今月の主題 胃癌の発生
研究
ラッテ胃癌のX線写真の撮り方
栗原 稔
1
,
藤村 真示
2
,
杉村 隆
2
,
市川 平三郎
1
1国立がんセンター研究所集団検診部
2国立がんセンター研究所生化学部
pp.853-859
発行日 1968年6月25日
Published Date 1968/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403110851
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Ⅰ.はじめに
胃癌が早期に発見されるようになって,胃癌の病理学も著しく進歩した.胃癌の発生についても潰瘍や隆起性病変との関連から多くのことがわかってきた.しかし,あくまでも人体が研究対象であるための制約がつきまとう.従って実験動物にそのモデルを求めるのは,胃癌の研究にたずさわる,あらゆる分野の研究者の切望するところであるが,元来実験用動物に胃癌の発生をみることは稀であるし(アフリカ原産のマストミイスは,貴重な例外的存在である1).),また人為的に胃癌をつくることも,多数の学者達の努力にもかかわらず至難のわざであった.ところが,最近筆者らのうちの杉村,藤村は突然変異誘発物質であるN-methyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine(以下NGと略す)を,ラッテの飲料水に溶かして自然に摂取させることにより,高率に,人胃と同じく粘膜上皮が腺細胞よりなる腺胃に胃腫瘍を発生させることに成功した.この詳細は本誌(3巻809~816頁)に述べてあるが,たまたま同一実験群の数匹に剖検で幽門部を中心に腫瘍の発生をみたので,残る生存群に胃腫瘍が発生しているか否かを,X線撮影により知り得るだろうと考えた.しかしながら,ネズミの胃のレ線撮影に関する文献として適当なものが見当らないので,試行錯誤で思いつくままにいくつかの工夫を重ねた後に,生存ラッテの胃腫瘍の描出に成功したので以下その概略を述べる.
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