胃と腸 3巻7号 (1968年6月)

今月の主題 胃癌の発生

綜説

  • 文献概要を表示

Ⅰ.緒言

 癌がどのようにして発生するか,という問題は次第に具体的に明らかになりつつある.一昨年の大阪の癌学会では,組織培養中の細胞に癌原物質を上手に接触させると,細胞を変性(恐らく悪性変性)させることができるという報告が行なわれた.ここまでくれば従来の意味における発癌の神秘も,もはや理論的には一段落ついたわけで,次には細胞の増殖のさいに問題になる遺伝という機転,良性の細胞がいかなる遺伝因子の変化によって,悪性の細胞になり,さらにその悪性の細胞の性質がいかにして次の悪性の細胞にうけつがれるかといった次元においての研究に移行することになる.この段階にくると発癌の問題はそれを専門に研究する人達によってのみ論ぜられるが,私どものように形態学の立場から考えるものにとっては,もはや自分の手で触れてみることが出来なくなる憾みが強い.

 しかし振り返って,私どもが日常悩まされたり恐れたりしているヒトの癌の発生機転が,今日全部明らかにされたかというと決してそうではない.診断学の進歩のおかげで,相当に早い時期の癌が人の肺や食道や胃や膀胱などで見つかるようになった.また動物における発癌実験の成功によって,皮膚癌や肝癌などの発生の段階も余程精緻に分るようになってきた.しかしそれは未だ十分に痒い所へ手が届くといった程ではない.組織培養の試験管の中で,癌原物質を与えたら何日目に細胞の性質が変るというように,何時どの細胞から癌細胞が初まったのだという時点や,場を指摘することはできないし,さらにはそこに発生している異型細胞が真の癌細胞なのか,それとも最初は未だそこまでは変性しきっていないで,揚合によっては普通の細胞に後戻りする可能性をもっているものなのか.またそのような異型細胞が生れてくる母なる細胞はどのような性質をもっているかなどの諸点になると,まだまだ決定的なことが言えない点の方が多いのである.

胃癌の疫学 平山 雄
  • 文献概要を表示

Ⅰ.はじめに

 胃癌の発生原因を,疫学的に探究していくと,食生活パターンとの密接な関係に到達する.どのようなプロセスで,そのような関連性がみつかってくるか.その事実を踏まえてこれからどのように研究を発展させていくべきか,それらを成績の紹介と同時に,方法論に触れながら述べてみる.

マウスの胃癌 森 和雄
  • 文献概要を表示

Ⅰ.まえがき

 マウスあるいはラットの胃癌を生成しようとする試みは,過去20年以上に亘って多くの癌研究者,ことにアメリカNIHのStewartらを中心とする学派15)によって大きな努力がなされた.ところが,周知のように,マウスやラットの胃は堤状の隆起limiting ridgeによって判然と前後2室に分かれている.食道に直接つながる部分は前胃とよばれ,食物の貯ぞうの役をし,胃全体の2/3を占め,扁平上皮組織でうらうちされている.これに対し,のこりの部分は後胃とよばれ,これは人の胃に相当する部分であり,胃腺や幽門腺をそなえていて,ペプシンや塩酸を分泌して食物の消化にあたり,幽門部を経て,十二指腸に連なっている.

 マウスやラットを用いての実験で,胃の病変を取扱う場合には,その病変の発生母地が前胃であるか,あるいはまた後胃に属するものであるかを充分見究めてからかからねばならない.それは,前述のように前後胃の成立ちが組織学的にそれぞれ異なるからである.すなわち,前胃に発生したものは,扁平上皮癌が主であって,これらは皮膚,口唇あるいは食道にしばしばみられる癌と同様であるからである.一方腺胃に生ずる腫瘍は,腺癌が主であるが,時には,肉腫が含まれることがある.

ラッテの胃癌 藤村 真示 , 杉村 隆
  • 文献概要を表示

Ⅰ.われわれの実験の背景

 一般的に癌細胞が正常細胞から作られてくる過程は,一種の突然変異様の変化であるとする考え方が強い1).もち論このような考え方に異論をはさむ余地は大きいので,突然変異,すなわちDNAの一次構造の変化を伴わないで,一種の不可逆的な分化の異常というような理解で発癌を説明しようとする立場もある2,3).このような事態にもとづいて,発癌物質は突然変異誘発物質であるか?突然変異誘発物質は発癌物質であるか?という疑問が提出される.

