.

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Ⅰ.はじめに

 胃平滑筋腫および胃平滑筋肉腫は,今日それほど稀な疾患ではないが,本邦にとくに多い胃癌と鑑別すべき疾患として,臨床的および病理学的な検討が種々試みられている.われわれも最近巨大な腹部腫瘤,貧血および食思不振を主訴とし,精査の結果,胃平滑筋肉腫と診断され,手術により組織学的に確認しえた症例を経験したので報告する.

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Ⅰ.はじめに

 主として胃体部大攣皺襞が異常に肥厚し,蛇行した状態をGiantrugae(巨大皺襞症)と呼称されているが,この疾患の本態は勿論のこと,病理組織学的な面もなんら統一された見解はないようである.従って診断面でも一定した基準も,検査方法もなく,多くの混乱を惹起している.そこで胃巨大皺襞症を一っの症候名として.胃体部大彎皺襞を一定した診断基準のもとに総括して,比較検討することが必要である.

 昨年来,我々は手術例9例を提示し,その術前愁訴,検査成績,病理組織学的所見等より,検討を加え,これらからは一定した基準は設けられず,ただ肉眼的に鐡漿肥厚状態より,びまん性,および限局性の2型に分類し,組織学的には萎縮性胃炎に連なる一断面として把握できることを指摘し,臨床的に胃巨大皺襞症に対する判定基準が今後の問題であることを強調してきた.

 その後,当消化器病センターを受診し,胃巨大皺襞症と診断された症例は昨年4月までに7例,計16例であるが(第1表),これら7例を巨大皺襞症と診断するに当り,我々の設けた診断基準について報告し,一般の御批判を仰ぎたい.

研究会紹介

富山県胃疾患懇話会 村田 勇
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 従来より,富山県においては,消化器病関係の研究としては,県医師会が催す胃カメラ,胃レ線像読影などの講演会が単発的に行なわれているにすぎなかった.

 昭和41年8月,金沢大学武内内科他の有志が中心となって,白壁彦夫博士をむかえて,北陸胃疾患懇話会が開かれたが,この研究会は,第4回で立ち消えとなった.しかし,その後,これに啓蒙されて,北陸三県(富山,石川,福井)に,それぞれ消化器病とくに胃疾患を中心とする研究会をもとうという動きが活発となった.

大阪胃研究会 中島 敏夫
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 青山大三博士(大阪回生院)の提案によって当地にはじめて胃疾患研究のつどいがもたれたのはたしか昭和37年秋の頃と思う.「近畿胃研究会」と名付けられ,青山博士を中心に京府医大増田内科,京大脇坂内科,阪大第1内科,第2内科,第1外科,第2外科,放射線科,第2病理,微研放射線科,大阪医大岩田内科,神戸大辻内科,神戸中央市民病院,鳥取大石原内科,姫路マリヤ病院などの同好の士数十名が,E社大阪支店の会議室にあつまって研究会を重ねた.青山博士は精力的,意慾的着想のもとに会の運営一切を担当し,村上忠重,白壁彦夫,市川平三郎,熊倉賢二,中島哲二,常岡健二,崎田隆夫,城所功,芦沢真六,竹本忠良,高山欽哉,信田重光,高木国夫,望月孝規,佐野量造ら諸先生のご講演をお願いして早期胃癌研究の啓蒙につとめ,当地でのこの方面の水準はとみに向上した.この貢献は昭和40暮頃までつづけられた.

 この研究会に刺戟されて各機関でもそれぞれ独自の会合がもたれる機運がたかまった.

技術解説

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 講演会や研究会でX線写真のきれいなスライドを見せられると,非常に所見が読みやすいし,また説明を聞いていても判りやすい.これに反して,コントラストの悪いスライドを供覧しながら「原板では,はっきりしているのですが……」と前置きしながら説明しているのを聞いていると,「本当にそうなのだろうか」「その所見の程度はどの位か」など色々の不審の点がでてきて腹立たしいやら,気の毒やら複雑な感じがする.このようにX線診断の説明には,まず第一に形態を見せなければ,いくら言葉で説明しても充分なものではない.それ故,スライドの良し悪しは,講演会や研究会での効果を左右する大きな要素であるといってよい.

 『さて,良いスライドを作るには,もとになるX線写真の原板もきれいでなければならないが,そればかりでなく,スライド作成上の技術も大いに関係してくる.スライドの作り方について以下述べてみよう.

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Ⅰ.はじめに

 7年前,Hirschowitzのフアイバースコープがわが国に輸入された当初,その柔軟な可撓性を駆使した胃内の直視下観察法はその性能はきわめて優れていた.しかし使用例数を重ねるにつれ,器械の損耗が甚しく,殆ど数百例の使用で黒点が目立ち,イメージ不良となる例が多かった.医療費の高い米国では,この程度の器械の耐用限度でも,充分原価が償却され,新製品を補充することも容易であると思われるが,わが国の現状にはそぐわないものと考えられた.

