胃と腸 21巻1号 (1986年1月)

今月の主題 消化管の“比較診断学”を求めて(1)

序説

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「胃と腸」の20年を振り返って

 「胃と腸」は本邦における消化器診断,特に消化管の形態学的診断の進歩と発展に,多大な貢献をした.振り返ってみると,創刊号より10年間は主に,胃疾患を中心とした特集号が組まれ,次の10年間は,胃より学んだ同じ方法論で,大腸疾患,小腸疾患に焦点が当てられている.ところで,「胃と腸」が最初より消化管全体に視点を置いて来たことは明らかである.それは本誌の創刊の辞(1巻1号,1966年)で,早期胃癌研究会を代表して村上忠重先生が,

 「本誌の第1歩はしばらく編集の中核を早期胃癌に置き,これを順次良性病変にも推し進め,更には取り扱う範囲を消化管全体に及ぼしたいと考える.(中略)そして今私が考えていることは「胃と腸」とした表題が何時「胃と腸」になるかという点である.」

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要旨 うまく二重造影すると,潰瘍性病変を変形でとらえるので,変形学が登場した.全体の変形は,胃,大腸など,それぞれに,また,局所の変形は全腸管に普遍的に使うことを,まず,述べた.そして,変形を使って検査,読影,診断するコツを全腸で比較した.更に,比較診断学の展開を虚血症候群について,X線所見の分析と総合の手法で行い,比較診断学の効果を述べた.二重造影法も,機能と二重造影のアベックの動きがある.

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要旨 二重造影像にて病変の側面像が撮られ,しかも大きさが3cm以下の,食道癌23例,“隆起性”胃癌21例,腸癌48例について,深達度診断をX線学的に行い,以下の結果を得た.①癌の深達度が深くなるにつれて,側面像における消化管の辺縁の変形とその程度は強くなっていた.Ⅱ消化管の変形には共通性がみられ,1側変形の型は,無変形,角状変形,弧状変形,台形状変形に分類することが最も妥当であると考えられた.③台形状変形を示す例では,癌巣は固有筋層またはそれ以下に中程度量以上浸潤しており,明らかな進行癌の所見とみなしうる.④弧状変形を示す揚合は,癌巣は粘膜下組織にmassiveに浸潤しているか,固有筋層にも少量浸潤している所見とみなしうる.⑤角状変形を示す例では,粘膜下組織層に中程度量浸潤していると考えられる.⑥無変形(病変自体による辺縁不整と直線化,硬化所見を伴うも,明らかな変形とはみなしえない程度のもの)では,癌巣は粘膜固有層内にとどまっているか,または極く少量が粘膜下組織層に浸潤しているとみなしうる.以上より,消化管癌の深達度診断に際しては,積極的に病変の側面像を撮影し,管の辺縁の変形の有無とその程度を解析することが重要である.また変形には,食道,胃,大腸に共通する型が認められた.

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要旨 消化管における平滑筋腫瘍,脂肪腫の診断理論を検討した.平滑筋腫瘍は,胃では管内型が多く,腸では管外型が多かったが,管腔内面の隆起の隆起の性状,bridging foldの存在などは共通していた.脂肪腫は腸では,有茎性隆起を示し,表面にびらんを伴ったものがみられたが,柔らかく平滑なこと,X線透過性が良いなどの所見は共通していた.粘膜下腫瘍の診断理論は,腫瘍の種類と消化管の場における特性を考慮に入れて検討すべきと考えられた.

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要旨 過去4~6年間に外科的切除材料に発見された,早期胃癌1,195病変,早期大腸癌104病変,早期胆囊癌44病変を用いて(微小癌を除く),各臓器間での肉眼形態の差およびそれが生ずる原因を検討した.𡘁型部を有する癌の頻度は,大腸に最も高く(53%),次いで胆囊(30%),胃(8.1%)の順であった.低い隆起型を持つ癌の頻度は,胆囊(46%),大腸(39%),胃(18%)の順で,Ⅱb型癌のそれは胆囊に極めて高かった(25%).陥凹型癌の頻度は,胃に有意に高く(57%),大腸で1.0%,胆囊では0%であった.大腸では,胃や胆囊に比べて,腺腫内癌の頻度が高かった.胆囊では,特に,随伴性Ⅱb型が高頻度にみられた(39%),これら臓器での,早期癌の肉眼形態の差は,癌の組織型,癌の発生母地,癌の存在環境(胃酸,結石,蠕動,臓器の壁構造)から生ずると考えられた.

