呼吸と循環 6巻6号 (1958年6月)

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 昨年の秋,胸部外科学会に出席のため,DüsseldorfのProf, Dr, Derraが来日された。同教授は,西独に於ける近代胸部外科の大家であり,同地を訪れる多数の日本人学者とは御馴染の深い方である。同教授の胸部外科学会に於ける講演はErfahrungen mit der offenen Korrek—turoperation des Vorhofseptumdefektes und der valvularen Pulmonalstenose in Hypo—thermieであつた。これは学会での儀礼的講演であつたが,学会終了後東京に於て有志の人達との懇談会が開かれ,この問題をゆつくり聞くことが出来た。この問題は現今の日本に於ては特に目新しい課題ではなかつたが,その中で特に感じさせられた一つの事がある。それは,心房中隔欠損症の病理形態学的分類を提示されたことである。

 一つの疾病を治療するに当つては,その病理解剖と病態生理を究めての上で為されなければならないことは,明白な事柄で,今更書き立てる必要もないことであるが,近年の呼吸循環の問題は,病態生理学的研究に偏し過ぎ,形態学を軽視する傾向がありはしないだろうか。一般的に言つて,形態学的方面の研究は,従来のような方式では,確かに行詰つた感じである。

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まえがき

 心臓の特殊筋系と呼ばれるものは,洞結節,田原氏結節,His氏束,左右の索枝とその分枝並びにPurkinje線維等で,心房及び心室の作業筋(個有筋)に対立せしめられた名称である。特殊と呼ぶ所似はこれらを構成する線維は心房,心室の個有筋と比べて組織学的にも,機能的にも特徴を持つているからである(Lewis 1925, Mönckeberg 1926, Benninghoff 1930, Scherf and Boyd 1952)。

 特殊筋系の機能は総括して(1)自働興奮性と(2)洞房乃至は房室興奮伝導となすことができる。それに応じて特殊筋系細胞の機能的特性が認められる。以下主として哺乳動物に於けるその機能的特性を電気生理学的な面から概観して見度い。但し余白の事情で特殊筋細胞の電気的活動のみを述べて,その電気興奮性(電気刺激の閾値,形質膜の電気的特性等)については割愛する。

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1.はじめに

 前回までにair trapping,分時最大換気量,および時間肺活量の肺生理学的意義,評価などについて述べてきた。スパイログラムより得られる知見としてはこれら3因子はそのごく一部にすぎず,肺活量をはじめとして残された問題は少なくない。しかしながらあたえられた紙面に限りがあるので,今回は一応しめくくりとしてスパイログラムによる換気機能障害の診断についてのべてみたい。

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 動脈血酸素飽和度は肺呼吸機能の動脈血に現われた直接の結果であり,心肺の循環,呼吸機能を知る第1の門戸である。近来心肺機能検査法が極めて精細となり,同時に胸部外科技術がめざましく進歩して,病態を精しく知るに必要な検査法が専門的に分化し,今日かなり日常診療からへだたりつつあるかの如き感を与える。しかし,これら諸検査を正しく理解すれば,その重要な部分を占める動脈血の酸素含量乃至飽和度をみることが,それだけで概略ではあるが,いかに心肺疾患の病態を判定し,経過,予後の判断に資しうるかが判る筈である。これについて述べ,臨床における診療の指針に役立てうる点について述べようと思う。

 本論にはいるに先立ち,まず動脈血酸素飽和度低下が,臨床で最も身近な症状として,現われるチアノーゼについて述べる。

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はしがき

 われわれは数年来,セロファンチューブによる人工腎臓に数多くの改良を加え,ゲル状セロファンチューブ創作に始まる木本外科型並列完全閉鎖循環式人工腎臓を完成した。これに関してはすでに数回発表し,また臨床的応用も70例に達している。木本外科型人工腎臓の完成によつて,透析能率の改善,体外循環血液容量の縮小,その他欧米の諸装置に比して更に性能を向上せしめ得たものと考えていた。しかし,本装置もなお能率の向上,操作の簡易化その他の目的で,全面的に改良し得ることを知つた。これがDL—型(dog lungの意)人工腎臓である。

 すなわち,動物臓器の人体外における一時的な応用を企図し,われわれは正常犬の肺を人工腎臓装置の透析部分に応用するに至つたのである。このような構想に関して,われわれはすでに昭和30年来実験を続けて来たもので,透析効果はほぼ満足すべきものであることを知りながら,たとえ一時的にもせよ,異種動物臓器の中を人体の血液で潅流することに対して危惧の念にかられ,その臨床的価値を認め得ぬままになつていた。たまたま1956年Campbellらがイヌの肺を人工心肺の酸素化装置として心臓手術時に用い,生体に全く無害であると云う報告に接し,われわれもはじめてイヌの肺を用いた人工透析装置(DL—型人工腎臓)の臨床的応用を試み,その価値を充分に認め得たのである。