 われわれは微生物に主に用いられて,強力な突然変異誘起物質として知られている,N-Methyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine4,5)(NGと略す)に発癌性があるかないかをまず検討してみた.

  • 文献概要を表示

症例

 患者:内○初○,72歳,男

 初診:昭和42年4月13日

 手術:昭和42年8月18日

 主訴:心窩部重圧感

 既往歴:2~3年前より高血圧症として加療中である.又,若い頃より度々胃腸障害があったという.

 家族歴:特記事項なし

  • 文献概要を表示

Ⅰ.はしがき

 現在,表面陥凹型(Ⅱc型)早期胃癌診断の焦点は,1~2 cm以下の小病変の発見にある.われわれは,大彎側後壁の小さなⅡc型早期胃癌例について,X線,内視鏡,および,病理組織学的所見を供覧し,2,3の検討を加えた.

  • 文献概要を表示

Ⅰ.はじめに

 早期胃癌に対する認識が深まり,臨床検査が進歩するにつれ,臨床診断の理想像として組織規準で考えられてきたⅡb型早期胃癌(日本内視鏡学会案による早期胃癌分類)が,肉眼的に把握出来る時代になって来た.われわれも臨床診断が可能なことを示唆するⅡb型早期胃癌症例を経験したので報告する.

  • 文献概要を表示

Ⅰ.はじめに

 X線検査で胃潰瘍をみつけると,その大方のものについては,良性か悪性かの判別はつく.しかし,本例のように,X線像では一見悪性のようにみえたり,言い方を変えると悪性も否定できずということもある.こんなとき胃カメラ検査を行なうと,まあ少し経過をみようということもある.そんな例で2カ月間経過をみたところ,きれいによくなったX線像とカメラ像を供覧する.

  • 文献概要を表示

Ⅰ.はじめに

 胃癌が早期に発見されるようになって,胃癌の病理学も著しく進歩した.胃癌の発生についても潰瘍や隆起性病変との関連から多くのことがわかってきた.しかし,あくまでも人体が研究対象であるための制約がつきまとう.従って実験動物にそのモデルを求めるのは,胃癌の研究にたずさわる,あらゆる分野の研究者の切望するところであるが,元来実験用動物に胃癌の発生をみることは稀であるし(アフリカ原産のマストミイスは,貴重な例外的存在である1).),また人為的に胃癌をつくることも,多数の学者達の努力にもかかわらず至難のわざであった.ところが,最近筆者らのうちの杉村,藤村は突然変異誘発物質であるN-methyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine(以下NGと略す)を,ラッテの飲料水に溶かして自然に摂取させることにより,高率に,人胃と同じく粘膜上皮が腺細胞よりなる腺胃に胃腫瘍を発生させることに成功した.この詳細は本誌(3巻809~816頁)に述べてあるが,たまたま同一実験群の数匹に剖検で幽門部を中心に腫瘍の発生をみたので,残る生存群に胃腫瘍が発生しているか否かを,X線撮影により知り得るだろうと考えた.しかしながら,ネズミの胃のレ線撮影に関する文献として適当なものが見当らないので,試行錯誤で思いつくままにいくつかの工夫を重ねた後に,生存ラッテの胃腫瘍の描出に成功したので以下その概略を述べる.

  • 文献概要を表示

 村上 本日はどうもお忙しいところをお集まりいただきまして,まことにありがとうございました.私どもは主として胃ガンの早期の発見治療ということを念願とする立場にございますが,それには胃癌の発生という問題にも通じなければなりません.しかしこのことはなかなかむずかしい問題でございまして,人間の材料でやっていただけでは十分にわからない.そこで動物の胃癌の発生ということが知りたいわけでございますが,御承知のように動物の胃癌というものは今までなかなか発生させることができなかった.ところが去年の秋の癌学会の際に,くしくも各方面から胃癌の発生に成功したという実験が報告されました.以前にも実は外国人からそういう発表はありましたのでございますけれども,それらはすべて立ち消えになっておりました.それが,今度の御発表は全部ちゃんとした基礎の上に立って立ち消えということはまずなさそうだという,非常に信頼できる発表ばかりでした.しかもそれが私が日常お近づきを願ってお人柄を知っている研究者からのものでしたから,非常に興味深く拝聴いたしました.

