巻頭言
形態学的研究が軽視されている傾向はないか
篠井 金吾
1
1東京医科大学
pp.443
発行日 1958年6月15日
Published Date 1958/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200636
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昨年の秋,胸部外科学会に出席のため,DüsseldorfのProf, Dr, Derraが来日された。同教授は,西独に於ける近代胸部外科の大家であり,同地を訪れる多数の日本人学者とは御馴染の深い方である。同教授の胸部外科学会に於ける講演はErfahrungen mit der offenen Korrek—turoperation des Vorhofseptumdefektes und der valvularen Pulmonalstenose in Hypo—thermieであつた。これは学会での儀礼的講演であつたが,学会終了後東京に於て有志の人達との懇談会が開かれ,この問題をゆつくり聞くことが出来た。この問題は現今の日本に於ては特に目新しい課題ではなかつたが,その中で特に感じさせられた一つの事がある。それは,心房中隔欠損症の病理形態学的分類を提示されたことである。
一つの疾病を治療するに当つては,その病理解剖と病態生理を究めての上で為されなければならないことは,明白な事柄で,今更書き立てる必要もないことであるが,近年の呼吸循環の問題は,病態生理学的研究に偏し過ぎ,形態学を軽視する傾向がありはしないだろうか。一般的に言つて,形態学的方面の研究は,従来のような方式では,確かに行詰つた感じである。
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