胃と腸 36巻4号 (2001年3月)

今月の主題 潰瘍性大腸炎診断基準の問題点

序説

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はじめに

 潰瘍性大腸炎の患者数は,厚生省特定疾患医療費受給者数をみると増加を続けており,1999年度には6万人を超えた.

 その統計の基礎となる診断基準について,わが国での歴史を振り返ってみながら,現在使用されている基準の問題点を述べてみたい.

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要旨 わが国の厚生省が潰瘍性大腸炎を特定疾患に指定し,調査研究班を発足させたのは1973年であり,最初の診断基準(案)は1975年に公表された.以後,小改訂が重ねられ,1998年に最新の診断基準改訂案が作成された.日本と欧米の潰瘍性大腸炎診断基準の比較というテーマであるが,欧米の教科書でも疾患特異性(pathognomonic)の所見のない潰瘍性大腸炎の診断は,特徴的な臨床症状,内視鏡所見,X線所見,病理所見および除外診断から総合的になされるというのが一般的なようだ.欧米の研究論文には診断基準が明記されているものもあるが統一されたものはなく,各施設ごとに異なる診断基準を使用している.また,それらの診断基準を見ても日本のものほど詳細で厳密なものが見当たらないのが実状である.

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要旨 自験潰瘍性大腸炎(UC)症例を対象とし,虫垂開口部とそのほかの非連続性病変を内視鏡所見と組織像から検討した.1)UC114例中,虫垂開口部病変を34.2%に,虫垂開口部以外の非連続性病変を14.9%に認めた.前者陽性例では陰性例よりも後者の陽性率が高かった(38.4%vs2.4%,p<0.001).3例は区域性大腸炎であった.2)遠位型活動期UC53例では,虫垂開口部病変の有無で臨床像,内視鏡的罹患範囲,臨床的活動性,治療の有無,使用薬剤に差はなかった.3)大腸各区域から生検を施行した40例では,虫垂開口部病変の有無にかかわらず虫垂開口部と上行結腸で内視鏡所見と組織所見が乖離し,上行結腸では両者に有意な関係を指摘できなかった.生検標本で直腸からの連続性病変が示唆されたのは13例(32.5%)で,20例(50%)では直腸と虫垂開口部を含む非連続性病変と考えられた.以上より,UCでは深部大腸の非連続性病変はまれではないと結論した.

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要旨 潰瘍性大腸炎の診断基準の1つに“直腸からの病変の連続性”が挙げられているが,直腸炎型や左側大腸炎型の潰瘍性大腸炎患者において正常粘膜を介した口側粘膜に潰瘍性大腸炎の活動粘膜と考えられるskip lesionの所見を16/39(41%)と高頻度に認めた.粘液組織学化学的検討からも,これら潰瘍性大腸炎におけるskip lesionは前処置によるartifactや全大腸炎型の部位による治癒像の差を見ているものではなく,潰瘍性大腸炎の活動病変と考えられた.この潰瘍性大腸炎におけるskip lesionの意義については,skip lesionを有する例では有さない例に比べて有意に口側進展例が多く,有意に手術の危険性が高かった.今後は潰瘍性大腸炎の診断基準にskip lesionの存在を明記することが必要で,更なるskip lesion症例の集積,分析が必要と考えられた.

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要旨 従来のUC診断基準の概念を再考するために,UC186例の中から非連続性病変を呈する非典型例を抽出し,これら症例の臨床的特徴を検討した.治療や経過の影響により直腸が一見正常に見えたり病変が区域性であったものは24例(12.9%)あった.右側あるいは区域性大腸炎は7例(3.8%)で,女性に多く,いずれも直腸に病変がなかった.これら症例の約70%は約3年の間に直腸に典型的なUCの炎症像を有するようになった.虫垂開口部周囲に非連続性病変を呈する症例は16例(主病変が肝彎曲部までにとどまる例の15.4%)で,男性に多かった.同病変は発赤,小びらんなどで発症早期から認められたもの10例,経過の途中から認められたもの6例であった.同病変の約63%は治療により消失し,病変が肛側に広範進展した例はなかった.発症早期に直腸に非びまん性の斑状発赤を呈し感染性腸炎との鑑別が困難な症例は4例(2.2%)あった.これらは若年発症例で,早期にUCの治療を行った2例は病変の進展が抑制されていた.以上より,右側あるいは区域性に加えて,直腸の炎症欠如,虫垂開口部病変,直腸の斑状病変など非連続性,非びまん性病変などの存在に言及した新しいUCの診断基準概念を提唱するべきであると考えられた.