 そこで本夕はその御発表になりました方々にお集まりいただきまして,成功なさった実験をわかりやすい形でたとえば実験の苦心談とか,思いつきに至る道程とかあるいは論文の発表の中には現われない極秘のヒント,といったような形で披露していただいて,臨床家にとってはなかなか分り難いという先入観念のある動物実験を,身近な理解し易いものにしていただけたら幸いであると思いまして,お集まり願ったわけでございます.どうかざっくばらんにひとつお話しいただきたいと思います.それからもう1つがんセンターの杉村先生においでいただきたいと思ったんですが,御都合でお集まりいただけませんでした.残念なことでございましたが杉村先生のお仕事は総説のほうに載せます論文によってお読みいただきたいと思います.

  • 文献概要を表示

Ⅰ.はじめに

 胃の主なX線検査法には,充盈法,二重造影法,粘膜法,圧迫法の4つがある.これらのX線検査法の利点を存分にのばし,弱点をよく理解したうえで,胃全体をくまなく写真に現わすためには,各種の検査法をどのように組み合わせたらよいのであろうか.このような,各種のX線検査法の検討1)2),および,X線検査体系の検討が地道に行なわれたので,近年,わが国では,胃のX線診断は急速に進歩し,早期胃癌も確実に診断できるようになった3)4)5).このX線診断領域の進歩のうち,特筆すべきものは,二重造影法の開発であろう.文献を詳細に検討すれば異論もあろうが,造影剤および空気の量が多いこと.適宜に体位変換をすることなどを考えると,胃の二重造影法はわが国で開発された検査法だといってよかろう.

 ところで,数年前までは,二重造影法というと,仰臥位の二重造影法のことであった.そして,この仰臥位の二重造影法によって,胃の後壁の病変のX線診断は容易になり,表面陥凹型の早期胃癌(Ⅱc)も確実に診断できるようになった.ところが,仰臥位の二重造影法では,通常,胃の前壁の病変は現われないのが欠点である.このことは,胃カメラ検査で前壁のⅡcが発見されるようになるにつれて問題になった.もちろん,腹臥位粘膜法,とくに圧迫法で前壁のⅡcが現わせる.しかし,これらの検査法では全く現わせない症例もあるのである.このような事情のもとに,腹臥位の二重造影法が考案されたのである.二重造影法には,このほかにも,立位,半臥位,第2斜位などの二重造影法もあるが,本文には直接関係はないので省略する.

 私は,昭和40年に,「胃前壁病変のX線診断」6)について報告したことがある.その要旨は,腹臥位二重造影法によって診断した胃前壁のⅡcの症例の紹介である.腹臥位二重造影法を考案するに至ったいきさきは,そこで述べてあるので省略するが,その第1番目の前壁のⅡcは,胃体部のdouble cancerであり,粘膜法や圧迫法では現わせず,腹臥位二重造影法によってはじめて診断できた.そこで,この症例を,昭和39年の学会や早期胃癌研究会で発表したところ,たちまち,胃の前壁のⅡcや潰瘍を腹臥位二重造影法で忠実に現わした症例が,学会や研究会で報告され,雑誌にも発表されるようになった7)8).また,胃前壁のルーチン検査についての検討もされるようになった9)10).このように,腹臥位二重造影法の普及は予想外のスピードであった.X線写真をみれば,そのtechniqueまでもわかってしまうほど,日本のX線診断の水準は高いのである.また,骨身おしまずX線診断に取り組んでいる多数の人々がいるのである.その後,私どもも症例を加えて,胃前壁のⅡcのX線診断について,昭和41年に,東京で開かれた世界内視鏡学会,世界消化器病学会に展示し,また,国際癌会議でも発表した.このときの展示がR. A. Gutmannの目にとまり,彼の近著11)に紹介されるとは,全くおどろきであった.第1症例より,昭和43年1月までの間に,私どもが集めた胃前壁のⅡcは22症例,23病変になる.その大きさは10mm前後のものから60mmくらいのものまであり,部位は胃穹窿部から幽門部にわたる.しかし,症例を集めてみても,胃前壁病変の写し方についての私どもの考え方は,昭和40年当時と余り変っていない.そのため,前の論文の繰り返しになるが,胃前壁病変の写し方について,私どもの集めたⅡcの症例にもとづき,私どもの考えを述べることにする.代表的な3症例を供覧する.

