呼吸と循環 9巻11号 (1961年11月)

  • 文献概要を表示

 1948年アメリカのNobert Wienerはcyber—neticsという新しい学問分野の誕生を提案し,各種の自動制御機械や計算器と生物体との両者における制御と通信の機構を全く同一の理論的根底に立つて統合的に理解研究しようとする態度を唱導した1)。この提唱は広く世界各地で反響を呼び,一方では物理学者や工学者の生理学に対する積極的な関心を喚起し理論生物学或いは新しい生体機械論とでもいうべぎ啓蒙書類2)〜6)の出現を促すと共に,他方では生理学者医学者の間に自動制御理論や情報理論に対する興味を普及せしめ各種の生理学的な調節機構やその失調などをfeedback及びその破綻として理解説明しようとする気運を作りつつある7)〜15)。しかしこの様ないわば流行にも拘わらず,何らかの生体調節機構について真に定量的取扱いの段階にまで掘下げた研究は実はまだ僅かしかみられない。之は新しい方法論が諸種の学問領域に滲透して有益な研究へと結実する迄にはかなりの年月を要するという一般的な事実を物語るものであろうが,一つには又生体内の調節機構が非常に多数の多重loop系からなりたつていること,及び個々の要素が殆んどすべて非線型の動作をすることなどのために,線型要素系のシンセシスを主体とした工学的な制御理論では甚だ取り扱いが難かしいという事情にもよることと思われる。

  • 文献概要を表示

 I.緒言 肺の基本的機能であるガス交換は換気,分布,拡散及び肺循環によつて行われるので肺内ガス分布の測定は単にガス交換障害の原因を調べるばかりでなく肺胞換気の効率を測定する意味からも重要な検査法である。従来肺内ガス分布異常の検出にはDarling1)の肺内ガス混合指数及びFowler2)の酸素一回呼吸法が窒素を指示ガスとする方法として最も広く用いられ,更に肺内窒素洗出曲線の分析による窒素洗い出し速度やSlow spaceの測定法がcournand3),Fowler4)及びRobertson5)らによつて報告されている6)〜11)。一方ヘリウムを指示ガスとする方法としては1949年Meneely及びKaltrieden12)が定量式閉鎖回路法を用いてヘリウム平衡時間を,1950年Bates及びChristie13)はMixing efficiencyを,1952年Briscoe14)はSlow spaceの測定を行い,更に1954年にはBlair及びHickam15)は閉鎖回路法を用いてSlow spa—ceの測定を行い,夫々肺気腫において著明な変化を認めたと報告している。1957年Meneely17)は機能的残気量測定方法として従来の定量式閉鎖回路法を改良して,予め7〜10分間患者が呼吸消費出来る酸素を附加しこの間に肺—レスピロメーター回路中の酸素,ヘリウムの混合,平衡を図る変量式閉鎖回路法を発表した。

  • 文献概要を表示

I.緒言

 冠疾患の問題といえば,先ず冠硬化の成因を第一に挙げねばなるまい。その成因は依然として解決を見ず,大勢はなお高コレステロール血症に中心をおいていることは否むことが出来ない。欧米人にとつては殊にその食生活に欠陥があるか,或は遺伝病・地域環境的・社会経緕的の問題であるかの解決に迫られ,人種的差は特に興味を持つて語られている。ケープタウンにおいて白人・ケープタウン黒人・Bantu族の順序に,収入程度に一致して,食事中脂肪摂取率・血清中総コレステロール値,β—リポプロテイン値平均が高いこと1),アメリカの白人の方が黒人より冠疾患・高コレステロール血症が多いこと2),米人・ハワイの日本人・九州の日本人の順序に同様の傾向が見られること19)などが,くり返し語られるのを見ても,米人にとつては想像以上に日常生活に緊密な問題として感じられていることが察せられる。しかし日本においては一年に一,二体しか心筋硬塞の剖検例がないなどという説が流布されると,話が旨すぎて,日本全国の正確・詳細なデーターが提供されなければならないと思うし,日本人・黒人・Bantuの食事中脂肪摂取率の低いことが,何か貧困という因子とともに米人の印象に入るようなのを見ると,余りよい気持がしない。会う人ごとに日本人のは美味な米飯から由来した特別な食生活であることをいわねばならないような気がする。

