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今回は日本とアメリカの疾患の違い,検査の適応の違いについて報告いたします.UTMB(The University of Texas Medical Branch)では朝7時45分からその日の内視鏡検査の患者さんの症状や,検査の適応についてのmeetingがあり,8時ごろから内視鏡検査が始まります.後ほど説明しますが,アメリカでは検査費用が高額なため,検査の適応が厳しく問われます.日本のようなスクリーニング検査はほとんどありません.必ず何かしらの症状を有しないと内視鏡検査を行いません.例えば上部なら,嚥下困難や上腹部痛,大腸なら下痢や腹痛などです.しかも,吐血,下血以外の症状に関しては,対症療法を行って良くならないときに初めて内視鏡が行われます(例えば胸やけの症状に対してH2 blockerを3か月投与したが改善しないなど),また,例えば2年前に下血の既往があり,そのときのCFで大腸憩室からの出血と診断されていたとします.今回,また下血があっても,なぜCFをorderしたかが問題となります.CFでは憩室炎の診断,出血憩室の同定は困難だからです.そして“注腸X線検査をorderすべきである”との結論になるのです.また,例えば注腸X線で上行結腸に進行癌が見つかって内視鏡がorderされたとします.“注腸で診断がついているのだから単に病理組織を得るためだけの内視鏡検査をorderする必要はない.手術後に組織は得られる”とのdiscussionがなされます.日本では“組織確定のために内視鏡を行いましょう”となりますが,この内視鏡検査の適応についてはcost benefitの面からかなり厳格に議論されているようです.このように検査の適応が厳しいことから,発見される癌は進行癌が多く,早期癌はほとんど発見されないのが現状です.
日本では早期胃癌発見のため胃内の丁寧な内視鏡観察がなされます.しかし,ここアメリカでは,まずcardiaを除いた胃癌がほとんど発見されないこと(小生10か月になりますが2例しか見ていない)が多く,また先ほどお話ししたように,発見しようとしている癌が早期癌ではないために胃内の観察は非常にあっさりしています.その代わり,胃の噴門部癌,Barrett食道に合併した下部食道癌が多いため,cardiaとEG junctionはかなりしつこく観察しています(行ったり来たりを数回繰り返す).sliding hernia,逆流性食道炎も日本と比べてびっくりするほど多く,特にここテキサスでは上部消化管内視鏡検査の半数以上で逆流性食道炎を認めます.Barrett食道も多いことに驚きました.慢性下痢の症状の患者さんではsprue鑑別のため十二指腸から必ず生検を行います.NSAIDsを常用する患者さんも非常に多いため,日本ではあまりみられない配列の多発びらんや潰瘍もよく認めます(かなり激しいテキサスサイズの所見).
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