胃と腸 28巻11号 (1993年10月)

今月の主題 大腸癌の深達度診断

序説

大腸癌の深達度診断 丸山 雅一
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 この主題は,これまで本誌で繰り返し取り上げられてきた.それだけに重要で,客観的な基準を作り難いものと言うことが可能であろう.どういう手法で深達度を論じるか.これも問題となる.なぜならば,深達度診断とは,浸潤パターンの診断と全く同義であり,更に,浸潤パターンの分析は,癌の形態発生という魅惑的な迷路に迷い込みやすい.迷い込んだ後,機首をどう立て直すか,この一点に深達度診断の真髄を読み取れるかどうか.本号の興味はその辺りにある.また,各執筆者の個性が明らかになるところでもある.

 平坦・陥凹型(表面型)が頻繁に発見されるようになり,癌の肉眼形態スペクトラムは確かに変化した.しかし,これらの流行型を前面に押し出して,浸潤パターンを論じることは,事の本質から遠ざかることを意味するのではないか.大腸癌の肉眼形態を制御している遺伝子型に年代的な変異が証明されているのであればともかく,そうでなければ,なるべく長い時間帯にわたる肉眼形態の空間を想定し,壮大な構想のもとに,深達度の分析から浸潤パターンの類型化,更には形態発生の解明へと歩を進めてもらいたいものだ.

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要旨 注腸二重造影像での病変の側面像から深達度診断を行うための必要条件として,①病変の側面像が得られていること,②よく伸展された二重造影像による判定があること,③変形には恒常性がみられること,④病変の存在する解剖学的な“場”を考えること,が挙げられる.しかし,大腸の解剖学的な走行からみて,常に病変の側面像が得られるとは限らない.むしろ斜位像となる場合が多い.そこで,深達度診断では常に病変の存在する“場”と,像を形成する線の解析が必要である.一方,正面像からみた深達度診断も要求される.それには病変の中心陥凹の有無,形や起始部の形態,表面の形状,ひだの集中の有無を考慮することが大切である.そこで今回,病変の側面像と斜位像における変形の線の解析,病変の正面像からみた深達度診断の知見および読影上の留意点について述べた.

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要旨 40mm以下の大腸癌382病変と平坦・陥凹型大腸腺腫49病変を対象とし,癌は大きさの増大と共に深達度を増すとの仮定のもとに検討した.腺腫成分の有無を考慮し,肉眼形態別〔Pp型:有茎性隆起,Ps型:無茎性隆起,PD型:周辺隆起を有する陥凹型と中心陥凹を有する隆起型,FD型:周辺隆起を有しない平坦・陥凹型〕にみると大きさと深達度は強い関係を示した.ただし,PD型は大きさの増大と共に急激な浸潤を示すが,同様の形態を呈する微小病変はほぼ全例が腺腫の診断であり,m癌から進行癌への進展がうまく説明できなかった.いずれにしても,肉眼形態別に分け,腺腫成分の有無を考慮すれば,大きさは深達度診断の大きな指標になりうる.更に,Ps型では表面性状,PD型では空気量の変化に伴う周辺隆起の形態変化を加味すれば深達度診断の正診率はより高まると思われた.

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要旨 大腸腫瘍の深達度を内視鏡的に診断することが可能かどうか検討した.大腸腫瘍を形態的に有茎性,広基性(6mm以上),表面型,結節集簇型,潰瘍型(20mm以下)の5型に分け,その各々について腺腫,m癌,sm癌の現時点からさかのぼって30個ずつを対象症例とした.結節集簇型にはsm癌はなく,20mm以下の潰瘍型癌18個中4個がsm-massive,他は進行癌であった.したがってこの2者については細かい検討をせず,前3者につき内視鏡的切除が完治とみなしうるsm-s(scanty)癌,sm-m(massive)癌の鑑別の可否を中心に検討した.有茎性ポリープでは頭部の形態(球形,陥凹,平坦~消失)が重要で,陥凹~消失はsm-m癌であった.広基性では大きなものほど深達度が深くなる傾向があった.腺腫,m癌,sm-s癌は10mm以下のものが,進行癌では21mm以上のものが大部分を占めるのに,sm-m癌はあらゆるサイズにわたって認められた.サイズで診断することはできなかった.広基性腫瘍では顆粒状で易出血性ないし癌性びらんの存在がsm-m以上の癌を診断するのに重要であった.sm-m癌に表面平滑なもの,癌性びらんを欠くものが多かったのが注目された.表面型でもサイズは診断上さほど重要ではなく,内視鏡的硬さ,癌性びらんの存在が,sm-m以上の癌を診断する際重要であった

