胃と腸 28巻8号 (1993年7月)

今月の主題 大腸癌存在診断の実態―m癌を除く

序説

大腸癌の診断とその問題点 西澤 護
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 筆者が日頃考えていたことが,やっと本号で特集として取り上げられ,これからが大腸癌解明の再出発点になるだろうと考えている.今まで,m癌とかsm癌,pm癌,あるいは大腸癌全体についての特集はあっても,今回のように「m癌を除く大腸癌」というテーマの取り上げ方は,食道,胃を含め,初めてだと思う.それほど大腸m癌と腺腫との鑑別が難しいということであろう.

 m癌なくしてsm以深の癌があるはずはないが,生検よりポリペクトミーや粘膜切除で得られた標本のほうが,病理組織の全貌がつかめ,より正確な診断がつけられるという理由から,極端なことを言えば,すべてのポリープを摘出すべきだという傾向にある.腺腫から癌になるという従来からの学説と,処置が簡単でリスクが少ないこと,それに保険点数が割合よいことなども,その傾向を助長している.

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要旨 1年以上の間隔をもって過去に注腸X線検査を受け,しかも10mm以上の病変の特定が可能であった進行大腸癌32例(男性22例,女性10例)34病変について,過去の写真で見逃された原因や問題点を解析し,以下の結果が得られた.①部位は右側結腸,特に上行結腸と盲腸の病変が多かった.②形状は,ほとんどが無茎性の隆起性病変で,特に扁平な病変(扁平型および扁平陥凹型)が22病変もあり,全体の64.7%を占めていた.③7病変(20.6%)は半月ひだの上に存在しており,この場合,半月ひだの限局的腫大として描出されていた.④1つの病変のみに注意が払われ,そのために見逃されていたもの(いわゆる“やぶにらみ”)は11病変(32.4%)であった.⑤前処置との関係では,小糞塊や糞汁のため,診断が不十分であったと思われるものは6病変(17.6%)であった.⑥回盲弁の上,または上行結腸でも回盲弁の近傍に病変があったため,腫大した回盲弁とみなされていた病変は6病変(17.6%)であった.⑦X線検査で病変を指摘(含む疑い)していたが,その後の医療側の指示や経過観察に,問題かあったと思われる病変は5病変(14.8%)であった.この検討の結果を踏まえて,病変を見逃さないための診断上の留意点と,今後の対応について述べた.

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要旨 1986~1991年の6年間に癌研附属病院において初回X線検査で見逃された大腸癌14症例についてその原因を検討した.見逃し部位は右側結腸11例,左側結腸3例であった.見逃しの原因は腸管収縮と造影不良が多く,腸の重なり,読影ミスがこれに続く.回盲部・上行結腸では前処置不良による造影不良が多かった.これは腸内に貯溜する水分のためにバリウムが希釈され,粘膜面への付着不良が生じたためである.横行結腸,左側結腸での見逃しの原因は鎮痙剤を使用しなかったことによって生じた腸管収縮が多かった.今回の見直しで9例に所見があり,注意深い読影が多くの見逃しを防ぐと考えられた.9例のうち7例に一側変形を認め,拾い上げにおける側面像の変形所見の重要性が再認識された.以上より,以下の結論を得た.①腸管の収縮を防ぐには鎮痙剤使用,被検者の不安・緊張の除去が必要である.②多方向から重なりを避ける撮影を行うと共に,腸管の伸展不良には,圧迫が可能であればこれを行うことによって病変の存在を否定することが必要である.このとき,大量の空気の存在は有効な圧迫や,腸管の重なりを避ける際の妨げとなりやすい.③腹部手術歴があり深部大腸の造影不良が予想される症例では,高濃度バリウムを使用するなど造影剤の工夫が必要である.④見直し診断で一側変形を認めたものが7例あり,そのうち存在診断の根拠となったものが5例あった.⑤病院診療の場においても,胃癌の集団検診における精度管理や逐年検診の手法を取り入れ,見逃しを最少限にする努力がなされるべきである.

