印象記
第三回アジア太平洋消化器病学会に出席して
城所 仂
1
1東京大学分院外科
pp.537-538
発行日 1969年4月25日
Published Date 1969/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403111033
- 有料閲覧
- 文献概要
第三回アジア太平洋消化器病学会は,オーストラリア東南端のメルボルン市で1968年10月7目から11日までの5日間にわたり,約300名の参会者を集めて開かれた.
会場は市の中心部に近いRoyal Australian College of Surgeons(R. A. C. S.)の建物である.1800年代の古い建物が数多く保存されているメルボルンの中では比較的新しい,しかし落着いた感じの建物であるが,オーストラリアの卒後教育を充実し,外国への医師の流出を防ぐ目的で建てられたものだそうである.二階建のくすんだクリーム色の建物には,何ら学会の標識もなく当初会場を探すのに迷った程である.周囲には広い芝生を囲らせ,道をへだててSt. Patricks教会の高い尖塔が美しい姿を空高くそびえさせている.また会場の近くにはVictoria州庁のどっしりした古めかしい大きな建物が高く広い石段の上に安定し,メルボルンのMain streetを見下している.大通りには一昔前の東京の都電に似たtram carが走り,赤い箱形の電話ボックスが見られる.オーストラリアは南半球にあり,メルボルンはその南端でもあるので,10月といえば春の幾分肌寒い季節で街行く人は厚いオーバーを着ていたが,芝生の若草や木の若葉は淡いもえぎ色の拡がりを見せ,柔らかい日射しに反射してまことに美しい時節であった.
Copyright © 1969, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.