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要旨 過去5年間に当科で経験した大腸癌207例を対象に注腸X線検査,大腸内視鏡検査,超音波内視鏡検査による術前深達度診断能の比較検討を行った.症例全体における深達度正診率は注腸X線検査で74.4%,大腸内視鏡検査で76.3%,超音波内視鏡検査で74.9%であり,各検査法の間には差がみられなかった.a/ss~s癌の診断についてはむしろ注腸X線検査や大腸内視鏡検査で有意に高い正診率が得られた.しかし,超音波内視鏡検査の正診率はsm癌,pm癌において他法より高率であり,sm癌においては大腸内視鏡検査,pm癌においては注腸X線検査に比べて有意差が認められた.また,超音波内視鏡検査ではより詳細な深達度診断も可能であり,比較的小さい病変を対象とする場合に超音波内視鏡検査が最も優れた手法であると評価された.

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要旨 1981年6月から1992年12月までにEUS,CT,MRIによる術前進行度診断が施行された直腸癌316症例を対象に,各診断法による壁深達度診断能について検討した.EUSは詳細な深達度診断に優れ,m癌72.2%(後期76.5%),sm癌66.7%(後期85.7%),pm癌70.0%(後期85.7%),ss(a1)~s(a2)癌93.5%の正診率を示した.CTの正診率はⅠ群(m~pm)60.0%,Ⅱ群〔ss(a1)~s(a2)〕64.7%,Ⅲ群〔si(ai)〕93.8%であり,MRIはⅠ群65.2%,Ⅱ群94.4%,Ⅲ群88.2%を示した.他臓器浸潤の診断ではMRIが最も優れ,positive predict valueは78.9%と高値であった.各診断法にはそれぞれ長所,短所が存在し,これらの総合所見により直腸癌の治療方針を決定すべきである.

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要旨 外科的に切除された大腸癌1,592病変から大腸癌全般についての概説的事項を検討し,そのうち最大径3cm未満の大腸癌144病変の肉眼所見と組織学的所見を,深達度診断の視点から検討した.検討例には従来の肉眼的分類が困難な例があり,また肉眼型が深達度を反映しないことがあったが,隆起の性状,陥凹の深さ,周囲粘膜の所見を検討すれば,深達度診断はある程度可能であった.隆起は表面が無構造なものほどより深部に浸潤し,陥凹は深部浸潤の存在を示し,特に絶対的陥凹はpm癌から出現し,また浸潤の程度により周囲粘膜の盛り上がりや固定されたひだの出現をみた.

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要旨 患者は59歳,男性,主訴は血便,下腹部鈍痛である.X線所見では,左横行結腸に輪郭がやや不整な小さい円盤状の隆起性病変が認められ,中心に淡いバリウム斑がわずかに残存し,病変の側面像で弧状変形が認められた.内視鏡所見では,表面粘膜が粗黒糙で発赤し,中心にわずかな陥凹を伴った扁平隆起性病変が認められた.切除標本の肉眼所見では,大きさ7mm,円形の扁平病変で表面は赤色調のⅡa+Ⅱc様病変であった.病理組織像では,粘膜下層の線維増生と固有筋層の肥厚が認められ,癌は粘膜筋板を越えて粘膜下層に浸潤し,更に粘膜下層から固有筋層にかけて散在性に浸潤していた.組織型は高分化腺癌でly1,v0,n0であった.