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要旨 1986年以来当科で経験した大腸進行癌525例とsm癌75例を対象に注腸造影検査と大腸内視鏡検査の見逃しにつき検討した.注腸造影によるsm癌と進行癌の見逃し率は,各々6.7%,1.6%であった.見逃しの多い部位は上行結腸とS状結腸であり,造影不十分と腸管の重なりが大きな原因となっていた.上行結腸では圧迫を加えた撮影が大切である.大腸内視鏡検査の見逃しは0.6%あり,全腸管を観察していないことが原因であった.内視鏡で経過観察中発見されたsm癌4例中3例は,Ⅱa+Ⅱc型の表面型癌であり,特にS状結腸で発見の頻度が高い.注腸造影検査,大腸内視鏡検査において早期癌のみならず進行癌の見逃しも皆無ではなく,十分考慮し日常診療を行うことが大切である.

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要旨 当院の初回検査法として行われた注腸X線検査および内視鏡検査によって発見された大腸sm癌,進行癌を対象に,存在診断と見逃し例について検討した.注腸X線検査の見逃し率はsm癌で37%,進行癌で15.4%であった.見逃し例の病変の形態はsm癌ではⅡ型が多かった.進行癌の見逃し例の初回X線像はⅡa型が多く,次いで2型で,それぞれ全体の55%,27%を占めた.部位別にはsm癌では深部結腸に,進行癌では直腸と深部結腸に多かった.見逃しの原因としては読影不十分なものが大半を占めたが,sm癌のⅡ型では病変の指摘が困難なものも多かった.内視鏡検査での見逃し率は8.5%で,見逃し例はⅡa型が多く,上行結腸や直腸のひだの裏側,肝彎曲部や脾彎曲部などの屈曲部にみられた.これらの多くはポリエチレングリコール使用以前のものであった.見逃しの対策は,注腸X線検査では良好な前処置や二重造影,表面型を意識した注意深い読影が重要であり,内視鏡検査では盲点を意識した観察が重要と考えられた.

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要旨 大腸sm癌,pm癌とss(a1)癌を対象にして存在診断に関する検討を行った.sm癌,pm癌の25%は無症状であった.sm癌の約半数は免疫便潜血検査が陰性であり,陽性例の病変最大径は陰性例に比し有意に大きかった.X線検査によるsm癌の存在診断率は初回X線検査群(16例)では62.5%であったが,精密X線検査群(51例)では100%であった.一方,内視鏡検査による存在診断率は初回検査および繰り返し内視鏡検査ともに100%であった.pm癌17例とss(a1)癌55例ではそれぞれ1例ずつX線検査による存在診断不能例があり,全体の初回X線検査存在診断率は88例中80例90.9%であった.X線検査によって存在診断が不可能であった原因は,①読影時の見落とし(8例中6例),②バリウムの付着不良(4例),③右側結腸病変の見落とし(8例中6例)が主であった.以上より,大腸癌存在診断能を向上させるためには,右側結腸の丁寧な検査とX線読影能の向上,前処置の改善が必要で,また全大腸内視鏡検査を頻用することが望ましいと結論した.

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要旨 当院胃腸センターにてルーチン検査を受け切除されたm癌を除く大腸癌508例526病変の発見過程を分析し,注腸X線検査(BE)と全大腸内視鏡検査(TCF),S状結腸内視鏡検査+注腸X線検査(SCF+BE)の拾い上げ診断能を比較し,大腸ルーチン検査法のあり方を考察した.拾い上げ診断能は,BE97.4%,TCF96.7%,SCF+BE99.6%であった.いずれも早期癌(sm癌)の見逃しはなかった.BEの見逃しは,注意深い読影と撮影法の改善で容易に防げると思われた.また,CFの見逃しは,直腸(Rb)と多発病変に注意し,全大腸を観察すれば容易に防げると思われた.結論的には,各検査法の拾い上げ診断能に優劣はつけ難く,大腸ルーチン検査法の第一選択は,各施設または各自が得意な検査法を選べばよいと思われた.

