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肉芽腫(類上皮肉芽腫)
肉芽腫とは,元来限局性の肉芽組織から成る腫瘤という概念で用いられた用語であるが,現在では炎症性のものを指している.肉芽腫の主役をなす細胞は類上皮細胞である.この細胞は,組織学的には,豊富な細胞質と淡明な核より成り,上皮細胞に似た像を示すのでこの名がある.この細胞は,lysozymeやα1-antichymotripsinが陽性で,S-100蛋白陰性である.電顕的に類上皮細胞のミトコンドリア,小胞体,ゴルジ装置などは,一般のマクロファージより複雑に発達しているので,分解消化の困難な物質を処理するために,機能の亢進した状態にある組織球,あるいはマクロファージ系の細胞と考えられている1).肉芽腫は,結核症,Crohn病(Crohn disease,以下CD),エルシニア感染症,癩,梅毒,サルコイドーシス,ブルセラ症,リウマチ熱,慢性間節リウマチ,真菌症,異物などに認められる.このうち,消化管に類上皮細胞肉芽腫が出現する疾患で重要なものは,結核とCDである.結核の肉芽腫の特徴は,しばしば中心に乾酪壊死を伴い(Fig.1),大きく,融合性である(Fig.2).一方,CDでは,肉芽腫は小さく,融合はほとんどみられず,中心壊死はない(Fig.3)ことが多いが,認められることもある.したがって,壊死のみで結核との鑑別ができないこともある.わが国のCD確診例で,肉芽腫を認めるものは約90%である.これは肉芽腫がなくても,縦走潰瘍と敷石像を認めれば,CD診断基準で確診とされるからである.一方,西欧では,CDの中で肉芽腫を認める例は約50%である.この違いは西欧では,結核が少なく,また,進行した典型的なCD症例が多く,組織学的に肉芽腫を認めなくても,肉眼的にCDの診断が可能だからである.CDでは,1回の生検で肉芽腫が見つかる頻度は高くないので,できるだけ粘膜下層を含んだ多数の生検標本を採取し,連続切片を作製して検索することが望ましい.サルコイドーシスに関して,その存在を疑っている学者もいる2).サルコイドーシスでは,肉芽腫内の多核巨細胞の胞体内に,星状体やSchaumann小体のみられることもあるが,まれにCDでも認められることもあるので注意が必要である.サルコイドーシスは,リンパ節,脾,皮膚をはじめ,多くの臓器に認められることから,消化管に発生しても不思議ではない.
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