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要旨 当部で大腸内視鏡検査を施行し,経過観察している潰瘍性大腸炎150症例のうち,内視鏡的に非連続性病変を認めた19症例(男性8例,女性11例,平均年齢35.8歳)を対象とし,経過中に非連続性となった症例12例と初回発作時に非連続性であった症例7例に分けてその特徴を検討した.経過中に非連続性となった症例の病変分布に一定の傾向はみられなかった.一方,初回発作時に非連続性であった症例の病変の分布は,直腸や虫垂に多かった.また,軽症例が多く,通常内視鏡観察で正常と思われる部位を色素撒布し拡大観察すると,リンパ濾胞の過形成の散在を全例に認め,病変の進展とリンパ組織との関連性を考えるうえで興味深い所見と考えられた.

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要旨 発病初期に非典型的な形態を示した潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis;以下UC)の1例を報告した.患者は15歳,男性.1998年,腹痛,粘血便を主訴に入院.薬剤服用歴なし.注腸X線,内視鏡検査にて直腸より横行結腸まで連続性にびまん性の粗糙粘膜を認め,更にS状結腸には多発大型たこいぼ様びらんがみられた.生検組織上UCに矛盾しない像であった.上部消化管内視鏡検査では,十二指腸第二部(下行部)にひだの途絶および,びらんが散見され,一部は縦走配列していた.この所見はCrohn病(以下CD)の十二指腸病変に酷似していた.組織学的には上部および下部消化管にCDを示唆する所見はなく,UCを疑うも確定診断には至らなかったがSASPの服用で症状は改善した.約4か月後の増悪時の注腸X線検査では,直腸のたこいぼ様びらんは消失しており,連続性の粗糙粘膜と鉛管状腸管を呈しており,典型的UCの所見であった.しかし,十二指腸第二部にひだの途絶や小びらんは軽度ながら散見された.この時期,副腎皮質ステロイド剤(以下PSL)が著効した.初診より1年7か月後の注腸X線検査は前回再燃時と同様であり,典型的なUCの像を呈していた.十二指腸第二部の小びらんは消失しほぼ正常化していた.以上,発病初期にCDを疑わせる十二指腸病変を有した非典型発症様式のUCの1例を報告した.

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要旨 患者は34歳,男性.血液が便に付着することを主訴に来院.症状に増悪傾向がないため,無治療だったが,2か月後増悪した,画像検査で横行結腸から下行結腸に散在性のアフタ様病変を認め,脾彎曲に区域性にびらん性病変を認めた.内視鏡検査での経過観察中,区域性の病変には変化なく,アフタ様病変は緩解増悪を繰り返していた.発症10か月目に直腸から横行結腸まで連続性びまん性の潰瘍性病変となり,典型的な左半結腸型のUCに進展した.本症例はUCの初期像やUCにおけるアフタ様病変の意義を考える上で,示唆に富む症例と考えられた.

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要旨 患者は51歳,女性.主訴は下痢.潰瘍性大腸炎と診断され治療中であったが,経過中に直腸に区域性の狭窄が出現した.狭窄部の粘膜からの生検で異型上皮は認められず,また経過中に狭窄の増悪はみられず癌の合併は否定的であった.狭窄の原因は特定されていないが,直腸に限局した炎症性の疾患が合併したものとして経過観察中である.

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要旨 患者は45歳,男性.24歳時に全大腸炎型の潰瘍性大腸炎(UC)を発症した.難治性であったため,35歳時と37歳時の2回に分けて大腸切除術を受けたが,2回目の手術前に十二指腸球部から下行脚の顆粒状粘膜を指摘されていた.当院受診時,十二指腸病変はKerckring皺襞の消失と粗糙粘膜へと進展し,下行脚の狭窄とVater乳頭の機能不全を伴うまで増悪していた.生検では,粘膜固有層の密な炎症細胞浸潤と陰窩炎を伴っていた.この十二指腸病変は,プロトンポンプ阻害剤投与では不変であったがmesalazine投与後に改善した.本例の十二指腸病変は,肉眼的所見と組織学的所見がUCの大腸病変に類似していたこと,およびmesalazineが有効であったことから,UCに関連した病変と考えられた.