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要旨 胃と大腸の腺腫およびそれと癌との関連について,統一的基盤の上に立って比較を行った.その結果,①腺腫の肉眼形態は腺腫の発育様式と場の性質によって決定されるものであり,大腸では場の性質から有茎性発育の傾向が著しい.②腺腫の肉眼形態決定の1つの要因である発育様式から,粘膜内の水平方向への進展が垂直方向のそれよりも優勢であることは組織学的に悪性を疑わせる1つの所見であることが示唆された.③胃の腸上皮化生粘膜系列と大腸粘膜系列との腺腫の癌化率に関して,腺腫の癌化の組織学的基準およびより客観的な異型度認識という統一的観点からは,現在のところ,それらはそれぞれ多くとも4%と10%,それ以下であるとみなされた.④胃と大腸の癌の大きさと早期における粘膜下組織浸潤に関して比較すると,大腸のde novo cancerは1cm前後,腺腫由来の癌ではその大きさが2cm以上である.一方,胃の腸上皮化生粘膜系列のそれは2cm前後であり,胃固有粘膜系列では幽門腺粘膜から発生した未分化型癌は2cm,胃底腺粘膜からのそれは1cm前後と,癌の組織発生と癌の発生の場によって異なっている.

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要旨 手術または解剖例で,小腸炎症性疾患の肉眼的特徴を調べ,X線診断の基礎とした.また,術前の小腸二重造影像を検討し,炎症性疾患の理論的診断学を考察した.(1)組織的,臨床的に診断の確実な炎症性疾患45例284病変の肉眼所見で,潰瘍の形と病変の分布を組み合わせると,各患者に特徴的な所見が認められた.(2)術前2週間以内に二重造影法が施行され,病変部位がX線上に同定された118病変(狭窄を除く)で,潰瘍の形と変形との関係をみると,変形から潰瘍の形がある程度推定できた.(3)ニッシェの描出能は,潰瘍の形・大きさ・位置で異なる.ニッシェが描出されないものでは,辺縁像を参考にして読影すれば,性状診断ができる.

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〔切除胃肉眼所見〕患者は45歳,女性.胃体下部大彎前壁に2.6×1.2cmのⅡcが認められる.病変の境界は明瞭で,集中する粘膜ひだの先端はやせ,腫大を呈しており,陥凹内の大彎側には結節状隆起が認められる(Fig.1 a, b).

〔病理組織学的所見〕陥凹部のうち小彎側では低分化型腺癌(Fig.2 a, b),大彎側では中分化型腺管腺癌(Fig.3 a, b)が主体となり,癌は粘膜層から一部粘膜下層へ浸潤している(Fig.4).

学会印象記

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 11月というのに汗ばむほどの陽気の中で,第27回日本消化器病学会が1985年11月7日から3日間,太田康幸会長のもと,松山市で開催された.5題の特別講演をはじめ,シンポジウム2題,パネルディスカッション5題,ワークショップ5題,それに主題関連ポスター101題,一般演題670題(口演221題,ポスターセッション449題)が加わるという規模の大きな学会であった.その膨大な数の演題をすべて聞き,内容を紹介することは,到底不可能なことであり,必然的にこの印象記が筆者の興味を持っている分野に限られてしまうことを最初にお詫びし,お許し願いたい.

 第1日目のシンポジウム「胆囊癌の早期診断」では,活発な討論がなされた.早期胆囊癌の肉眼形態で,表面型の占める割合が病理と臨床では明らかに異なっていた.早期胆囊癌に占める表面型の比率は,病理では70~80%と高率であるのに対し,臨床のそれは施設により差はみられたが,かなりの低率であった.臨床で,表面型を術前に診断することは現在の診断学ではかなり困難であることや,切除例の肉眼標本の検討が十分になされずに代表切片のみで組織学的検索が行われている施設が多いなどの理由が,この相違を生んだものと思われる.このシンポジウムを通じて,表面型の術前診断が今後の大きな問題として残されたわけであるが,それと同時に,早期胆囊癌の定義も詳細な予後調査を踏まえ,今後検討し,統一されるべき重要な課題である.

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 1985年の8月26日より第3回目の“International Advanced Course of Gastrointestinal Pathology”が,約3か月の期間をもって日本で開催されました.