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要旨 患者は57歳,女性.横行結腸進行癌の手術から約2年後,経過観察のための注腸X線検査で,S状結腸に大きさ8mmのⅡa+Ⅱc様の形態を呈する大腸癌を発見し,S状結腸切除術を行った.術前の注腸X線側面像では丈の低い台形状変形を呈し,組織学的には,pmに浸潤した腺腫成分を含まない高分化型腺癌であった.また,この病変は2年前の注腸X線像では,弧状の側面変形を伴う無茎性の隆起として描出されていた.今後,無茎性病変,特に中心陥凹を伴うものは,10mm前後でも進行癌の可能性を考慮に入れる必要があると考えられた.また,X線像では,側面変形の形態だけでなく,変形の程度まで考慮することにより,正確な深達度診断への可能性が示唆された.一方,内視鏡像では,空気量の増減でみられる空気変形の所見が深達度診断上重要と思われた.

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要旨 患者は70歳,女性.主訴は排便・排ガス後の出血.1988年末から肛門出血を自覚したが放置していた.1989年3月近医を受診し,肛門部隆起性病変を指摘され当科紹介となった.anal vergeから1.5cm,9°方向に径10mmの,中心に陥凹を有するやや硬い隆起性病変(Ⅱa+Ⅱc)を認め,生検の結果,中分化腺癌であった.超音波内視鏡(EUS)では,肛門管右壁に径約10mmの腫瘤像を認め,pm層への浸潤が疑われた.腫瘍径と年齢を考慮し,肛門機能を温存すべく局所切除を施行したところ,病理組織所見で筋層に達する大きさ10×10mmのpapillotubular adenocarcinomaで,深達度a1,ly(+),v(-)であった.ly(+)であったため根治術の適応と判断し,腹会陰式直腸切断術を追加施行した.腫瘍径の小さい肛門管癌の治療方針決定にEUSは必須の検査法と考えられた.

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要旨 患者は65歳,女性.主訴は腹痛.入院中の注腸および内視鏡検査によって,小さなS状結腸癌が発見された.注腸X線検査では中心部にバリウム斑を伴う類円形の陰影欠損を,内視鏡検査では浅い陥凹を伴う扁平隆起を認めた.超音波内視鏡では壁深達度PM′と診断した.病理学的には,10×8mmのⅡa+Ⅱc様病変(癌のみでは径5mm)で,深達度pmの高分化腺癌であった.腺腫の共存はなかった.脈管侵襲,リンパ節転移は認められなかった.免疫組織学的には,CEAおよびCA 19-9は腫瘍全体に陽性反応を示し,CA 15-3は主に腫瘍浸潤部(先進部)で陽性反応を示した.

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要旨 患者は38歳,男性.1991年6月,人間ドックにて便潜血反応陽性を指摘された.8月27日,大腸内視鏡でAVから40cmにⅡa様病変を認めたが,生検は高度異型腺腫であったため,10月15日,strip biopsyを施行(大きさ8×7×5mm).その結果,well differentiated adenocarcinoma,core invasion(+),surgical margin(+)であったので11月25日,S状結腸切除術を施行.組織学的には腸管壁に癌遺残を認め,特に脈管侵襲のため,ssの深達度であり,1群リンパ節にも転移を認めた.1年2か月後,肝,腹膜再発を来した.以上,本症例は腫瘍径8mmにもかかわらず,深達度ss,リンパ節転移陽性であったまれなS状結腸癌の1例であった.

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要旨 患者は69歳,女性.血便を主訴とし来院.直腸指診で歯状線から5cmに示指頭大の芯のある可動性のやや乏しい隆起性病変を触知.注腸では直腸下部の長径1.5cmのⅠs型の病変で,側面像で弧状変形および腫瘍への粘膜ひだの集中像を認め,深達度SM′と診断.大腸内視鏡でも粘膜ひだの集中を認めるのが特徴的だった.超音波内視鏡では第4層の肥厚および毛羽立ちを認め,深達度PM1′と診断.切除標本では9×9mmの中央がやや陥凹したIs型様の病変で,肉眼的に辺縁は健常粘膜をかぶり粘膜下層に深く浸潤し,PM癌と診断.組織学的にはpmの浅層まで癌が浸潤した中分化腺癌で,n1(+),ly2,v1であった.術前の深達度診断に際して,注腸の側面像だけでなく,粘膜ひだの集中像もpm癌を疑う重要な所見であると考えられた.

