臨床検査 50巻3号 (2006年3月)

今月の主題 採血

巻頭言

採血 渡邊 卓
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2003年の第50回日本臨床検査医学会総会において,勝田らは真空採血管の未滅菌の問題を指摘した.それがNHKで報道され,また新聞各社もこの問題を広く取り上げた結果,採血は国民的な関心の的となった.厚生労働省は学会での指摘に呼応するかたちで「真空採血管の使用上の注意等の自主点検等について」と称する通知を出したが,ここに「駆血帯を装着した状態で採血管をホルダーに挿入しないこと」との文言がみられた.これは採血業務に当たる現場の関係者に大きな衝撃を与えることとなった.指示通りの方法では十分な量の採血が困難であり,採血の現場に大きな混乱を生じる可能性があったからである.このような出来事を契機として,臨床検査の世界において,採血に関する議論がにわかに活発化した.真空採血管の問題に端を発した一連の動きは,これまであまり注目されてこなかった採血に関係者の眼を向けさせるという大きな役割を果たしたのではないだろうか.論議の対象は,その後さらに,採血の様々な局面にまで広がりつつあるようにみえる.今回の特集は,こういった動きを背景として企画されたものである.

 採血は,止血を含めて通常5分もあれば完了する比較的単純な処置ではあるが,あらためて考えてみると,そこには医療行為を行ううえで考慮されるべきあらゆる要素が包含されているといってよいのではないだろうか.

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採血は日常的に行われているとはいえ,侵襲のある医療行為である.稀にではあるが,重大な合併症が起こる可能性も否定はできない.採血の意義や必要性とともに,起こり得る危険性の程度や頻度なども考慮したうえで,採血に関する説明と同意のあり方について考えてゆく必要がある.〔臨床検査 50:251-253,2006〕

採血手順 大西 宏明
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採血は血液検査を行うために必須の手技であり,採血法の標準化は,正確な検査結果をもたらすこと,および患者・採血者双方の安全性を確保するうえで不可欠である.2004年7月に日本臨床検査標準協議会からわが国初の標準採血法ガイドラインが発行された.医療における標準化および安全性が強調される現状において,採血に従事する者は可能な限り標準的採血法を遵守することが求められる.〔臨床検査 50:255-260,2006〕

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採血ガイドラインが作成され,採血に関する討議がなされ,採血に対する関心が高まった.採血は日常の重要な業務でありながら,古くて新しい研究テーマでもあろう.Preanalyticalな要因として,被検者の生理変動要因につき,日内変動,姿勢,運動について私見を込めて記した.また,出血時間とSMBGでの成績から部位間差について,さらに採血部位への物理的影響についての成績を示した.皮下組織における血管系以外の要因についても関心をもつ必要がある.〔臨床検査 50:261-266,2006〕

小児採血の特殊性 岩田 敏
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小児採血の特殊性として,①自制が効かないため,検体採取に協力が得られない点,②静脈採血に使用する肘静脈が細くて見えにくい点,③循環血液量が成人に較べはるかに少ないため採血量を少なくする必要がある点,④採血のような苦痛を伴う検査は必要最小限の回数にとどめなくてはならない点,⑤採血の際にいたずらに恐怖感を与えないようにする必要がある点,などが挙げられる.小児の採血に当たっては,抑制・固定をきちんと行ったうえで,採血部位の選定,苦痛・恐怖感の軽減に配慮することが重要である.〔臨床検査 50:267-270,2006〕

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採血は検体検査の第一歩として重要な作業であり,侵襲を伴うために安全に行われなければならない.そのためJCCLSより採血ガイドラインが出され採血作業の標準化が進んできた.しかし多くの採血室においてはアームダウンを遵守できないことが報告されている.