 このcourseが行われるようになったきっかけは,次のようなことです.すなわち,毎年1回日本で“外国人医師のための早期胃癌診断セミナー”が,近藤台五郎先生,白壁彦夫先生の計画のもとに早期胃癌検診協会,JICAが主催,エーザイ後援で開催されていますが,今回は第17回目が行われました.このセミナーは臨床医を対象としたものであり,そのセミナー終了者も300人前後に及んでいます.そして,彼らは日本で修得した消化管診断学を自国で実践すると共にそれを広め,今や日本の消化管診断学は周知のように世界に普及しています.このような状況のもとで,いったん,消化管病理学分野に日を向けますと,彼らは自国で病理医と共同研究をしようとする,あるいは早期癌について討論する場合に,どうしても意見が噛み合わず,せっかく日本で学んだことを十分に活用することができないという状態が生じました.多くの病理医は早期胃癌を経験したことがないために,彼らが臨床的に発見した早期胃癌を癌とは診断しないというようなことが生じていたわけです.そこで,外国の病理医からは彼らと波長を合わせるためにも日本での消化管病理学セミナー開催の声が高まり,その要望に応えて第1回目の International Advanced Course of Gastrointestinal Pathology を1983年秋に開催し,今回は第3回となりました.

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要旨 患者は45歳の男性.生来健康であったが,1964年achalasiaの診断で下部食道胃噴門部切除術が施行された.1977年吻合部付近に腺癌が発生し ,再び食道胃部分切除術が施行された.組織学的には,粘膜内にとどまる未分化腺癌であったが,その癌は前回手術の食道胃吻合部より口側にあった.しかもその周囲は円柱上皮によって被われていたため,Barrett型食道に発生した早期腺癌と診断された.このとき悪性絨毛上皮腫の所見は認められなかった.1982年7月ごろより悪心,嘔吐が出現.精査の結果,癌の再発と診断され同年11月全食道および残胃切除術が施行された.組織学的に腫瘍の大半は食道にあり,その一部,リンパ節転移巣に腺癌と共存して,悪性絨毛上皮腫類似の組織像が認められた.この部分はPAP法でHCG陽性であった.1983年2月ごろより咳漱が出現.胸部X線写真上,多数の結節状腫瘤影が認められた.またこのころより睾丸の萎縮と女性化乳房が出現し,血中HCG値も12,000mIU/mlと高値を示した.MFC療法が無効であったため,ACT-D,MTX,Vinblastinに変更したところ肺転移巣の縮小と血中HCG値の減少が認められ,同年6,月には280mIU/mlまで低下した.しかし同年9月肺炎の合併と全身転移のために死亡した.剖検検索では壊死性,出血性の転移結節が肺,肝,腎およびリンパ節広範に多数認められた.組織学的にはすべて悪性絨毛上皮腫であった.

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要旨 原発性アミロイドーシス,多発性骨髄腫に伴うアミロイドーシス,二次性アミロイドーシス,遺伝性アミロイドーシスにおける胃アミロイドーシスの合併は多い.しかし本症例のごとく,胃に限局しているアミロイドーシスの報告は少なく,調べた範囲では,7例を数えるのみである.これら7例のうち,第4例が吐血のため緊急手術となり,術後に診断されており,他6例のうち第6例を除いて,術前診断が“胃悪性腫瘍”で術後に診断されている.胃アミロイドーシスのX線所見は,スキルス様所見を呈する場合と,腫瘤形成所見を呈する場合がある.本症例はスキルス様所見を呈し,胃生検にて診断し,6年間経過を追っているが,所見に変化はない.

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要旨 胃平滑筋芽細胞腫は若年者にはまれとされるが,今回われわれは15歳の囊胞を形成した胃平滑筋芽細胞腫の1例を経験したので報告する.患者は15歳男性,主訴は心窩部痛である.胃X線検査,胃内視鏡検査,腹部超音波検査,腹部CTスキャン,血管造影検査を行った結果,胃前庭部前壁の囊胞を形成した粘膜下腫瘍と診断された.手術は術中凍結組織検査で悪性が疑われたため,幽門側胃切除術および所属リンパ節郭清(R2)が施行された.病理学的診断は胃平滑筋芽細胞腫を得た.術後現在まで1年10か月を経過しており,再発の徴候はみられない.