  • 文献概要を表示

 新生児の大葉性emphysemaは稀だが重篤な呼吸困難を招くものである。その部が大きくなつて正常部を圧迫するので,本症が疑われたら早く手術する方がよい。多くはその葉に入る気管支の軟骨に欠損・形成不全・萎縮・位置異常・軟化などがあるので空気が自由に入り過ぎその葉の気腫を形成するのであろう。あるいは終末気管支の減形成で空気が入つて出にくいという場合もある。その粘膜が皺襞となつて弁の働きをする。開胸すると,罹患部がヘルニア状にとび出して来る。触れると気管支が異常に軟い。肺組織はgelfoamのようである。気管支には狭窄はなく,ふつう炎症もない。肺胞は拡張し隔壁菲薄,破裂,融合し,血管は小であるが動脈壁変性はない。ふつう大葉性で中葉に多い。区域性emphysemaは稀。全葉emphysemaも稀。下葉には少い。先天的心疾患,縦隔欠損,漏斗胸など奇形を伴うこと稀ならず。本症の75%は呼吸障害を訴え,喘鳴・セキ・チアノーゼ等が原因なしに生ずるので,新生児では本症を疑うことができる。しかしそれほど高度にならず,中等度の呼吸障害のまま小児期を過しうるものもある。診断は原因のない,新生児呼吸障害,レ線像。自然気胸・気管支狭窄・肺無形成などとは気管支造影で鑑別。治療は罹患部の切除。窄刺は危険である。新生児・幼児でも手術予後は良い。文献42例に2例の手術死あるのみ。

  • 文献概要を表示

I.はじめに

 CO2の問題はすでに2回にわたつて内科方面から論ぜられたので,今回は麻酔の立場からこれを論じてみることにする。

 麻酔中には麻酔剤によつて呼吸が抑制されるほかに,呼気中の炭酸ガスを再び吸入することも稀ではない。しかも我々が麻酔をするときは一般に酸素を豊富にあたえることが多いので,患者の顔色や血の色は案外よく,安心していると知らず知らずの間にCO2蓄積状態になつているということが多く,この意味で麻酔とCO2の問題は非常に関心を持たれているものの一つであり,この方面に関する研究もおびただしい数に及んでいる。

  • 文献概要を表示

I.まえがき

 筆者は昭和18年以来名古屋大学医学部高木健太郎教授等と共に干渉屈折計を医学方面に応用する事を試みて来たが,その結果,特に吸入麻酔剤の濃度測定に用いて臨床上非常に便利な事が明かとなり,これについては既に関係の諸氏から報告されている1)

 筆者等の使用した干渉屈折計2)は土井式屈折計を改造したもので,麻酔剤と酸素との光の屈折率差が麻酔剤の濃度に比例している事を応用して,この屈折率差を干渉屈折計によつて精密測定し,これから麻酔剤の濃度を知る方法である。

  • 文献概要を表示

 山田(拍手)これから開会いたします。この度この札幌市に内科学会,循環器病学会が開かれるようになりましたので,それに非常に関係の深い呼吸と循環談話会を開催いたすことになつて,御案内申し上げましたところ,道内はもとよりでありますが東北,東京,大阪,遠くは九州の方からまでも実に20題という多数の演題のお申し込みがございまして,われわれ主催者としては非常に盛会でありますことを喜んでおるのでございます。1人1題に10分ずつ位ということになりますので,どうも談話会の性質としては,あまり時間が短かすぎて制約が強すぎるように思うものでございますが,お話しになる方も御質問,御討議される方も要領よく重点的に,なるべく簡単で要領を得たようなお話にして下さいます様,御協力をお願いいたします(拍手)。

 それではどうぞ。

  • 文献概要を表示

I.緒言

 ジフテリーは小児心電図にしばしば所見を呈する疾患であり,H. Cookson2)によると,その所見が変動し易いと云う。著者らは,咽頭ジフテリーに罹患した5才の女児につき,心電図所見が時日を追つて次々と変化した稀な症例を経験したので,ここに報告する。

 本症例は,心電図所見の時間的経過に伴なう変動がめざましかつたのでなく,その所見も,同一誘導内にみられた左右交代性脚ブロツク型の出現後天性とおもわれるW. P. W. 型心電図の出現,一過性W. P. W. 型の心電図の出現など興味ある所見を呈した。

基本情報

04523458.9.11.jpg
呼吸と循環
9巻11号 (1961年11月)
電子版ISSN:1882-1200 印刷版ISSN:0452-3458 医学書院

文献閲覧数ランキング(
3月16日~3月22日
)