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要旨 患者は27歳の女性.下血,心窩部痛,悪心,嘔吐があり近医を受診し,4型の胃癌が疑われ当院を紹介された.全大腸炎型,中等症の潰瘍性大腸炎とびまん性の胃粘膜の発赤,びらんを認めた.胃生検では悪性の所見を認めなかったが,内視鏡的には表層拡大型の胃悪性リンパ腫も否定しきれず内視鏡的粘膜切除術を施行した.組織学的に高度の炎症細胞浸潤を伴い腺窩内に膿瘍も認め,潰瘍性大腸炎の組織所見に類似していた.Helicobacter pylori(H.pylori)は培養,尿素呼気試験,血中IgG抗体のすべてが陰性だった.胃炎は制酸剤,抗生剤の投与がなくとも,潰瘍性大腸炎の緩解に伴って改善を認めた.

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要旨 患者は14歳,男児.13歳時に難治性の潰瘍性大腸炎(UC)で全結腸切除を受けている.今回入院3か月目に噴門直下と幽門部を中心に全周性の潰瘍,胃角大彎の約1cmの山田Ⅲ型の隆起性病変をみた.生検では全域で炎症細胞浸潤が高度で,再生か腫瘍か判別しがたい異型腺管が散見された.ポリープ状病変は癌と診断され,EMR標本にて炎症細胞浸潤を伴う粘膜内の中分化管状腺癌であった.7か月目に新たに幽門部に約2cmの境界不明瞭な隆起を認め,10か月目に3~4cmの結節集簇様平坦隆起に発育した病変にEMR施行.組織所見は初回の切除病変と同様のm癌であった.本例の胃病変は組織学的にUCおよびcolitic cancerの所見と酷似した.胃を侵すUCは極めてまれであり,colitic cancerと同様の発生機序が想定される癌が胃に多発した例はこれまで報告されていない.

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要旨 患者は35歳の男性.1995年発症の全大腸炎型潰瘍性大腸炎患者.経過中過去2回,大量ステロイド投与を必要とする重症再燃を経験.1999年11月ごろより再度症状の悪化を認め,2000年1月当科紹介入院となった.注腸造影および大腸内視鏡検査にて,脾彎曲部に限局し高度な閉塞所見を呈する特異な形態の炎症性ポリポーシスの集積を伴う活動期潰瘍性大腸炎と診断.白血球吸着除去療法を中心に治療,改善傾向を認めるも脾彎曲部の病変に変化は認めなかった.その後,ステロイド投与にても変化せず,内科的治療の限界と考え,大腸全摘術が施行された.摘出標本の肉眼的,病理学的検索から,潰瘍性大腸炎に合併したfiliform polyposisと診断した.

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 〔患者〕74歳,男性.主訴:特になし.家族歴:特記すべきことなし.既往歴:50歳時より肺気腫で冶療中.現病歴:健診での上部X線検査にて胃の変形をチェックされ,近医受診.上部消化管内視鏡検査にて食道病変を指摘され,精査加療を目的として当科紹介入院となった.

 〔食道X線所見〕立位,軽い第1斜位の二重造影像で胸部中部食道に,数mmの不整形の比較的濃いバリウム斑が描出され,その内部には小さな顆粒状の透亮像が認められた(Fig.1a).病変の側面像を描出する目的で立位の強い第1斜位像を撮影したが,病変部が辺縁から少しずれていたために辺縁の硬化,または伸展不良の評価は困難であった(Fig.1b).

消化管病理基礎講座

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肉芽腫(類上皮肉芽腫)