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要旨 患者は75歳,男性.1983年8月上旬より粘血便が始まり8月5日入院.大腸透視にて横行結腸にⅡa+Ⅱc様の不整形潰瘍,横行結腸から盲腸にかけて多数のたこいぼ状のびらんを認めた.大腸鏡検査にても同様に不整形の潰瘍と盛り上がりの強いびらんを認めた.潰瘍を生検し,潰瘍の壊死物質中に赤痢アメーバを認め,大腸赤痢アメーバ症と診断した.metrcnidazole 1,500mg投与にて症状は完全に消失し,大腸鏡にても治癒が確認された.本症例ではX線・内視鏡検査でアメーバ赤痢が疑われたが,通常の糞便検査にては虫体が確認されず,潰瘍部からの直接生検にて虫体が証明され,確診された.

胃と腸カンファレンス

この症例をどう考えるか 貝原 信明
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症例の概要 症例:73歳女性.主訴:上腹部痛,2年前に腹痛を来したことがあるが特別の治療を受けていない.6か月前(1982年春),上腹部膨満感あり,X線検査(胃透視)を受けたが異常なしと言われた.その後時々上腹部痛があり,3か月前,胃潰瘍と言われた(生検にて悪性所見なし).抗潰瘍剤による治療を受けたが症状軽快せず,早期胃癌の疑いにて外科を紹介された.1983年1月13日,胃切除術施行.術後切除標本の肉眼所見ではulcer scarではないかと考えられた.Histology:Gastric ulcer(Ul-Ⅱ,scar).

初心者講座

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 初心者講座を6回にわたって担当することになった.“早期胃癌の見つけ方”だという.筆者らは“見つけ方”に奥儀があるとは思っていないのでどうも具合が悪い.要は,①X線,内視鏡検査をどのように行うのか,そして,X線,内視鏡の役割は?②所見の拾い上げ方,生検の仕方,生検結果の釈,③病理組織構築とX線,内視鏡所見の対比の仕方,逆に言えば,X線,内視鏡所見から病理組織構築を推定するにはどんなやり方をすればよいのか,などにつきると思う.6回ですべてを網羅はできないだろうが,症例を中心にできるだけ簡潔に筆者らの考えを述べてみたい.

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欧文目次

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 この本は,平松慶博先生が,帝京大学以来の御弟子さんと一緒に書いたものであるということが,まず第一の特徴と言える.これらのお弟子さんは,それぞれにすばらしい道を経て来られた方々であるが,改めて平松先生がいかに良い教師であったかということを知らされた思いがする.

 6年前に,「腹部CTスキャンの読み方」という本を出されて以来,更に症例を増やして,2,000例に近いものの中から336例を選りすぐった由で,非常に多数の写真を使って,適切な解説と,単純撮影や血管撮影,更に超音波検査の画像も適宜に示しながらの説明によって,極めて懇切丁寧な本に仕上げてある.

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Seven-year follow-up study of chronic gastritis in gastric ulcer patients: Maaroos HI, et al (Scand J Gastroenterol 20: 198-204, 1985)

 慢性胃炎は胃潰瘍に随伴する所見で,この両者は,1個の胃の中で動的な現象を呈する.胃潰瘍は自然治癒の傾向を示すが,胃炎のほうは,一般に年齢依存性で進行していく.

 著者らは,この両者の関連を明らかにすべく,112例の胃角部潰瘍を対象に,7年間にわたって体部および幽門洞の背景粘膜の研究を試み.

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 畏友,田辺達三教授が「一般外科医のための血管の処理と応用手技」を上梓された.一般外科医,消化器外科医を対象に,明日からの臨床に直接役に立つように,平易に,明快に述べておられるが,格調の高い秀れた名著である.

 現在,一般外科病棟入院の大半は消化器癌患者であり,消化器癌治療が外科手術の大きなウエイトを占めていることは事実である.言うまでもなく癌手術は,郭清の手術であり,すべての外科医は何らかの形で血管の直接処理に当面している.また肝胆膵の外科手術が多くなってきた昨今では,肝動脈や門脈の処理,下大静脈のように大出血を併発しやすい大血管を処理する機会が激増している.

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 Non-steroidal anti-inflammatory drugs and peptic ulcer perforation:Collier DSTJ1, Pain JA (Gut26:359-363, 1985)

 非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)が穿孔性潰瘍の発生に重要な役割を持つことは多くの研究が示唆している.NSAIDは胃酸分泌の抑制と細胞保護作用を持つプロスタグランディンの合成を阻害するが,その副作用は強調されすぎているきらいがあり,最近の主要な論文はNSAIDと消化性潰瘍の関連に疑問を投げかけている.また疫学的研究によると穿孔性潰瘍は減少しているというが,男性で減少し女性でむしろ増加している理由は十分説明されていない.当研究では穿孔性潰瘍の頻度とNSAIDの処方パターンの関連につきレトロスペクティブに検討した.

