呼吸と循環 3巻7号 (1955年7月)

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 斎藤 今年の循環器病学会の演説会の検討をしようと思いますが,ありきたりの印象記という風なものでなしに皆様は專門の方ですから,エキスパートから見た印象というようなことを非常に期待いたします。一つの業績についてお話頂いても結構ですし,同傾向の業績をまとめてお話いただいても結構です。一番終りにお願いし度いことがあります。それは循環器病学会の平会員として又は傍聴者として今年の演説会に対する率直な御意見をまとめて頂きたいと思います。

 それでは演説会の方の第1日,談話会の第2日目にECG関係のものがありますが,木村先生に御感想をお話頂きたいと思います。

巻頭言

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 今年の5月の所謂Golden-weekは雨ばかり降つた。どうも何時でも休日と云うと雨が降る様である。この命題は然し誤りである。我々は雨に降られて困つた日曜日の経験だけを覚えて居るからである。春は気候が変り易いから雨の降る日が多い。従つてそれが丁度休日とぶつかる確率も多いからに過ぎない。

 同じ様な事は世間で良く云われる「今日はムシムシと暖いから地震がありそうだ」と云う命題にもあてはまる。「いやそれは確かである。私の50年来の経験でも確かにそうだ。」と云う人も暖い日に起つたいくつかの経験だけを覚えているからである。気象台の調査に依ると地震と気圧とには少しばかり相関はある様な数字になるが,気温との間にはない。強いて云えば少しばかりの逆相関があるにしても。

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 高血圧の手術療法,特に本態性高血圧の手術療法の概要に就ては,最近5月号の綜合医学に於て述べたので,本誌に於ては,主として手術の呼吸及び循環器系に及ぼす影響に就て述べ,同時に従来批判の的となつている手術療法の合理性に対する我々の見解を述べて見たいと思う。

 本態性高血圧に対して交感神経切除術が提唱されてから約20年を経過し,その間,欧米に於ては既に数千人の患者が手術され,一方に於ては多くの優秀なる遠隔成績が発表されているかと思えば,他方,手術の非合理性が非難され,或は今尚,実験的段階の治療法であるとなし,その治療効果も猜疑の目を以て見られていることは否定出来ない。従つて,我国に於けるこの面の研究は皆無に等しく,我々が本研究に着手せんとした当初は,不案内のため手術に際して不安の念を禁ずることが出来なかつたが,現今,約40名の患者を手術し,一年以上の経過も観察し,一応その治療効果も確認し得たので,次に記述する次第である。

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いとぐち

 Emphysematous Bullae and Blebs (E. B. と略記す)は,後述する様に多くは肺気腫に合併し後天的に肺気腫と同様の機転で,肺胞壁の変性,破壊,更に肺胞腔が融合拡大して出来た気嚢腫(air cyst)である。此の様なE. B. は米国に於ては,胸部「レ」線撮影を,日常臨床に用いられる様になつてから,ありふれた疾患とされており9)3),又日本に於ても小さなE. B. は,屍体解剖の折に屡々見られ,珍らしいものではない。併し日本に於ては,E. B. は,臨床家の関心をひく事なく放置されていた。米国に於ては,かなり古くから,次の点より臨床家の関心を集めた。第一に,E. B. は破れて自然気胸9)18)21)殊に緊張性気胸を来たし,生命をおびやかす事がある。第二には,E. B. が急激に,或は徐々に膨大して肺を圧迫し,呼吸困難を来たす27)。第三は,他の先天性の嚢腫性疾患(Cystic Disease)或は後天性の結核性,或は肺膿瘍の遺残性空洞等23)24)更に自然気胸14)との鑑別上から問題とされた。

 我々は昭和28年に結核の肺葉切除時に,小さなE. B. を発見したが,その後高度の自然気胸例で,開胸手術に依って,鳩卵大のE. B. の破裂によるものを確め16),E. B. に対する関心を深めた。その後に11例の色々な型のE. B. を経験した28)

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 伝染病,ウイールス疾患,膠原病.血清や藥品に対する特異反応,急性腎炎などでしばしば心筋炎を伴うことが最近明らかになつてきた。又リウマチ性心筋疾患では弁膜障害より急性・慢性の心筋炎の方が症状や予後に主役をつとめる。

 心筋炎のバリストカルジオグラム(BCG)は左房拡張期圧上昇,肺動脈圧上昇即ち右室の駆出に対する抵抗増加による不完全な駆出に依存し,軽度のものは,I-J減少と呼吸性変動の増加,中等度では,H乃至Lが高くIが小さくなる。高度で心不全となつてくると高いH,小さいL,高いNを示す。拡張期の波は横軸BCGによく示される。しかしBCGは心筋の機能障害を示すものであるから,機能に余裕ある18歳以下の場合異常が出にくいことがある。又軽い運動負荷試験と,経過を追つて何回もとることも必要となる。

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(Ⅴ)腎臓の血管系

 腎臟の血管の状態が「腎臟の血流」に大きな影響を与えることは云うまでもない。

 Bowman以来腎臟の血管構造は多くの学者によつて研究され,その複雑さは他の臟器に比較しても類を見ない程であり,今日なお不明の点も少くないが,一般には次に述べるような構造を有するものと考えられていた。即ち腎動脈は腎門に入つた後,腹側及び背側の動脈に分岐し,次いで葉間動脈,弓状動脈,小葉間動脈と順次細分し,この小葉間動脈より多数の短い小枝即ち輸入管が出て糸球体に注ぐ。糸球体毛細管網は吻合を作らずに再び集つて輸出管となり,輸出管は始めて皮質の毛細管に細分し,中枢側並びに末梢側尿細管の周囲に網眼を形成し,これが小葉間静脈に移行する。又髄質へは真直ぐなVasa rectaが皮質の毛細管,弓状動脈,小葉間動脈,輸出管などより発して細分し,網眼を形成した後に静脈側に移行する。

