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Ⅰ.はじめに
7年前,Hirschowitzのフアイバースコープがわが国に輸入された当初,その柔軟な可撓性を駆使した胃内の直視下観察法はその性能はきわめて優れていた.しかし使用例数を重ねるにつれ,器械の損耗が甚しく,殆ど数百例の使用で黒点が目立ち,イメージ不良となる例が多かった.医療費の高い米国では,この程度の器械の耐用限度でも,充分原価が償却され,新製品を補充することも容易であると思われるが,わが国の現状にはそぐわないものと考えられた.
そのご間もなく開発された,国産フィイバーガストロスコープ(FGS)は,種々の性能の改善を企図したが,耐久性についても,米国製を凌ぐ優秀な製品が作製されるようになった.すなわち,初期に開発された先端アングル機構のない診断用FGS,町田A型では,柔軟性こそ多少米国製に劣っていたが,器械のねじれが起こりにくくまた螺旋の損傷が少なくしたがって,ファイバー自身の折れが少ないため耐久性は米国製にはるかに優っており,1,000回以上の頻回の検査に耐えうるものとなった.
しかしその後,先端アングル機構を有する診断用FGS(C,S型)が広く普及すると共に,生検用FGSが出現し,さらに最近ではライトガイド式FGSが開発されるに至り,それぞれの器種にっいて,器械の耐久性に多少の差があり,一様に論じられない面が多くなっている.なかには,現在なお開発途上にあるため,耐久性にかなり難点の残されている器種もあることは否定しえない.このような器械の構造上の問題に関しては,今後一層の改良が期待されるが,どんなに器械の側の耐久性その他の構造上の諸条件が改善されても,使用する側で器械の使用法を誤ったり,無理な扱いをすれば,器械の損耗をはやめ,寿命を縮めることは当然であろう.FGS検査を施行する術者の熟練度,FGSの使用法,検査前後の器械の整備の如何により,器械の耐久性に著しい差が生ずることは事実である.
そこで本稿では,
1)各種FGSの実際の耐久性はどの程度であるか.
2)実際に起こしやすい故障はどのようなものであるか.
3)FGSを長持ちさせるためには,器械の使用法,整備について,どのような注意が必要であるか,の3点について記してみたい.
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