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要旨 全大腸内視鏡検査当日の朝採取した便に対して逆受け身赤血球凝集法(以下RPHA)による便潜血テストが実施された深達度sm以深の単発大腸癌103症例に対して,免疫学的便潜血テスト陰性大腸癌の特徴を明らかにするために,病巣の存在部位,大きさ(最大径),深達度,肉眼形態などについてRPHA陽性率(感度)の検討を行った.最も強い関連性を示したのは病巣の大きさであり,特に最大径10mm以下の5病巣ではRPHA感度0,11mm以上20mm以下の16病巣では38%であったのに対し,21mm以上30mm以下の20病巣では75%と,統計学的に20mmを境にして有意差が認められた.すなわち大腸癌診断法としての免疫学的便潜血テストは,20mmを越える大腸癌には有用であるが,20mm以下の病巣ではたとえ進行癌であっても過半数が偽陰性となる可能性が高いことが示唆された.

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要旨 われわれが施行してきた地域住民を対象にした大腸がん集検の成績をもとに,1次検診として用いられた免疫2日法の偽陰性例の特徴と偽陰性率を推計した.①偽陰性例は逐年検診により最も多く拾い上げられ(85.7%),そのうち3/4は早期癌が占めていた.問診票ではいずれも早期癌,報告例は全例進行癌だった.②偽陰性例はより早期の最大径30mm以下のものが多く,部位では直腸癌,上行結腸・盲腸癌が多かった.③偽陰性率は全体で41.2%と推計された.偽陰性例から救命可能な早期癌,Dukes Aの癌を除いて計算すると,14.1%,8.4%となり,社会的にも十分受け入れられる頻度と思われた.

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要旨 大腸癌検診で精密検査として,内視鏡検査とX線検査がある.X線検査の前処置を代えて,今回はbisacodyl,多量の等張性クエン酸マグネシウム(25ml/kg),cisaprideを併用した.この前処置により残渣量は減少し,バリウムの付着も良く,全大腸で網の目像を高率に描出することができた.この前処置で217例に注腸造影を行い,陥凹を有した微小表面型病変4病変中3病変を描出できた.この前処置は患者の反応もよく,精密検査の前処置として有効である.

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 多田(司会) 大腸癌検診がスタートして,これからは専門医のみならず,様々な立場の人が大腸の検査を担当しないといけなくなる時代がもうそこまで来ています.しかし,大腸の検査はけっして容易な検査ではありません.そこで,大腸癌の存在診断がどの程度の精度で行われているか,裏返せばどのぐらい誤診や見逃しがあるのかということを明らかにして,それに対する対策を考えてみることは有意義だと思います.今日お集まりいただいた先生がたはこの道のエキスパートですので,そのデータが必ずしも日本全体の一般的なデータを反映しているかどうかはわかりませんが,忌憚のないご意見をお伺いして,現在の大腸の診断の実態を明らかにしてみたいと思います.

 この座談会でm癌を除外しますのは,現在,小さな癌に対する病理診断基準がいろいろと揺れ動いており,癌のcriteriaがはっきりしませんので,m癌を問題にするとデータが多少不均一になる恐れがあります.そこで,誰もがはっきり癌だと共通に認識できるsm癌以上を取り扱うわけです.

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 〔患者〕41歳,女性.主訴:吐血.受診1週間前から胸やけ・悪心を認めていたが,2日前に突然吐血し,意識を消失した.意識は直ちに回復し自宅で安静にしていたが,下血に気付き心配となって受診した.

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 〔患者〕50歳,女性.入院1年前より軟便が続いていた.1991年7月6日注腸X線検査を受け,異常所見を指摘され,7月23日入院した.40歳ごろより軽度の貧血を指摘されていたが,既往歴に特記すべきことはない.体温36.3℃,腹部触診上,異常所見を認めなかった.検査成績では赤血球390×104/ml,血色素量9.9g/dlと軽度の貧血を認め,血沈は1時間値50mmと亢進していた.CRPは4.4mg/dl(0.7mg/dl>)と高値を示した.総蛋白6.7g/dl,アルブミン3.6g/dl,GOT9mU/ml,GPT6mU/ml,コリンエステラーゼ2,700mU/ml,総コレステロール225mg/dlであった.便培養では結核菌陰性であった.ツベルクリン反応は13×13/23×23mm(硬結あり)で陽性.胸部X線像上,異常所見を認めなかった.