鑛質代謝・1 吉利 和
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まえがき

 鉱質代謝という名称は,主として無機物質の生体内での変動あるいは生物学的作用という意味で用いられているようで,たとえばCantarow and Schepartzの教科書1)などを見るとナトリウム,カリウム,クロール,硫黄,ヨード,マグネシウム,カルシウム,燐,鉄などについて記載されている。さいきんはしかし,とくにアメリカではミネラルという名称を何か独特な意味をもたせて使用する傾向もあり,とくに栄養学上の問題から,微量の無機物質の存在が,生体の生存上絶対に必要だということが強調されている。その中には上にあげたもののほかに,銅,マンガン,亜鉛,コバルト,ニツケル,硼素,ブローム,珪素,バナジウム,アルミニウム,ストロンチウム,弗素,セレニウム等が含まれているので,これらすべての代謝をのべることが鉱質代謝になるわけである。しかし,これらのうちには,必須かどうかもまだはつぎりしないものもあり,また体内での分布なり代謝なりは全然わかつていないものが多いし,栄養上わかつていても,代謝のわからないものもある。さらに著者の専門とするところも,ごく狭くて,これらすべてにわたる知識を持ち合せていない。

診療指針

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 吾々の耳は非常に良好な性能を持つており,単に聴診器のみを以つてしても,よく心臟の病状を把握し,予後を洞察し得ることは,経験ある臨床家により,屡々指摘される処である。

 しかし乍ら,こうした妙味も,聴覚を更に視覚と共に確実なものとし,絶えず耳の訓練を怠らぬ事が大切であり,従来心音の聴診は心雑音の辨別に限局せられていたきらいが少くないが,吾々はもつと広い意味で心音を理解する必要を感じる。貧血,脚気,急性腎炎,バセドウ氏病,急性熱性伝染病等のときの心音の変化と経過は,臨床医の特に心得ておらなければならない処である。又一方先天性心臟疾患時の特有な心音は,文字で表現出来ないことが屡々ある。こうした時に,心音の聴診と共に心音図を描写する事は大切なことである。殊に心臟外科手術や,肺切除術等の外科手術が心臟に及ぼす影響を考える時,ただ記憶にのみ止めた心音像ではなく,これをグラフとして記録する事は診療上甚だ有意義なことと考える。

方法と裝置

心肺標本の作り方 橋本 虎六
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 東京大学藥理学教室及び藥理研究所に於て心肺標本を犬で作つて実験を始めたのが1953年からである。専ら重井達朗君の努力で,Starlingの原著から学んで一切の装置を作りその後種々な改良法が報ぜられて居るので,適宜これを採用して一応心肺標本の作り方になれたのであるが,やつて見ると種々疑間の点が生じた。たまたま米国に遊学の機会を得たので,ハーバート大学医学部藥理学教室に出掛けKrayer教授の懇切なる指導を2週間受けた。記憶の薄れない内にメモから報告をまとめて,Krayer教授の30年に渉る秀れた心肺標本の作り方を紹介したいと思う。

 最初にKrayer教授及び業績を報ぜねばならない。Krayer教授は当年55歳,静な温厚な紳士で,敬愛すべき人格者である。ハーバード大学は言わば格の高い,米国と云う感じのしない古風な,そのかわり堅苦しい反面をもつた大学であるが,その壁をつきぬけて懐に入ると実に暖い人情に触れる事が出来る。Krayer教授もそう云つた雰囲気の中にピツタリする様な風格の先生である。Krayer教授の指導を半年受ける約束で米国に渉つたのであるが,先生の都合で近々欧州各国に半年に亙つて旅行をされる事になり,止むを得ず,先生の御都合を伺つた上で極く短期間の心肺標本作り方の指導を受ける事になつた。

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 Fallot氏四主徴症(Tetralogy of Fallot,以下Fallotと略記する)と診断手術を行つたものが,死後剖検に依り大血管転位症であることを確認し得た1例を経験した。Fallotに対する外科的療法は1945年Blalock-Tau—ssig1)を嚆矢とし,同氏法の他種々の方法による治験例は欧米本邦共に既に多数に及んでいる。本院の1例はBlalock氏法に基いて手術を行つた後死の転機をとり,摘出心について病理解剖学的,畸型学的検討を行つたものである。本例は既にRossi2)がTaussig-Bing及びMeitrannの2例を記載して居り,本邦に於ては三枝,和田3)両氏の本例と同一と見られる臨床報告例2例があるが,病理解剖学的診断によつて確証し得たのは本邦では本例が第1例と思われるので茲にその臨牀経過並びに病理所見と分類上の考察を発表する。

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緒 言

 心房中隔欠損に対しては,昨年の胸部外科に,阪大小沢教授がBijorkの方法を用いて成力した事を発表して居られるが我々は多眠麻酔を応用し,直視下に縫合する事に成功した。心血流を遮断して直視下に手術に成功したのは,昨年秋の我々の教室に於げる肺動脈狭窄手術成功例についで第2例であり,又我々と殆ど同時に,東大木本外科に於ても直視下心房中隔欠損手術例を得て居られる事は,心臓外科にとつてまことに喜ぶべき事である。

 以下症例につき簡単に報告する。

基本情報

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呼吸と循環
3巻7号 (1955年7月)
電子版ISSN:1882-1200 印刷版ISSN:0452-3458 医学書院

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