 肉芽腫とは,元来限局性の肉芽組織から成る腫瘤という概念で用いられた用語であるが,現在では炎症性のものを指している.肉芽腫の主役をなす細胞は類上皮細胞である.この細胞は,組織学的には,豊富な細胞質と淡明な核より成り,上皮細胞に似た像を示すのでこの名がある.この細胞は,lysozymeやα1-antichymotripsinが陽性で,S-100蛋白陰性である.電顕的に類上皮細胞のミトコンドリア,小胞体,ゴルジ装置などは,一般のマクロファージより複雑に発達しているので,分解消化の困難な物質を処理するために,機能の亢進した状態にある組織球,あるいはマクロファージ系の細胞と考えられている1).肉芽腫は,結核症,Crohn病(Crohn disease,以下CD),エルシニア感染症,癩,梅毒,サルコイドーシス,ブルセラ症,リウマチ熱,慢性間節リウマチ,真菌症,異物などに認められる.このうち,消化管に類上皮細胞肉芽腫が出現する疾患で重要なものは,結核とCDである.結核の肉芽腫の特徴は,しばしば中心に乾酪壊死を伴い(Fig.1),大きく,融合性である(Fig.2).一方,CDでは,肉芽腫は小さく,融合はほとんどみられず,中心壊死はない(Fig.3)ことが多いが,認められることもある.したがって,壊死のみで結核との鑑別ができないこともある.わが国のCD確診例で,肉芽腫を認めるものは約90%である.これは肉芽腫がなくても,縦走潰瘍と敷石像を認めれば,CD診断基準で確診とされるからである.一方,西欧では,CDの中で肉芽腫を認める例は約50%である.この違いは西欧では,結核が少なく,また,進行した典型的なCD症例が多く,組織学的に肉芽腫を認めなくても,肉眼的にCDの診断が可能だからである.CDでは,1回の生検で肉芽腫が見つかる頻度は高くないので,できるだけ粘膜下層を含んだ多数の生検標本を採取し,連続切片を作製して検索することが望ましい.サルコイドーシスに関して,その存在を疑っている学者もいる2).サルコイドーシスでは,肉芽腫内の多核巨細胞の胞体内に,星状体やSchaumann小体のみられることもあるが,まれにCDでも認められることもあるので注意が必要である.サルコイドーシスは,リンパ節,脾,皮膚をはじめ,多くの臓器に認められることから,消化管に発生しても不思議ではない.

早期胃癌研究会

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 2000年12月の早期胃癌研究会は,12月20日(水)に東商ホールで開催された.司会は芳野純治(藤田保健衛生大学第二病院内科)と横山善文(名古屋市立大学第1内科)が担当した.ミニレクチャーは西上隆之(兵庫医科大学第2病理)が「潰瘍性大腸炎に合併した種々の消化器癌」と題して行った.

 〔第1例〕56歳,男性.近傍に潰瘍を併発したBarrett上皮癌(症例提供:藤田保健衛生大学消化器内科 斎藤知規).

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 2001年1月の早期胃癌研究会は,1月17日(水)に東商ホールで開催された.司会は幕内博康(東海大学医学部外科)と工藤進英(昭和大学横浜市北部病院消化器センター)が担当した.

 〔第1例〕62歳,女性.食道炭粉沈着症(症例提供:大阪府立成人病センター第3内科 上堂文也).

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 2001年2月の早期胃癌研究会は,2月21日(水)に東商ホールで開催された.司会は馬場保昌(癌研究会附属病院内科)と樋渡信夫(仙台赤十字病院大腸疾患センター)が担当した.ミニレクチャーは横山善文(名古屋市立大学第1内科)が「大腸癌壁深達度のX線診断―計測診断の試み」と題して行った.

 〔第1例〕63歳,男性.ステロイドが著効した蛋白漏出性胃腸症(症例提供:刈谷総合病院内科 馬渕信行).

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要旨 患者は63歳,女性.上腹部痛のため近医で上部消化管内視鏡検査を受け,胃のねじれ様の所見を認めたため,当院に紹介された.諸検査より胃粘膜下腫瘍の十二指腸への逸脱と考えて外科的治療を行った.手術標本の病理学的検索から,ポリープ状を呈した胃粘膜下異所腺の十二指腸への逸脱と考えられた.本例の胃粘膜下異所腺は巨大で独特の形状であり,また十二指腸への逸脱という極めて珍しい所見を呈していたため報告した.

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欧文目次

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 青木眞先生による「レジデントのための感染症診療マニュアル」が医学書院から上梓された.

 日本の臨床,特に内科を含めた臨床は,縦割りの伝統で形成されていたので,どうしても臓器別になりがちである.したがって,例えば感染症のような横断的なものについては,えてして診療科あるいは講座というような縦割りの構造は作りにくい歴史的な背景があった.ところが感染症は極めて日常的に重要な疾患であり,この道の専門家が臨床の教育や研修の場になかなかおられないのが実は問題であることは広く認識されている.このような背景から,日本では抗菌薬の過剰な投与,不適切な使い方,また抗菌薬の耐性菌の発生など,“日本の常識は世界の非常識”というのが数多くみられるのはよく知られている.