研究会紹介

  • 文献概要を表示

 秋田県には消化器病学を専攻された方々が多いにも拘らず従来定期的な集会がないのは残念に思われたので,私が秋田に赴任したのを機会に取り敢えず集まれるだけ集まって見ようということになり,昭和40.12.15に,第一回の会を開き,名称も秋田県消化器研究会としようという事になった.胃腸研究会という意見も当然あったが,それよりも話題を広く集めた方が第一線臨床医としては適当とされたのである.各自持ち寄った症例について互に思った事は何でも自由に発言して戴くという趣旨にした.和気に満ちた雰囲気が大切と思う.会も年に4回位が適当であろうというので,学会などの比較的少ない月を選んで2,5,8及び11月を例会の月とした.第3~第4土曜の午後3時開会が常となったのは秋田市外から来られる方々には都合が良いからである.この3月2日には第9回例会を開催出来たが,これまでの中,昭41.8月には横手市(平鹿病院)で又昭42.8月には本荘市(由利組合病院)で開かれている.毎会30乃至40名が参集する.提示される症例は10例前後のことが多いが,特に早期胃癌が主となるのは大勢の致す所と思う.内視鏡,細胞診,レ線,手術標本(乃至剖検所見)等の材料,が全部揃っているのは勿論望ましいが,余り形式に捕えられるのは良くないので,場合によってはレ線所見だけのものでも遠慮なしに提示して戴くようにしている.時に診断を問う形式をとったり,又各材料ごとに指名して所見を述べて戴いたりして単調にならぬよう,マンネリズムに陥らぬように注意しているので発言は活発で時間の経つのを忘れてしまうのである.毎回病理学者が出席されるのが一番の強みで,同を重ねるに従って内容が充実して来ているのは最も喜ばしいことである.

 更に東北大山形教授と弘前大松永教授には発会以来強力なバックアップをお願いして来ているので心強い限りである.これまでの間に講演をお願いした方々とテーマは次の如くであって会の内容の一端が察知して戴けるかと思う.