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 Manometric disorders in patients with suspected sphincter of Oddi dysfuntion:Toouli J, Roberts-Tho-mson IC, et al (Gastroenterology 88:1243-1250, 1985)

 胆嚢摘除後の持続性疹痛の原因として,Oddi氏筋の機能障害が指摘されている.この本態を解明するために,胆嚢摘除術の既往のある48名にOddi氏筋のマノメトリーを行った.胆膵系異常のない10名を対照とした.38名はOddi氏筋の機能障害を持つと考えられ激しい胆道痛を有し胆管拡張または一過性肝機能障害を伴っていた.3孔式,持続性注水型のマノメトリー装置を用いOddi氏筋の基礎圧,位相収縮圧,圧力波の周期,伝播方向,静脈投与したCCK-OP(cholecystokinin-octapeptide)に対する反応を記録した.対照の平均基礎圧は17mmHg,平均収縮圧は188mmHgで,圧力波は十二指腸側へと順行性に伝播し,CCK・OPは基礎圧に影響せず位相収縮を抑制した.38名のうち固く閉じたOddi氏筋のため自在な挿管が困難であった6例を除く32名に満足すべき結果が得られ,25名に対照と比較し位相収縮圧以外の全運動変数の異常が認められた.すなわち,12例に過剰な逆行性収縮,11例に高頻度の位相収縮,8例にCCK-OPに影響されない平均74mmHgの基礎圧上昇,10例にCCK-OPに対する矛盾した反応(7例は位相収縮の増加または不変,3例は基礎圧の上昇)が認められ,これらの異常の多くは胆道痛や腹部不快感などを伴った.

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 恒例の「胃と腸」購読の諸先生全国大会が第30回日本消化器内視鏡学会総会2日目の10月4日夜,松江市の松江東急インで開かれた.例会世話人の古賀成昌氏(鳥取大学・第1外科)の挨拶のあと,早期胃癌研究会代表の竹本忠良氏(山口大学・第1内科)が“作ってはこわし,こわしては作る過程を経てきたのが早期胃癌診断の歴史だ.辛辣なコメントは光栄と思い,活発な会になるように期待する”と述べたあと,福本四郎氏(島根医科大学・第2内科)・貝原信明氏(鳥取大学・第1外科)両氏の司会のもとに症例が供覧された.今回は①島根医科大学・第2内科,①島根県立中央病院,③島根医科大学・第2内科の3例が,X線・内視鏡・病理の各面から詳細に検討され,300名を集めた会場は盛況を博した.

編集後記 中村 恭一
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 診断に際しては,種々の病変あるいは所見を熟知していれば問題はなく,それらを知ることこそが重要であるとする考え方がある.このことは,物識り博士あるいは動く辞書となることを指向してのことである.しかし,人生には限りがあるから,自ずと個人の経験量にも限界がある.また,診断に際して個人の辞書にないことに遭遇した場合には,思考が停止する.更には,個々のことをのみ熟知していて,互いに関連のない,つまり体系化されていない知識のみで良いとするならば,それは医学を知らない素人で十分である.ここに於いて,多くの既知のことをある前提のもとに互いに関連づけることが必要となってくる.診断に際しては,体系づけられた知識という“フィルター”あるいは“ふるい”にかけることによってこそ誤りのない判断が可能となり,未経験のことに遭遇した場合には弾力的に思考することができ,また,そこから新しい命題が派生してくる.本号は,まさしく,消化管全体の病変について学際的な診断体系を確立しようとする,その試みである.この企画が模索の段階であるにもかかわらず,本号からは新しい見方あるいは考え方の芽生えを察知することができる.例えば,複雑なX線・内視鏡・肉眼・顕微鏡的図形を,連続的変形によっても保存されるような図形の質を取り上げていること,病変あるいは変形を位と相の両面から眺めていること,などである.図形を対象とするものには,絵画観賞,幾何学がある.絵画観賞は感性に,幾何学は知性に訴えるものである.X線・内視鏡・病理組織診断学は同じ図形を取り扱う学問であるからには,幾何学に見られるような美しい体系に一歩でも近づくことが必要であろう.

基本情報

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胃と腸
21巻1号 (1986年1月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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