今月の主題 採血
巻頭言
採血
渡邊 卓
1
Takashi WATANABE
1
1杏林大学医学部臨床検査医学
pp.249-250
発行日 2006年3月15日
Published Date 2006/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542100038
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2003年の第50回日本臨床検査医学会総会において,勝田らは真空採血管の未滅菌の問題を指摘した.それがNHKで報道され,また新聞各社もこの問題を広く取り上げた結果,採血は国民的な関心の的となった.厚生労働省は学会での指摘に呼応するかたちで「真空採血管の使用上の注意等の自主点検等について」と称する通知を出したが,ここに「駆血帯を装着した状態で採血管をホルダーに挿入しないこと」との文言がみられた.これは採血業務に当たる現場の関係者に大きな衝撃を与えることとなった.指示通りの方法では十分な量の採血が困難であり,採血の現場に大きな混乱を生じる可能性があったからである.このような出来事を契機として,臨床検査の世界において,採血に関する議論がにわかに活発化した.真空採血管の問題に端を発した一連の動きは,これまであまり注目されてこなかった採血に関係者の眼を向けさせるという大きな役割を果たしたのではないだろうか.論議の対象は,その後さらに,採血の様々な局面にまで広がりつつあるようにみえる.今回の特集は,こういった動きを背景として企画されたものである.
採血は,止血を含めて通常5分もあれば完了する比較的単純な処置ではあるが,あらためて考えてみると,そこには医療行為を行ううえで考慮されるべきあらゆる要素が包含されているといってよいのではないだろうか.
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