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生物学,医学,農学,工学など幅広い分野で,遺伝子レベルの実験と細胞生物学の実験とを組み合わせた「細胞工学」の技術が用いられ,研究室でも,検査室でも,毎日の実験になくてはならないものとなっている.新人が私の研究室に入室すると,先輩格の若い研究者と組んでマンツーマンでこうした実験技術を習う.しかし,この分野の実験も日本の生物系の研究室に普及した現在,学部の学生の間に勉強して,卒業と共にそれを生かして仕事をしなければならない時代になった.マンツーマンの寺小屋式の教育では間に合わなくなったのである.著者は,この分野の実験を最先端の難しい技術として研究者たちが手探りで行っていたころから,学生の教育に細胞工学を取り入れて実践してきた.本書は彼の長い教育と研究の経験を土台にして生まれた結晶というべきものである.
遺伝子操作法(組み換えDNA実験法)の入門書や分厚い専門書はこれまでもたくさん出版されている.細胞(組織)培養技術についても多数の本がある.本書は,その両方を合わせて用いる「細胞工学」について,実際に研究室で使われている基本的な実験方法のマニュアルとしてまとめられており,ユニークな学生実験(実習)のテキストに仕上がっている.細胞の培養液の作り方から最先端のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)まで,記述は具体的で,実際の実験操作にそって書かれている.それでいて詳しく煩雑なものとなってはおらず,基本的な部分を押さえたバランスの良さが光っている.そのうえ,実験方法の羅列にとどまらず,例えば細胞培養法でも「白血球の培養」や「癌細胞の培養」といったぐあいに,よく行われる実験が例として示され,興味をそそる内容となっている.生物系のいろいろな学部で使う新しい実験書として最適な,すばらしい教科書である.
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