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編集後記
岡部 治弥
pp.893
発行日 1968年6月25日
Published Date 1968/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403110856
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本号は胃癌の発生という極めて基礎的な,かつ重要な問題がとりあげられた.本誌本来の臨床を中心とした編集方針から見る時,この主題はやや枠を外れた様に感じられる読者もあるいはおられるかもしれない.しかし胃癌の診断にとりくんでおられる同好の方々にとって早期胃癌はもはや珍らしいものではない今日,更にさかのぼって未だヴェールにつつまれた発癌の様相に思いをいたすことは,決して興味の無いことではなく,本誌の各論文は日々の診療においてより早期の,より小さな胃癌の発見へと新たな意慾を湧かせてくれるのではないかと思う.村上教授はまだまだ早期のⅡbの病変が沢山出て来ねば形態学の立場からはもはや明解な答がえられぬと嘆いておられる.一方平山博士は早期発見と共に最も第一義的な癌発生予防のために疫学の立場から日本人の食生活と胃癌の関係について示唆にとむ成績を述べておられる.森,藤村,杉村博士等によるマウス,ラッテの腺胃発癌の成功は座談会の内容から見ても,正に発癌実験史の1エポックを飾るものであり,我々専門外の者にも実に津津たる興味を覚えさせてくれる.やがては人胃発癌の解明にも大きな糸口を提供することが考えられ,今後の発展を心から祈るものである.又これら動物を材料にしてX線検査が可能となったことは,臨床面における早期小胃癌の診断学に今後大きな貢献をするであろう.提供症例も回を重ねて,なおかつ予断を許さぬ新手の登場がつづいており,これ又つきざる興味を覚える.
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