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要旨 患者は58歳の男性.最大径10mmのⅡa+Ⅱc様の大腸癌を認め,ポリペクトミーを施行したが断端陽性にて追加切除を行った.深達度漿膜下層(以下ss)の高分化型腺癌でn0,ly0,v1であった.切除標本組織上,腺腫の合併を認めない.S0P0H0N0,stage Ⅰ,Dukes A.絶対的治癒切除であった.UFT300mg/日を内服し,外来通院中であるが,術後2年6か月経過した現在再発はない.10mm以下の進行大腸癌はまれで,しかもss以下に達している症例は自験例が本邦で6例目であるので若干の文献的考察を加え,報告した.

今月の症例

1.Ⅱc型早期大腸癌 中野 浩 , 伊藤 久史
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〔患者〕 82歳,男性.2年前にS状結腸のポリープを内視鏡的に切除されている.今回は,その後の経過観察で自主的に大腸内視鏡検査を受け病変を発見された.身体所見,一般検査所見上,異常を認めなかった.

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〔患者〕 62歳,女性.主訴:心窩部痛.現病歴:1990年2月ごろから空腹時に心窩部痛が出現していたが,放置していた.同年10月近医にて上部消化管造影,内視鏡検査を施行し,胃の異常を指摘され精査,加療目的に当院受診となった.

用語の使い方・使われ方

鳥の嘴像(bird's beak sign) 小平 進
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 S状結腸軸捻症は,S状結腸が腸間膜の長軸を中心として腸間膜根部で捻転したもので,360°以上捻転すると,S状結腸内腔は口側,肛門側共に閉塞し,馬蹄型に拡張する(Fig.1).腹部単純X線像では,腹部左側を占居する馬蹄型に拡張した腸管ガス像が特徴的であり,立位像では輸入・輸出両脚にそれぞれ鏡面像をみることもある(Fig.2).

 注腸造影検査を行うと,注入したバリウムにより直腸は拡張するが,捻転を起こしている部より口側へはバリウムは進まない.内腔はこの盲腸部に向かって徐々に細くなっていき,特有の形を呈する.その形があたかも鳥の嘴のように見えるため,bird's beak sign(鳥の嘴像)と言われる(Fig.3).別名,cork screw twist signとも言う.直腸膨大部は拡張しており,この部が鳥の体のように見え,先細りの先端が嘴状に見える.これを内視鏡で見ると,粘膜面は渦巻き様に捻れながら狭くなっていき,閉塞部(捻転部)に達するのがわかる(Fig.4).

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 apple-core sign(アップルコアサイン)は大腸の進行癌のX線的特徴としてあまりにも有名である.このような変化は,Borrmann2型の進行大腸癌に見られるとされている.

 このサインは,注腸造影で認められる異常のうち,両側性狭窄像の1つに分類される.具体的には,全周性の狭窄が存在し,その狭窄部の粘膜像は,上皮性変化を反映して辺縁の不整・けばだちなどを認める(Fig.1).大腸が管腔臓器であり撮影方向による変化,体位変換によるバリウムの流出などで,狭窄部の中のクレーターがはっきり描出されないことも多い.もう1つの特徴は,健常粘膜との境界が明瞭で,立ち上がりがゴツゴツとして急峻なことであり,spasmや炎症性疾患による狭窄との鑑別に重要である.また,急峻な立ち上がりを示す部分が一方向のみの場合には,umbrella sign(アンブレラサイン)と称される.

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 「胃と腸」に発表された症例報告の中で,特に胃疾患―早期胃癌―症例の現病歴の記載を見ると,“○年○月中旬より全身に倦怠感を自覚するようになり,某医を受診し,貧血を指摘されると共に,胃X線検査で幽門部の隆起性病変を指摘され,×年×月×日,本院入院となる”,あるいは“○歳より十二指腸潰瘍の診断で,近医から内服治療と毎年の内視鏡検査を受けていた.×年×月,胃体部病変を指摘され,生検で癌と診断されて,当科に紹介入院となった”のごときものが典型的である.

 この2つの現病歴では,病変を初めに発見・診断した某医,近医の紹介で入院,手術が行われている.このように,診療所あるいは医院から患者を紹介された場合の病院側の態度として,実地医家として活躍されている神保勝一先生は,「病診連携のしかた」の中で,“症例報告として用いる場合に,単に「近医にて受診,当科へ転医」では失礼と思うがどうだろう”と疑問を述べている.

