Coffee Break
忘れられない症例―早期食道癌の初の症例報告
望月 福治
1
1JR仙台病院消化器内視鏡センター
pp.538
発行日 1999年3月25日
Published Date 1999/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403103010
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現在,早期食道癌は内視鏡的粘膜切除術も広く行われるなど,それほど珍しい疾患ではなくなった.ところで,早期食道癌の最初の症例報告となるとだいぶ古い話になってしまう.このことにいささか携わった者として,当時を手繰り寄せてみたい.
われわれは1966年の早期胃癌研究会に症例のプレゼンテーションを行ったが,これがおそらく同会におけるわが国の早期食道癌の第1例目だと思っている.ちょうど早期胃癌研究会の機関誌「胃と腸」が創刊出版された時期にあたり,早速,原稿の執筆依頼状が届いたのも私にとって幸いであった.原稿をまとめ山形教授に提出した(山形敞一,石川誠,大柴三郎,他.主として細胞診によって診断された早期食道癌の1例.胃と腸 1:259-266,1966).当時,東北大学第3内科(山形内科)ではこの症例をめぐって大柴三郎現大阪医科大学名誉教授以下のスタッフが,ファイバースコープのほか川島式硬性胃鏡を使用したり,直視下細胞診を繰り返すなど張り切ったことである.同じ年に千葉大学中山外科から同様の症例報告があり,「胃と腸」に掲載されている(中山恒明,遠藤光夫,太田八重子,他.早期食道癌の1例.胃と腸 2:683-688,1967).そのころ,わが国における早期食道癌の第1例目の報告は,どちらが先かという先陣争いもどきの話もあったようであるが,筆者は,ほぼ同時期であったと考えている.
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