  • 文献概要を表示

 近年の早期胃癌研究の発展に刺激されて,和歌山医大の内部でも昭和40年頃から,第1内科宮村,放射線科金光,第2外科勝見,第2内科愛川,倉橋,その他数名の諸氏が集ってなんとなく消化器グループというようなものが出来た.最初は内視鏡およびX線所見の読み方の勉強,あるいは内視鏡とX線所見の対比,手術をしていれば手術所見との対比というようなはなはだ初歩的な会合であった.会合は1乃至2カ月ごとに開かれ,なんでも自由に話の出来る気楽なもので,正式の名前もつけないまま胃集団会とか胃懇談会とかいいながら医大の内部だけで続けられていた.そのようにしているうちに,医大にそのようなグループがあるのであれば,これを発展させて,各地で行なっている早期胃癌研究会に似たものを作ろうではないかという,外部の病院特に海南市民病院の石本先生や和歌山市医師会病院成人病センターの辰見先生からの働きかけがあり,和歌山日赤病院,済生会病院,その他開業されている先生で内視鏡に興味をお持ちの先生に呼びかけて,第1回を41年10月1日県信ビルで開催された.名称は,興味の中心は,やはり早期胃癌であるため,自然「早期胃癌研究会」という事になった.当時のはっきりした事は覚えていないが,多分工一ザイさんの発案ではないかと思うのだが,ゲストというかモデレイターというか,どなたか内視鏡のエキスパートの方をお呼びしてはどうだろうかという事になり,京都府立医大の高田洋先生が良かろうという事になって,第1回目から現在まで,ずっと御足労をお願いしている.発足当時は,医大内で行なっていた当時の雰囲気の延長もあり,X線写真あるいは内視鏡所見をどう読むか,良性か悪性か,手術をすべきか否か,というような事が討議の中心となり,自然高田先生にいろいろお尋ねするという形で出発した.第2回目は同年12月10日に和歌山市医師会病院成人病センターで開かれ,以来ずっと同成人病センターで開かれている.第5回42年7月15日の会合には,同日第1内科溝口教授が担当された,第8回内視鏡学会近畿地方会で特別講演された,白壁彦夫先生と高木国夫先生においでいただき,いろいろ解説していただいた.回を重ねるにつれて発言も活発になり,症例数も多く,興味ある症例も出るようになってきた.それにつれて,それまでも病理的に十分検索した症例の提出がなかったわけではないが,なんとしても病理組織の検索の不足が痛感されていた.ところが,たまたま42年9月から和歌山医大第2病理学教室に新しく着任された永井教授が,本研究会に加わって病理面を担当して下さる事になったので,今後大いに発展が期待される.最近では症例数が多くなったので,毎回6例ぐらいずつ出さないと処理出来なくなり,3時間として1例30分ぐらいで検討しようという事になった.そのために,第8回43年2月17日には,年齢,性主訴,病歴,検査成績等は,あらかじめ印刷して配布して,直ちにX線から検討出来るようにした.医大内部で始った小さい会合も,最近になってやっと一応形のととのった研究会に発展したわけである.その間,遠い所毎回御足労をお願いし,常に御指導,御鞭撻下さる高田洋先生に対し,この紙上をおかりして御礼申し上げるとともに,今後先輩の諸先生の御支援をお願い致します.

--------------------

  • 文献概要を表示

 「謎につつまれた臓器」として機能の明らかにされていなかった胸腺は,その生体における意義が近年次々と解明されると共に注目をあびるようになってきた.それは,古くから考えられていた内分泌的な機能とは異なる方向への研究の発展によるものであって,幼若動物での胸腺摘除術の開発によって胸腺のもつ特殊なリンパ組織としての機能と,免疫反応に対する胸腺の指導的な役割が明らかになったためである.

 本書は,この方面における最もすぐれた研究者の協力によって出来上がったものであり,形態と機能の面から,また基礎と臨床の面から,あますところなく胸腺の問題をとりあげている.

編集後記 岡部 治弥
  • 文献概要を表示

 本号は胃癌の発生という極めて基礎的な,かつ重要な問題がとりあげられた.本誌本来の臨床を中心とした編集方針から見る時,この主題はやや枠を外れた様に感じられる読者もあるいはおられるかもしれない.しかし胃癌の診断にとりくんでおられる同好の方々にとって早期胃癌はもはや珍らしいものではない今日,更にさかのぼって未だヴェールにつつまれた発癌の様相に思いをいたすことは,決して興味の無いことではなく,本誌の各論文は日々の診療においてより早期の,より小さな胃癌の発見へと新たな意慾を湧かせてくれるのではないかと思う.村上教授はまだまだ早期のⅡbの病変が沢山出て来ねば形態学の立場からはもはや明解な答がえられぬと嘆いておられる.一方平山博士は早期発見と共に最も第一義的な癌発生予防のために疫学の立場から日本人の食生活と胃癌の関係について示唆にとむ成績を述べておられる.森,藤村,杉村博士等によるマウス,ラッテの腺胃発癌の成功は座談会の内容から見ても,正に発癌実験史の1エポックを飾るものであり,我々専門外の者にも実に津津たる興味を覚えさせてくれる.やがては人胃発癌の解明にも大きな糸口を提供することが考えられ,今後の発展を心から祈るものである.又これら動物を材料にしてX線検査が可能となったことは,臨床面における早期小胃癌の診断学に今後大きな貢献をするであろう.提供症例も回を重ねて,なおかつ予断を許さぬ新手の登場がつづいており,これ又つきざる興味を覚える.

基本情報

05362180.3.7.jpg
胃と腸
3巻7号 (1968年6月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

文献閲覧数ランキング(
11月12日~11月18日
)