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水銀利尿剤の今昔

 斎藤 まず浮腫の水銀利尿剤,毒性度の非常に少なくなつた水銀利尿剤を中心問題にいたしまして,その浮腫の方は,どうしても腎性浮腫よりも心性浮腫の方が問題が多いと思います。それで,大きい先生方に水銀利尿剤の適応指示,適用のこと,ご経験なりご感想なりを伺い度く存じます。

 要は,水銀利尿剤の使い方がこの一般医家とかまたはそういうような水準にある方の啓蒙的のことにございましよう。

原著

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1.緒論

 肥満者が「息切れ」を訴えることは臨床医のしばしば経験する事実であるが,その愁訴を招来する生理学的機序に関しては未だ十分な解析がなされてはいない。

 著者らは慶応義塾大学病院における短期入院特別健康診断,すなわち「人間ドック」の諸検査の一部として肺機能検査を行つてきた。人間ドックにおける被検対象は41才以上のいわゆる中・高年者が多く,また肥満を伴う症例が少なくない。かかる症例の肺機能検査成績に基いてその肺機能障害を診断し,レ線所見などと対照しつつ肺機能障害を来たした原因を検討してみると従来肺機能障害因子としてとりあげられていた気腫化,線維化,胸膜胼胝形成,無気肺化,あるいは気管支拡張などの病変によるものとしては説明し得ない場合が少なくない。例えばかなり高度の拘束性障害が認められるにも拘わらずレ線上胸胼膜腓胝はみられず,胸廓の変形も必ずしも高度とはいい難い場合がしばしばある。このような場合には一次的な肺・胸廓の病変ではなく,他のなんらかの原因により二次的に肺機能障害を来たしたものと考えざるを得ない。

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緒言

 薬物の呼吸促進効果について研究した結果換気波の変化から見るとそれぞれの薬物は中枢に対して侵襲点を異にしていることを指摘したが今回はいわゆる"呼吸抑制"ということを吟味したので報告する。従来この種の学術用語は考え様によつてはいかにも概念的なものでいろいろな立場で多少違つた見解に立つて言われている様に思われる。そこでわれわれは麻酔学の立場から呼吸抑制効果を換気波の変化を基礎にして見た場合どの様に理解してよいか実験的に追求したのでその結果について述べて見たいと思う。

 肺の機能は胸腔陰圧の存在なしには自律性もなくまた呼吸中枢の血流なしには本来の機能である換気運動が起らないのであつて肺を取出して実験はできない。しかし実験的には他の生理単の研究では八木式潅流装置,単一神経筋線維装置など有名な装置が工夫されているのであるから肺の場合もこれに対応する様な装置は出来ると考えたのである。薬物を用いて呼吸促進効果を見るには除脳と迷走神経切断を行つただけで十分であるが抑制効果の場合は換気を左右する中枢の働きすなわち脳性と換気に関与する筋群の働きすなわち筋性のものとを区別して観察せねばならない訳である。そこでわれわれは次の様な方法によつて犬の肺心装置を作つたのである。

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 大動脈弁閉鎖不全を有する患者において胸部大動脈内にEvans blueを注入し,その色素の動向を追究することによつて,心拡張期に際しての逆流血量を推測せんとする方法を案出し,8頭の犬について人為的大動脈弁閉鎖不全を作製する前後に実験を行い,また大動脈弁閉鎖不全を有する患者32例,それを有しない患者17例についても同様の観察を試みた。実際の操作は右側大腿動脈から挿入せるカテーテルを通じて大動脈の左側鎖骨下動脈起始部において第1回の色素注入を行う。色素注入には電気的装置を作用し,心電図R波出現後一定時間(0.4秒が最適)を経て心拡張期に相当して0.15〜0.62のEvans blueを急速に注入する。色素注入が心拡張期に一致して左側鎖下動脈起始部においてなされた場合,大動脈弁閉鎖不全の存する例では注入された色素の全量が一旦この部分から心臓に向かつて逆流せる後,次の収縮期に末梢血管へ送られることとなるので,同濃度の色素を含む血液が左側橈骨動脈及び左側大腿動脈を通過することとなる。そこでこの両末梢血管を通過する血液の色素濃度——時間曲線を別々に作製してみると,その曲線によって囲まれる面積は何れも略々等しく,比率Rは約1.0となる。

基本情報

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呼吸と循環
6巻6号 (1958年6月)
電子版ISSN:1882-1200 印刷版ISSN:0452-3458 医学書院

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