 このため患者さまの安全を考慮した採血専用椅子を始めとする新しい採血室の構築を試みた.〔臨床検査 50:271-276,2006〕

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採血室でのヒューマンエラーの多くは,患者誤認,採血管間違いであり,ひとによる照合に依存している業務形態に問題がある場合が多い.このため,ひとの介在をできるだけ少なくするコンピューターシステムを導入することが重要となってくる.採血業務を支援するコンピューターシステムは,受付業務,採血管準備,患者照合,採血管照合,採血時患者情報,業務分析などに利用され,ヒューマンエラーの削減に有効である.本稿では,筆者の施設での事例を中心に解説し,筆者が開発した採血業務支援システム(ABCAS)についても紹介する.〔臨床検査 50:277-283,2006〕

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採血器具について,安全性確保の観点と,薬事法改正に伴い整備された医療機器の基準に基づき,簡単に解説する.〔臨床検査 50:285-288,2006〕

採血局所の消毒 米山 彰子
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採血部位の消毒には,生体に対する毒性が低く,消毒効果,速効性,速乾性に優れた消毒用エタノールの他,イソプロパノール,ポビドンヨードなどが用いられる.十分量の消毒薬で必要な範囲を消毒し,消毒薬が乾燥する程度の時間をおいて穿刺を行う.消毒後は穿刺する部位に触れないこと,消毒綿の汚染に注意し可能であれば単包の製品を使うこと,血液培養の検体採取にはより細心の注意を払うことが必要である.〔臨床検査 50:289-292,2006〕

手袋の装着に関して 細見 由美子
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採血時などの血液体液に接触する可能性のある処置の際には手袋の装着が必要である.手袋装着の目的は,患者からの感染伝播を受けるリスクを減らすため,自分自身の病原微生物が患者に伝播するのを防ぐため,患者から患者へと伝播する可能性のある病原微生物による手指の一時汚染を減少するためであり,患者と医療従事者双方の感染防止対策として重要である.〔臨床検査 50:293-297,2006〕

合併症・事故

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肘部からの採血では正中神経本幹,手関節では橈骨神経感覚枝に注意したい.神経の走行を念頭に静脈を目で確認する.針で皮下を探索するようなことをしなければ,神経損傷は回避できる.もし,採血時にシビレや痛みが残存すれば,ただちに専門医の診察に掛ける.採血実施者として,採血時の刺針状況,患者との会話内容,シビレや放散痛の部位を記録しておくことは必須である.経過をみて3週以上にわたって軽快しないなら神経伝導検査や針筋電図による客観的補助診断を考慮する.強い疼痛例には反射性交感神経性ジストロフィーへの進展を予防するためにも早期治療を開始する.〔臨床検査 50:299-303,2006〕

血管迷走神経反応 藤田 浩
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採血による血管迷走神経反応は決して頻度の少なくない合併症である.自己血採血や献血では,採血後に発生することが多く,転倒による頭部等の重症外傷の原因になることがある.また,検査目的の採血において,血管迷走神経反応は起き,しかも採血後だけでなく,採血中に発生する場合もある.採血者は十分,本合併症について認識し,冷静かつ適正に対応する必要がある.〔臨床検査 50:305-309,2006〕

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【目的】 採血合併症には,神経損傷,皮下出血(血腫),血管迷走神経反応等がある.今回,採血後動脈穿刺後の血腫(仮性動脈瘤)が疑われ,除外診断にてリンパ管損傷と診断し得た稀な事例を経験したので報告する.

【症例報告】

症例:68歳,女性

主訴:皮下腫瘤

現病歴:関節リウマチにて当院リウマチ膠原病科にフォローアップ中の症例.平成17年3月22日,定期的な採血検査のため,中央採血室にて採血を実施した.右尺側正中皮静脈から穿刺し,採血は何事もなく完了した.採血当日は採血部位の異常等認められなかった.採血翌日夜に採血部位に腫瘤があるのに気付き,2日後採血後皮下腫瘤にて中央採血室を訪れた.

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医療従事者の健康と安全を確保する視点から,採血時の針刺しによる職業感染の防止に包括的に取り組む.採血時の針刺しの8割以上が,採血器材の使用後に発生していることから,使用済みの注射針に再びキャップをするいわゆる「リキャップ」を禁止し,注射針専用の耐刺通性廃棄容器などを適切に配置するとともに,診療状況等必要に応じて,針刺しの防止に配慮した安全器材の活用を検討する.B型肝炎ワクチン接種を受け,職業感染リスクを減ずる視点からも手袋を着用しての採血を推奨する.〔臨床検査 50:311-316,2006〕

