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編集後記
小池 盛雄
pp.1246
発行日 1993年10月25日
Published Date 1993/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403106300
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新鮮切除材料の肉眼観察により消化管癌の深達度診断に常に携わっている病理医にとっては,臨床的に深達度診断が困難な症例が少なくないことは想像に難くない.手で触れて固さや動きを併せて判断しても,ときに深達度の判断を誤ることがあるからである.大腸癌の大多数は進行癌であり,肉眼的診断学が比較的おろそかにされてきたこともある.その一方では表面型の腫瘍が多数発見され,その組織学的診断基準や肉眼所見との対比,深達度診断など新たな問題が提起されてきている.このようなときに大腸癌の深達度診断について,従来の考え方の確認や見直しを含めて本企画を編んだ.著者はすべて従来より深くこの領域に携わってきた人たちであり,その実力を発揮し,われわれの知識を豊かにしてくれているのを見て,心強く感じている.新しい画像診断の技法の導入が,本来の基本的検索方法をおろそかにせねばよいが,と常々危惧している身には何とも頼もしい限りである.このような個々の方法論での結果を総合すると共に相互に批判しあい,得べくんば後に続く若き消化器病医が更に発展させ,小病巣の集積とその分析から新たな理論展開をしてほしいものである.そのことが,大腸癌の形態発生をも解明する最大の手段となるであろうから.
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