用語の使い方・使われ方

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 鋸歯像は通常,大腸,小腸の炎症性疾患の急性期にみられるX線所見で,腸管の辺縁が鋸歯状に不整像を呈する場合に用いられる.粘膜下層の浮腫と痙攣性収縮を反映した所見と解釈され,短期間の経過観察によって消失する.

 大腸では薬剤性大腸炎,虚血性大腸炎,感染性大腸炎,憩室炎,大腸放線菌症などで,小腸ではアニサキス症,虚血性小腸炎などでしばしば認められる.また潰瘍性大腸炎,Crohn病,腸結核など慢性の炎症性腸疾患でも,多発する小潰瘍が側面像として捉えられ鋸歯状の辺縁不整像を呈する場合には,この用語が使われる.更に,大腸癌など悪性腫瘍による粘膜破壊像が辺縁の微細な突出像として描出される場合にも鋸歯像と呼ぶことがある.

周縁壁(Rand wall) 西俣 寛人
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 輪郭の不整な潰瘍を取り囲むように不整な隆起が存在することを言う.上皮性腫瘍で病理組織上sm以深に腫瘍塊が存在し,中心部に癌性潰瘍を形成したときに見られ,特にBorrmann2型,Borrmann3型の癌に見られる所見である.例外的には,粘膜下腫瘍に深い潰瘍を伴ったときにRand wallを形成することもある.

 良性潰瘍の周囲に見られる隆起は“ulcer mound”と表現され,軟らかく,Rand wallとは区別される.

早期胃癌研究会

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 早期胃癌研究会30周年記念大会は2月13日,ホテルニューオータニにて1,250名を集め,第Ⅰ部に引き続き第Ⅱ部が「そこが知りたい―診断のポイント―」と題して行われた.司会は八尾(福大筑紫病院)が担当し,全国8地区の研究会から選ばれた6症例を120分間で検討した.

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欧文目次

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Increased risk of left sided colon cancer in patients with diverticular disease: Stefansson T, et al (Gut 34: 499-502, 1993)

 大腸癌と大腸憩室症は,疫学的に同様の特性があることから,共通の原因を持つことが指摘されている.憩室症患者では大腸癌のリスクが増す,という仮説が,スウェーデンのコホート研究で提示された.

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Plasminogen activators in normal tissue and carcinomas of the human esophagus and stomach: Sier CFM, et al (Gut 34: 80-85, 1993)

 プラスミノーゲンアクティベーター(PA)はプラスミノーゲンをプラスミンに変換する蛋白分解酵素で,組織型(t-PA)とウロキナーゼ型(u-PA)に分類される.前者は血栓溶解に,後者は主に組織の再構築や腫瘍の浸潤に際し細胞外基質の分解に作用すると考えられている.近年,癌の発生・進展とPAの動向との関連性が注目されており,乳腺,肺,前立腺,胃,食道,結腸起源の種々の腫瘍でu-PAが組織中に高濃度に含まれることが研究報告されている.そこで著者らは,上部消化管由来の癌腫中のt-PA,u-PA含量(抗原量および活性)を生検組織を用いELISA法にて測定し,非病変部との対比と,更に癌腫の分化度・進行度(TNM分類),背景粘膜との関連性につき検討した.

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Reducing mortality from colorectal cancer by screening for fecal occult blood: Mandel JS, et al (N Engl J Med 328: 1365-1371, 1993)

 1972年から1977年の期間に登録された46,551人の50~80歳の男女を対象に,毎年に便潜血反応を検査する群,2年ごとにする群,対照群の3群に無作為に分けて,便潜血反応検査が大腸癌死の減少に有益かを調査した.潜血反応はグアヤック法を利用したHemocultスライドを利用して,連続3回の便を採取して検査し,1982年以降の検査ではスライドは加湿した後に,検査した.6枚のスライドの中で1回でも便潜血陽性の者には大腸内視鏡を含めた診断および必要な治療を行った.

