シリーズ最新医学講座・Ⅰ 法医学の遺伝子検査・3
ミニサテライトの解析法―DNAフィンガープリントからMVR-PCRまで
玉木 敬二
1
Keiji TAMAKI
1
1京都大学大学院医学研究科法医学講座
キーワード:
ミニサテライト
,
VNTR
,
DNAフィンガープリント
,
MVR-PCR
Keyword:
ミニサテライト
,
VNTR
,
DNAフィンガープリント
,
MVR-PCR
pp.317-326
発行日 2006年3月15日
Published Date 2006/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542100052
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はじめに
1984年,DNAフィンガープリント(DNA指紋)法が考案されて以来,ヒトゲノム中に存在するミニサテライト(VNTR)領域を分析する検査法が次々と開発され,法医鑑識領域,とりわけ物体検査と親子鑑定の分野においては,大きなパラダイムシフトが起こった.本稿では,これらのミニサテライトの解析法について,その検査法の原理や特徴,法医鑑識領域への応用,そして変遷について紹介する.
ヒトの体は約60兆個の細胞から構成されており,赤血球など一部の細胞を除くほとんどの細胞に核があり,そのなかに染色体を含む.この本体が生命の設計図といえるDNAであるが,ヒトの場合,その“設計図”には30億個もの塩基が並んでいる.このなかには遺伝子以外の領域が多くを占めるが,ある特定の長さの塩基配列が縦列に繰り返して並ぶものがあり,これを縦列反復配列といいヒトゲノムの約3%を占める1).このうち,繰り返し単位(リピート)が6~100塩基(bp)程度で数個から数百個並び,全体の長さが0.5~30kbpになるDNAがある.Jeffreysらはこれをセントロメアにある長大な縦列反復配列であるα-サテライトDNAと対比して,ミニサテライトと名付けた2).また,中村らはミニサテライトのうち多型性に富むものをVNTR(variable number of tandem repeat)と呼称している3).
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