今月の表紙 細胞診:感染と細胞所見・3

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カンジダ(Candida)はヒトの口腔・消化管・女性生殖器・皮膚に常在する酵母様真菌の一種で,種々の表在性あるいは深在性真菌症の原因となる.カンジダ症の原因菌としてはカンジダ アルビカンス(Candida albicans)が最も多く,カンジダ グラブラータ(Candida glabrata)も近年増加傾向にある.特に消化管・肺臓・腎臓・心臓・肝臓などの深部臓器に生じる深在性カンジダ症は,血液疾患・AIDS(後天性免疫不全症候群)・抗癌剤投与や化学療法の治療経過中など,免疫力の低下した患者にみられることが多く,しばしば死因につながる重篤なカンジダ症を引き起こす1).また,これらの確定診断には細菌培養だけではなく,組織学的な病変の特徴や菌体の形態などが診断の決め手となるため,病理組織学的な裏付けが必要である.

 本稿では,日常の細胞診で遭遇することの多い子宮腟頸部を中心に,喀痰・尿に出現するカンジダについて述べる.

コーヒーブレイク

夏の終わり 屋形 稔
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2005年8月末超大型ハリケーン(カトリーナ)が米国南部に上陸し,かつてない災害の爪跡を残した.特にルイジアナ州のニューオーリンズ市は洪水で完膚なきまでの被害を受けた.

 約50年前にサンフランシスコに留学した当時,研究室のボスの雑談に米国の都市で訪れるべきは当市とボストンとニューオーリンズであると語った.これら3つの街はattractive(魅力)であるという言葉で教えてくれたのが印象に残った.ボストンはまもなく学会で数度訪れたが,後者はその10年後位に血液検査関係の集会を機に目的を達した.

シリーズ最新医学講座・Ⅰ 法医学の遺伝子検査・3

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はじめに

 1984年,DNAフィンガープリント(DNA指紋)法が考案されて以来,ヒトゲノム中に存在するミニサテライト(VNTR)領域を分析する検査法が次々と開発され,法医鑑識領域,とりわけ物体検査と親子鑑定の分野においては,大きなパラダイムシフトが起こった.本稿では,これらのミニサテライトの解析法について,その検査法の原理や特徴,法医鑑識領域への応用,そして変遷について紹介する.

 ヒトの体は約60兆個の細胞から構成されており,赤血球など一部の細胞を除くほとんどの細胞に核があり,そのなかに染色体を含む.この本体が生命の設計図といえるDNAであるが,ヒトの場合,その“設計図”には30億個もの塩基が並んでいる.このなかには遺伝子以外の領域が多くを占めるが,ある特定の長さの塩基配列が縦列に繰り返して並ぶものがあり,これを縦列反復配列といいヒトゲノムの約3%を占める1).このうち,繰り返し単位(リピート)が6~100塩基(bp)程度で数個から数百個並び,全体の長さが0.5~30kbpになるDNAがある.Jeffreysらはこれをセントロメアにある長大な縦列反復配列であるα-サテライトDNAと対比して,ミニサテライトと名付けた2).また,中村らはミニサテライトのうち多型性に富むものをVNTR(variable number of tandem repeat)と呼称している3)

シリーズ最新医学講座・Ⅱ 耐性菌の基礎と臨床・2

主として院内感染で問題となる耐性菌・1

ブドウ球菌(基礎編) 花木 秀明
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はじめに

 ブドウ球菌は,好気性・通性嫌気性グラム陽性球菌でブドウ房状に生育するため,ブドウ球菌と呼ばれている.本菌は,コアグラーゼ(血漿を固める酵素)を産生する黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)と産生しないブドウ球菌(Coagulase-negative Staphylococci;CNS)に分けられる.また,黄色ブドウ球菌はマンニットを資化できるがCNSはできないという特徴もある.臨床で頻繁に検出されるCNSはS. epidermidisやS. heamolyticus,S. saprophyticusなどである.

ブドウ球菌(臨床編) 青木 泰子
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はじめに

 病院感染で問題となるブドウ球菌としてはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のほか,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)があげられる.CNSの中にはバンコマイシン耐性を示す株もあり,血管カテーテル感染,人工弁,人工関節の感染など,異物を介する感染が起こりやすい.しかし,病院感染の起因菌として問題になりやすく,対策を必要とされるのはMRSAが大部分であり,本稿ではMRSAについての対策を述べる.

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膨大なデータベースから健常人のデータを抽出し,32項目の臨床検査値の男女年齢層別の平均値を算出し,その年齢変化,各検査項目と年齢との相関関係を調べた.健常人の検査値の加齢現象について明らかにした.