 そのご間もなく開発された,国産フィイバーガストロスコープ(FGS)は,種々の性能の改善を企図したが,耐久性についても,米国製を凌ぐ優秀な製品が作製されるようになった.すなわち,初期に開発された先端アングル機構のない診断用FGS,町田A型では,柔軟性こそ多少米国製に劣っていたが,器械のねじれが起こりにくくまた螺旋の損傷が少なくしたがって,ファイバー自身の折れが少ないため耐久性は米国製にはるかに優っており,1,000回以上の頻回の検査に耐えうるものとなった.

 しかしその後,先端アングル機構を有する診断用FGS(C,S型)が広く普及すると共に,生検用FGSが出現し,さらに最近ではライトガイド式FGSが開発されるに至り,それぞれの器種にっいて,器械の耐久性に多少の差があり,一様に論じられない面が多くなっている.なかには,現在なお開発途上にあるため,耐久性にかなり難点の残されている器種もあることは否定しえない.このような器械の構造上の問題に関しては,今後一層の改良が期待されるが,どんなに器械の側の耐久性その他の構造上の諸条件が改善されても,使用する側で器械の使用法を誤ったり,無理な扱いをすれば,器械の損耗をはやめ,寿命を縮めることは当然であろう.FGS検査を施行する術者の熟練度,FGSの使用法,検査前後の器械の整備の如何により,器械の耐久性に著しい差が生ずることは事実である.

 そこで本稿では,

 1)各種FGSの実際の耐久性はどの程度であるか.

 2)実際に起こしやすい故障はどのようなものであるか.

 3)FGSを長持ちさせるためには,器械の使用法,整備について,どのような注意が必要であるか,の3点について記してみたい.

診断の手ほどき

Ⅱc 市川 平三郎
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 本号から毎月典型的な早期胃癌の症例を掲載し,特に初心者のためにそれらの所見の読み方を解説してゆくことになりました.

 今月はⅡc型の症例をとりあげてX線像の読影の参考としてみました.

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 第三回アジア太平洋消化器病学会は,オーストラリア東南端のメルボルン市で1968年10月7目から11日までの5日間にわたり,約300名の参会者を集めて開かれた.

 会場は市の中心部に近いRoyal Australian College of Surgeons(R.A.C.S.)の建物である.1800年代の古い建物が数多く保存されているメルボルンの中では比較的新しい,しかし落着いた感じの建物であるが,オーストラリアの卒後教育を充実し,外国への医師の流出を防ぐ目的で建てられたものだそうである.二階建のくすんだクリーム色の建物には,何ら学会の標識もなく当初会場を探すのに迷った程である.周囲には広い芝生を囲らせ,道をへだててSt.Patricks教会の高い尖塔が美しい姿を空高くそびえさせている.また会場の近くにはVictoria州庁のどっしりした古めかしい大きな建物が高く広い石段の上に安定し,メルボルンのMain streetを見下している.大通りには一昔前の東京の都電に似たtram carが走り,赤い箱形の電話ボックスが見られる.オーストラリアは南半球にあり,メルボルンはその南端でもあるので,10月といえば春の幾分肌寒い季節で街行く人は厚いオーバーを着ていたが,芝生の若草や木の若葉は淡いもえぎ色の拡がりを見せ,柔らかい日射しに反射してまことに美しい時節であった.

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欧文目次

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 御承知のようにHenning教授は消化器病の大家で細胞診に関する業績も多い.著者は細胞診の領域を胃に迄拡げることによって消化器病の細胞診を体系づける自信を持ったようである,口腔から食道,胃,十二指腸,結腸にいたる消化管の各部に対し著者の行なっている検体の採取法,その処理方法,染色法,およびその成績の評価等について著者の見解を卒直に述べている.

 記載は簡潔ながら正常像から各種疾患における細胞像までを広く説明を加えており,ことに剥離後変性により多様な像を呈することを考慮して組織における細胞像と対比しながら述べている点は面白い.

編集後記 川井 啓市
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 いよいよ恒例の学会シーズンに入りますが,あちこちの大学で学園ストが相次ぎ,一部学会の演題にも欠演のありそうな慌しい毎日です.今までの大学の抱えていた矛盾を考えれば,当然の事態が起こってきた感なきにしもあらずですが,早急にこのような問題も解決されて,安心して研究できるよう努力したいと思います.それにしても「胃と腸」の分野では,もはや大学の一.一部の研究者のみによる研究ではなく,すでに開業しておられる先生方にも根をおろした,豊かな研究の土壌が次第にできてきているのを喜びたいと思います.

 今月は「胃と腸」本来の目的の一つでもある小腸疾患の診断を特集としてとりあげました.何といっても病態生理の未解決な分野ですが,白壁先生のX線診断,増田先生の腸液,斉藤先生の腸紐,木原先生の小腸生検など,いずれもお得意の分野での豊富な文献的考擦と研究内容は,今後の研究のための貴重な方向づけとなりますし,将来の小腸学の一道標になると思います.

基本情報

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胃と腸
4巻4号 (1969年4月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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