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 私は,この本を貧るように読んだ.

 李啓充氏の著作なので読み始める前から予想はついていたことだが,読み終えて,つくづく凄い本だと思う.

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 毎年シカゴで開催されている北米放射線学会(Radiologic Society of North America;RSNA)は,8万人が参加するビッグイベントである.そのRSNAの最大の呼び物として,日曜日夕方にArie Crown Theaterで開催されるimage interpretation sessionの面白さを誌上に再現することを目的に企画されたシリーズの8冊目として,「フィルムリーディング・シリーズ5消化管」が出版された.

 本書は,消化管の解剖と最近の話題をまとめた総論と,79例の症例(食道9,胃18,十二指腸11,小腸12,大腸15,直腸6,腸間膜・腹膜8)から構成されている.1症例につき表裏2頁で,表側に部位と異常所見を組み合わせたタイトル(例;表面平滑な球部隆起性病変),年齢,性別,主訴,現病歴とともに消化管造影を中心とした各種の画像が提示されている.そして裏側に所見,鑑別診断の進め方,診断,診断のポイントという項目立てで診断のプロセスが詳細かつ丁寧にまとめられている.更に疾患についての一般的知識をまとめた囲み記事として「病気の豆知識」と1~3点の参考文献が記載され,最後に☆から☆☆☆までの3段階に分けられた難易度マークが示されている.執筆者は,あくまでもオーソドックスな消化管二重造影を中心に据える八巻悟郎氏(食道担当)と松井敏幸氏,綿密な所見の拾い上げと分析で病態にせまる森山紀之氏(胃担当)と黒田知純氏(大腸担当),内視鏡/超音波内視鏡を駆使して病理像にせまる川元健二氏(十二指腸/大腸担当),基本に忠実な一方でひねりをきかせた読影に定評のある齊田幸久氏(編集/腸管膜・腹膜担当)など消化管の超エキスパートぞろいである.

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 昭和43年医学部卒業の臨床医が中心になって書かれたユニークな本である.学園紛争の最中に卒業の時を迎えた私の周囲にいた彼らの仲間の多くが,当時の学園紛争を冷静に見つめ,新しい未来に期待をかけ力を蓄えようとの意気込みで医師としてのスタートを切ったと記憶している.その後,多くの経験を積み,今やがん患者の診療を担う主力臨床医に成長した著者らの手によってまとめられた本書は,たのもしい限りである.

 本書は,患者の人権を守るために行うがん告知のガイドライン,告知の実際と問題点,分担執筆者それぞれの専門分野からがん患者に病名や病状を伝えるために留意すべき点を具体的に論じ,しばしば遭遇した困難なケースについても考察している.本書を読んだ書評者自身は,“がん患者と真実を語り合うこと”の実現に向けて埼玉県立がんセンターで全職員とともに進めた15年間の努力の経緯の中の1つ1つを想起し,同感する点が多かった.

編集後記 松川 正明
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 潰瘍性大腸炎の治療には的確な診断が欠かせない.潰瘍性大腸炎の診断については積極的な診断と類縁疾患の除外がある.欧米に比べわが国の診断基準は内視鏡・X線所見について詳細な記載があることが明らかになり読者にとって安心できるところである.典型的な所見として直腸から口側へびまん性に拡がる炎症所見から潰瘍性大腸炎と積極的な診断がなされてきた.しかし,このような所見を呈する潰瘍性大腸炎は多いが,少数例ではこのような所見よりも非典型的な区域性病変または散在性病変が目立ち,診断に苦慮することがある.特に,発症間もない症例では散在性びらんを主体とした所見でみられることが発表された.左側大腸炎型や直腸炎型で虫垂開口部にみられる炎症について述べられているが,この病変の臨床的意義はいまだ不明である.潰瘍性大腸炎の長期経過例でしばしば区域性に活動性所見をみることは既報とほぼ同様である.

 潰瘍性大腸炎の症例で大腸以外の胃・小腸病変について,本号により詳細な内視鏡・X線所見ならびに病理組織学所見が明らかとなった.潰瘍性大腸炎でも大腸以外の消化管病変に注意する必要があり,実際診療上に有益な情報であり,注意深く拝読した.

基本情報

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胃と腸
36巻4号 (2001年3月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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