学会だより 第56回日本電気泳動学会総会

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第56回日本電気泳動学会総会は,本庄利男先生(麻布大学獣医学部)を会長として2005年11月11・12日の両日,東京都新宿区の野口英世記念会館において開催された.

 今回で56回目となる歴史あるこの学会は,電気泳動を中心とする新しい分離分析技術の開発や理論の確立,基礎研究および臨床医学研究の分野における応用研究を促進することを目的に1950年に設立された.現在電気泳動は蛋白質だけでなく,核酸や糖質など多くの生体分子の分離分析法として,臨床検査技師だけでなく医学系や生命科学系研究者など多くの研究者に利用されている.近年では最新のプロテオーム解析技術が加わり,電気泳動での分析技術の発展が期待されている.一方,蛋白分画や免疫電気泳動,アイソザイム分析をはじめとする臨床検査分野における電気泳動などは,近年の医療情勢を反映してか若干元気がないのも事実で,学会参加者の多くは基礎医学や生命科学系の研究者が主で,病院関係の臨床検査技師の参加は少ないようであった.

学会だより 第79回日本感染症学会総会

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第79回日本感染症学会総会は,名古屋市立緑市民病院院長の品川長夫先生を会長として,2005年4月14日(木)~15日(金)の2日間に渡り,名古屋国際会議場において開催された.今回の総会は,「患者原点の感染症診療を再認識する」というテーマの下,特別講演3題,招請講演2題,教育講演7題,特別規格1題,シンポジウム3題,ワークショップ6題,および,370題を超える一般演題により構成されていた.この時期は,日本泌尿器科学会や日本呼吸器学会など大きな学会が複数重なって開催されていたにもかかわらず,約1,900名の参加があり,活発な討論がなされていた.

 特別講演では,「生体肝移植を受けて」と題し,国立病院機構三重病院の神谷齋先生が御自身の生体肝移植のご経験について発表された.サイトメガロウイルス感染症を1度ご経験されたものの,移植から3年を経過され,特に拒絶反応もなく移植された肝臓は良好に機能されている旨をお話し下さり,まさに会長が今回のテーマとされた患者の立場からの意見が伺えたと思う.招請講演では,東京大学農学生命科学研究科の吉川泰弘先生による「動物由来感染症への対策」,農林水産省動物医薬品検査所の高橋敏雄先生による「家畜衛生分野における耐性菌の現状と今後の対応について」として,公衆衛生の観点から,ペットの多様化に伴う動物由来の新興・再興感染症や家畜衛生も交えた薬剤耐性菌対策についてのお話があった.

学会だより 第78回日本生化学会大会

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第78回日本生化学会大会は,2005年10月19日(水)~10月22日(土)の4日間にわたり,大阪大学大学院医学系研究科 高井義美教授会頭のもと,神戸ポートピアホテル,神戸国際会議場,神戸国際展示場を会場として開催された.今回の大会のテーマは,温故知新―ポストゲノム時代の生化学―(Discover New Things by Studying the Past Biochemistry in the Post Genome Era)である.“ポストゲノム時代に突入したことを踏まえ,これまでの生化学が培ってきた知見,ノウハウをいかに活用して(温故),未知の分野を開拓していくか(知新)を目指す”というものである.本学会の発表演題数は一般演題(ポスター発表)2,128題であり,このうち,ミニシンポジウムでの口頭発表に採択されたものが18題,ワークショップ(87テーマ)での口頭発表にも採択されたものが742題であった.生化学会では2003年の大会より,若い研究者が口頭で発表する機会を増やす努力としてポスター発表から一般口頭発表を採択している.また,8テーマのシンポジウム,16テーマのミニシンポジウム,特別講演3題(大会2日目より,一日1題ずつ)がもたれた.

 本大会の内容を大分野名で見ると,糖鎖生物学,脂質生物学,タンパク質,酵素・代謝調節・栄養,細胞応答,細胞の構造と機能,植物生化学,神経科学,ゲノムと遺伝情報,発生と再生,病気:病態の生物学,ゲノム・遺伝子解析技術の12分野である.

