Japanese
English
綜説
冠疾患における冠血管の分布と変貌
The distribution and its change of the coronary blood vessel in coronary disease
佐野 豊美
1,2
Sano, Toyomi
1,2
1東京医科歯科大学島本内科
1Medical and Dental University
2Lecturer on Medicine, Harvard Medical School.
pp.769-775
発行日 1961年11月15日
Published Date 1961/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201035
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I.緒言
冠疾患の問題といえば,先ず冠硬化の成因を第一に挙げねばなるまい。その成因は依然として解決を見ず,大勢はなお高コレステロール血症に中心をおいていることは否むことが出来ない。欧米人にとつては殊にその食生活に欠陥があるか,或は遺伝病・地域環境的・社会経緕的の問題であるかの解決に迫られ,人種的差は特に興味を持つて語られている。ケープタウンにおいて白人・ケープタウン黒人・Bantu族の順序に,収入程度に一致して,食事中脂肪摂取率・血清中総コレステロール値,β—リポプロテイン値平均が高いこと1),アメリカの白人の方が黒人より冠疾患・高コレステロール血症が多いこと2),米人・ハワイの日本人・九州の日本人の順序に同様の傾向が見られること19)などが,くり返し語られるのを見ても,米人にとつては想像以上に日常生活に緊密な問題として感じられていることが察せられる。しかし日本においては一年に一,二体しか心筋硬塞の剖検例がないなどという説が流布されると,話が旨すぎて,日本全国の正確・詳細なデーターが提供されなければならないと思うし,日本人・黒人・Bantuの食事中脂肪摂取率の低いことが,何か貧困という因子とともに米人の印象に入るようなのを見ると,余りよい気持がしない。会う人ごとに日本人のは美味な米飯から由来した特別な食生活であることをいわねばならないような気がする。
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