方法と裝置
心肺標本の作り方
橋本 虎六
1,2
1東京大学医学部藥理学教室
2コーネル大学医学部藥理学教室
pp.441-447
発行日 1955年7月15日
Published Date 1955/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200261
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東京大学藥理学教室及び藥理研究所に於て心肺標本を犬で作つて実験を始めたのが1953年からである。専ら重井達朗君の努力で,Starlingの原著から学んで一切の装置を作りその後種々な改良法が報ぜられて居るので,適宜これを採用して一応心肺標本の作り方になれたのであるが,やつて見ると種々疑間の点が生じた。たまたま米国に遊学の機会を得たので,ハーバート大学医学部藥理学教室に出掛けKrayer教授の懇切なる指導を2週間受けた。記憶の薄れない内にメモから報告をまとめて,Krayer教授の30年に渉る秀れた心肺標本の作り方を紹介したいと思う。
最初にKrayer教授及び業績を報ぜねばならない。Krayer教授は当年55歳,静な温厚な紳士で,敬愛すべき人格者である。ハーバード大学は言わば格の高い,米国と云う感じのしない古風な,そのかわり堅苦しい反面をもつた大学であるが,その壁をつきぬけて懐に入ると実に暖い人情に触れる事が出来る。Krayer教授もそう云つた雰囲気の中にピツタリする様な風格の先生である。Krayer教授の指導を半年受ける約束で米国に渉つたのであるが,先生の都合で近々欧州各国に半年に亙つて旅行をされる事になり,止むを得ず,先生の御都合を伺つた上で極く短期間の心肺標本作り方の指導を受ける事になつた。
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