早期胃癌研究会

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 1993年6月の早期胃癌研究会は6月23日,松川(昭和大学豊洲病院消化器科),丸山(癌研内科)の司会で開催された.

〔第1例〕 36歳,男性.横行結腸の結節集簇様病変(症例提供:名古屋記念病院内科 久保田博也).

1993年7月の例会から 吉田 操 , 望月 福治
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 1993年7月の早期胃癌研究会は,7月21日,吉田操(都立駒込病院外科),望月福治(仙台市医療センター,仙台オープン病院消化器内科)の司会で開催された.

〔第1例〕 48歳,男性.Ⅱc型早期胃癌(症例提供:豊橋市民病院内科 大橋信治).

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欧文目次

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 Cigarette smoking, alcohol, and the risk of colorectal adenomas: Sandler RS, Lyles CM,McAuliffe C, et al(Gastroenterology 104: 1445-1451, 1993)

 大腸癌は地理的に頻度の差があり,このことは大腸癌の原因が環境因子にあるとする考え方を支持している.

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 「引用」の範囲を超えて他人の著作物を,自身の著作物へ取り込む場合(“転載”)には相手方(著作権者・出版社)の許諾が要ります.(許諾の条件として著作権使用料を請求される場合もあります)但し,「引用」の条件を満たして利用する場合は自由に利用できます.

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 Influence of radiologically and cytologically assessed distant metastases on the survival of patients with esophageal and gastroesophageal junction carcinoma: van Overhagen H, et al(Cancer 72: 25-31,1993)

 食道癌と食道胃接合部癌で遠隔転移を伴っていると,切除後,生存率は低下するとの報告がある.今回,遠隔転移の有無および外科適応の有無と生存率について検討した.

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 MRI(磁気共鳴画像)が臨床に登場して10年近くの歳月がたつ.本法は神経系をはじめとし全身の大部分の臓器で有用性が高く,Mr Imagingの名に恥じない.本書の扱っている骨盤諸臓器も有望なものが多く,既に婦人科疾患のみを扱った単行本も出版されている.近年surface coi1(endorectalを含む),Gd造影剤,高速撮像の導入と臨床経験の蓄積により更にその価値を増している.

 本書はMRの技術的側面,骨盤解剖の総論に始まり,子宮,卵巣,前立腺,膀胱・女性尿道,男性外性器,直腸の各論へ進み,血流イメージングでしめくくられている.MR技術の解説は簡潔でレベルも高く,内容も豊富であり,解剖もわかりやすい.各論では各章ごとに,その臓器のMRIの意義のshort summaryに始まり,検査手技をはさんでMR診断に必要な解剖(一部生理的事項を含む),正常MR像が再度より細かく記載される.その後,疾患のMR像が示され,読影のポイント,画像診断におけるMRの役割を示すほぼオーソドックスな構成をとる.

編集後記 小池 盛雄
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 新鮮切除材料の肉眼観察により消化管癌の深達度診断に常に携わっている病理医にとっては,臨床的に深達度診断が困難な症例が少なくないことは想像に難くない.手で触れて固さや動きを併せて判断しても,ときに深達度の判断を誤ることがあるからである.大腸癌の大多数は進行癌であり,肉眼的診断学が比較的おろそかにされてきたこともある.その一方では表面型の腫瘍が多数発見され,その組織学的診断基準や肉眼所見との対比,深達度診断など新たな問題が提起されてきている.このようなときに大腸癌の深達度診断について,従来の考え方の確認や見直しを含めて本企画を編んだ.著者はすべて従来より深くこの領域に携わってきた人たちであり,その実力を発揮し,われわれの知識を豊かにしてくれているのを見て,心強く感じている.新しい画像診断の技法の導入が,本来の基本的検索方法をおろそかにせねばよいが,と常々危惧している身には何とも頼もしい限りである.このような個々の方法論での結果を総合すると共に相互に批判しあい,得べくんば後に続く若き消化器病医が更に発展させ,小病巣の集積とその分析から新たな理論展開をしてほしいものである.そのことが,大腸癌の形態発生をも解明する最大の手段となるであろうから.

基本情報

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胃と腸
28巻11号 (1993年10月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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