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第78回日本生化学会大会は,神戸国際会議場などを会場にして2005年10月19~22日にわたって開催された.ポスター発表が2,000を越え,参加者も7,000から8,000名に達する巨大学会だ.このような大きな学会運営の大会会頭の負担を軽減する目的もあってか,最近は,会頭が誰かにかかわらず会場が2年おきに横浜と神戸というのが恒例のようになっている.運営者の苦労を顧みないでいえば,毎年参加しているので個人的にはたまには気分転換に他の都市でも…と思わないでもない(来年は分子生物学会や他の国際カンファレンスと合同開催のため京都だけど).

 日本生化学会大会はこの基礎生物学的,分子生物学的分野の(特に若手研究者の)国際化をにらんで,この数年プログラムの抄録がすべて英語になっており,本年は24あるシンポジウム,ミニシンポジウムには必ず最低1人の外国人演者が含まれ,そのいくつかは日本人の発表もすべて英語となっていた.今回私はフィンランドでの国際会議の帰りに関西国際空港から直行したのだが,たまたま私が聞きたい講演に英語があったのは,英語が得意ではないほうの私にとっては,また日本でも英語かと少し疲れが倍加気味であった.

学会だより 第52回日本検査医学会総会・第45回日本臨床化学会年会連合大会

標準化の動き活発 美崎 英生
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第45回日本臨床化学会年会は2005年11月17~20日までの4日間,第52回日本臨床検査医学会総会との連合大会として福岡国際会議場で開催された.時同じくして,隣の体育館では大相撲九州場所が開催中であり,毎朝やぐら太鼓の音で学会の1日も始まった.

 臨床化学会は一昨年の日本学会事務センターの倒産による経済的打撃,会員の高齢化とマンネリ化など,学会を取り巻く環境が芳しくないなか「明日の検査をめざして」のスローガンのもと,学会活動の活性化を念じて開催された総会であった.

明るい検査の展望を求めて 上平 憲
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第52回日本検査医学会総会・第45回日本臨床化学会年会の連合大会が,濱﨑直孝九州大学教授と小野順子福岡大学教授の大会長のもと,発展目覚ましい九州の都・福岡市で2005年11月17~20日の4日間開催された.会場は福岡国際会議場で,2005年納めの大相撲・九州場所の開催されているアリーナに隣接し,開催日も大相撲などのイヴェントと重複したために宿泊施設の確保などに苦慮された方も多かったことであろう.

 今回の連合大会のキャッチフレーズは「明日の検査をめざして」として,“今日の検査の充実”に根ざした“明日の明るい検査・ひいては明るい医療”を志向し,両大会長の日頃の持論が込められた企画となっていた.実際にプログラムを見ても,その意図がひしひしと感じられた.特別講演2題・教育講演6題・シンポジウム12題と過去に類を見ない豊富さと内容の学際化が見てとれた.しかし,このような学会主催者側の企画とは別にして,なんといっても,検査の現場・研究の現場からの一般演題の内容やactivityこそが,「明日の検査」のactivityを担うバロメーターであり,ひいては現実の検査室や検査医学・臨床化学の明日の明るさ・底力であると思う.今回の連合大会では,過去3回の連合大会の一般演題数が400題前後であったものが528題と飛躍的に伸び,また発表もすべて口演とされ,口演時間も8分,質疑時間4分と結構な時間が確保されていた.

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第52回日本臨床検査医学会総会が九州大学濱﨑直孝教授を総会長に,第45回日本臨床化学会年会が福岡大学小野順子教授を年会長として2005年11月17日(木)~20日(日)の4日間,福岡市の福岡国際会議場で開催された.連合大会としては,3年連続4回目である.折りしも,隣接の福岡サンパレスにて大相撲九州場所が開催されており,華やかな雰囲気の中での学会開催であった.

 テーマは「明日の検査をめざして」であり,臨床検査に携わる者として,今日の日常臨床検査業務を適切に行う(今日の臨床)ことも大切であるが,新しい検査法の開発(明日の検査)を常に心掛ける必要があるのではという濱﨑総会長の思いが込められていた.また,臨床検査に携わる人たちの総力を結集し,奥行きと広がりをアピールすることで,関係者が未来を語る集いになることを小野年会長は期待されていた.両先生の期待が見事に結実した学会内容だったと思う.

基本情報

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臨床検査
50巻3号 (2006年3月)
電子版ISSN:1882-1367 印刷版ISSN:0485-1420 医学書院

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