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Seasonal variation in exacerbations of ulcerative colitis: Tysk C, Järnerot G (Scand J Gastroenterol 28: 95-96, 1993)

 潰瘍性大腸炎の再燃の因子として,精神的ストレス,上気道感染,胃腸炎,薬剤服用などが示唆されてきたが,否定的な報告もある.季節の関連について9月から2月にかけて高い再燃率が示されたり,8月から1月にかけて再燃や発症が多いことが報告されている.また,別の報告では,春秋に再燃率が高いという.

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 わが畏友(と呼ぶことを許していただければ)武藤徹一郎教授が再び「大腸ポリープ・ポリポーシス」と題して立派なmonographを出版された.著者は14年前「大腸ポリープ―その病理と臨床」を出版されているが,今回はその改訂版でなくして,全く内容を一新された新版である.医学研究者にとって,臨床にせよ基礎にせよ,monographを出版するというのはなかなかできないことであるが,著者は,これが3冊目のmonographである.これは通常の能力の者ができることではなくて,最も優秀な人のみがなしえる業績である.

 しかし,もとより著者の才能のみがこの立派な業績を成らしめたのではない.著者が序に何気なく記しているように,週末に書きためた努力がこの第3冊目のmonographとなったのである.毎週末書くということは言うにやさしく,実行するに誠に困難な仕業である.このたゆまざる努力にも心から賞賛の言葉を送りたい.

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 生物学,医学,農学,工学など幅広い分野で,遺伝子レベルの実験と細胞生物学の実験とを組み合わせた「細胞工学」の技術が用いられ,研究室でも,検査室でも,毎日の実験になくてはならないものとなっている.新人が私の研究室に入室すると,先輩格の若い研究者と組んでマンツーマンでこうした実験技術を習う.しかし,この分野の実験も日本の生物系の研究室に普及した現在,学部の学生の間に勉強して,卒業と共にそれを生かして仕事をしなければならない時代になった.マンツーマンの寺小屋式の教育では間に合わなくなったのである.著者は,この分野の実験を最先端の難しい技術として研究者たちが手探りで行っていたころから,学生の教育に細胞工学を取り入れて実践してきた.本書は彼の長い教育と研究の経験を土台にして生まれた結晶というべきものである.

 遺伝子操作法(組み換えDNA実験法)の入門書や分厚い専門書はこれまでもたくさん出版されている.細胞(組織)培養技術についても多数の本がある.本書は,その両方を合わせて用いる「細胞工学」について,実際に研究室で使われている基本的な実験方法のマニュアルとしてまとめられており,ユニークな学生実験(実習)のテキストに仕上がっている.細胞の培養液の作り方から最先端のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)まで,記述は具体的で,実際の実験操作にそって書かれている.それでいて詳しく煩雑なものとなってはおらず,基本的な部分を押さえたバランスの良さが光っている.そのうえ,実験方法の羅列にとどまらず,例えば細胞培養法でも「白血球の培養」や「癌細胞の培養」といったぐあいに,よく行われる実験が例として示され,興味をそそる内容となっている.生物系のいろいろな学部で使う新しい実験書として最適な,すばらしい教科書である.

編集後記 小平 進
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 わが国でも大腸癌の集団検診が徐々に組織化され,便潜血反応,家族歴,既往歴などでスクリーニングされたものが,次々と注腸X線検査,大腸内視鏡検査に廻り,近い将来,その数は膨大なものとなるであろう.そのような時期に,現在,これらの検査による大腸癌(sm以深の癌)の存在診断が,どの程度の正確さをもって行われているのかを顧みることは極めて重要であり,今後の検査体系を考えるうえにも多いに有用である.

 本号では潜血反応を含め,X線,内視鏡関係の専門家に,“反省のないところに進歩はない”ということで,見逃し例を包み隠さず出していただいた.それぞれの見逃し例にはそれなりの理由があるが,ここに出てくる見逃し例を1つ1つ熟読していただければ,誤診を防ぐコツは自ずから明らかになるのではないかと思われる.

基本情報

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胃と腸
28巻8号 (1993年7月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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