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書評「胃X線診断の考え方と進め方 第2版」
川口 実
1
1東京医科大学第4内科
pp.526
発行日 1999年3月25日
Published Date 1999/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403103008
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この度,吉田裕司先生・市川平三郎先生ご執筆の本書につき,書評原稿の執筆依頼を受けた.小生は,主として内視鏡診断と臨床病理の立場から消化管の診断を行っている.そのような小生になにゆえ書評依頼であろうか.吉田先生,それに市川先生という大先達の書かれた本について私のような若輩が書評するのは大変おこがましい話である。しかし,大学病院という医育機関に籍を置く医師の立場から,という医学書院編集部からの注文に応えてあえて筆を執らせていただく.
消化器疾患を主たる研究対象としている医育機関で共通して抱える問題点の1つは,若手医師の形態学への情熱が冷めつつあることであろう.分子生物学的研究,Helicobacter pylori研究などが盛んに行われている一方で,基本中の基本とも言うべき形態学診断がおざなりになり憂慮すべき傾向である.内視鏡の領域でも,治療には関心を示すが診断については情熱が薄れつつある印象を受ける.X線診断については,内視鏡に比較しても一部の先生方を除いて興味を示さない.原因はいくつかあると思うが,著者の吉田先生が述べられているように,“内視鏡はX線より診断能が高いという誤解,操作も簡単という誤解”があるからであろう.ところが“X線診断能は低いのではなく難しいのです.”まさにそのとおりであり,X線検査は研鑽次第では大きな診断能をもたらす.小生もこの指摘にまさしく同感した次第である.
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