呼吸と循環 12巻4号 (1964年4月)

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 近代医学が目進月歩の発展を遂げ,心臓循環器系の分野においては,心臓の手術,人工心肺装置,人工調律装置(artificial pacemaker)など新しい試みが成功し,これらの研究を行なつている病院では患者もその医学の恩恵に浴する事が出来るようになつてきた。診断の面においても然りで,昔は聴診器のみで,心臓弁膜症と診断されていた患者が,心電図,ベクトル心電図,レントゲン検査心音図,血管造影,色素稀釈曲線,心臓カテーテル法などの精密検査によつて,機能的雑音の持主であることが判明したり,又雑音は著明でなくとも高度の弁膜症がある事が判つて手術により軽快することもあるのである。しかしこれらの特殊検査は専門的に研究と熟錬とを要することである。

 また,循環器領域における薬物療法の中で,トランキラキサントの使用はしばしば有効なことがある。これは最初筋弛緩剤として強力に作用する新しい薬剤として1958年に登場したものであるがその上メプロバメートと同様の精神安定作用をもつている。その薬理作用は大脳皮質下部および脊髄のポリシナップスをブロックして筋肉の異常緊張を解く中枢性の筋弛緩作用と考えられている。又大脳皮質を含む高位中枢に作用し,中枢性の鎮静作用をもつていることが特徴である。

綜説

Air Trappingについて 仲田 祐
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 先ずAir trappingなる言葉は主にRespiro—meterを使用して論ぜられているのでこれについて論じ,しかる後に実験的にAir trappingを起させ,これについて私見を述べてみたいと思う。

診療指針

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はじめに

 慢性肺気腫の病理学的所見は1)〜11),1)肺胞の過膨脹と破壊,融合,2)小気管支の狭窄,3)肺弾力線維の消失と断裂に集約され,それに伴う肺機能障害1)〜63)としては,1)気道の閉塞性障害,特に呼気閉塞機構11)〜21),2)肺の弾性低下19)〜21),3)肺の過膨張18)20)22),4)時定数の分布異常20)〜24),5)拡散能力障害25)〜29),6)肺胞気—肺毛細血管関係の不均一分布,及びこれらによる肺胞低換気とhypoxemia,asphyxemia(hypo—xemia+hypercapnia),呼吸性acidosisの発生20)30)〜32),7)肺循環障害,即ち肺動脈圧の上昇,肺血管抵抗の増大,右心不全32)〜41),8)呼吸右中枢のCO2感受性低下42)43)などが挙げられる。

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 鬱血性心不全患者では体重が減少するが,その有力な因子は腸管におけるmalabsorptionであろう。Hokkila(1960),Jones(1961)はすでにI131 trioleinを用いて本症における脂肪のmalabsorptionを報告している。さて著者らは右心不全,末梢浮腫のある25例(リウマチ性10,冠動脈硬化性8,本態性高血圧7)について,I131—triolein (25μc)を落花生油にうかべ1cc/kgをあたえ,血液比放射能,および48時間糞便内の比放射能をしらべた。正常人25例の血液radioactivity平均11.2%,本症25例平均6.7%で,有意に低い。48時間の糞便内radio—activity平均は正常人3.2%,本症10.7%で,これは明かに高い。(P=<0.01)。糞に失われる量が大で,血中に低いのは,鬱血性心不全の程度に応ずるようである。重症時でmalabsorptionも重症である。さらにI131— oleic acidを用いて5例で再吟味するに,I131—trioleinと全く同様の結果がえられた。chlorothi—azideで利尿をつけ,lipaseで脂肪消化をたすけると,malabsorptionの改善がみられた例がある。また回腸生検でその組織像をみると,本症におけるmalabsorptionでは,粘膜の鬱血・浮腫がみられる。

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I.有線方式と無線方式

 ある対象についての情報を,遠隔地点で計測するTe—lemeteringは,近年の電子工学の進歩により,工業方面の自動制御に広く利用されるようになつて来た。医学の面においても,宇宙ロケット塔乗員の身体機能の状態を監視する目的に使用されていることは,広く知られている。

 我が国においても,この医学的応用は,スポーツ医学の面で,たとえば,疾走,跳躍,水泳などのスポーツを自由に行なつている際の心電図記録が,無線搬送によるテレメーターで行なわれている。

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挨拶(中村隆)

 皆様に多数御出席していただいて,呼吸と循環談話会を只今から開かせて頂きます。明から,また連日のご勉強でお疲れだと思いますが,どうかお互いに心の通う,心あたたまるようなお話合をなさつて,一つ仙台ならまたきてみようかというようなお気持になれるように,今宵を学問的にあたたかくお過ごしいただきたいと存じます。都合によりまして笹本先生に進行をお願いします。

 司会(笹本)それでは中村会長の御指名によりまして私がかわつて司会をさせていただきます。特に演説時間はきめてないようでございますが,適当にお願いしてどちらかといえばあとの話合に,いつものように重点をおいていただきたい。毎回申し上げることですけれども,学会ではございませんので,どうか気軽な気持で失敗談ででも何もぶちまけて話合つていただきたいと考えております。(印は演者)

ジュニアコース

一酸化炭素肺拡散能力 沼田 克雄
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I.肺拡散能力の概念

 呼吸器としての肺の基本的な機能すなわちガス交換は肺胞毛細管膜を隔てて肺胞気と肺毛細管血が相接触し,その間をガスが物理的な拡散現象で移動することで行なわれると一般には考えられている。従つて,ある患者で換気機能そのものがそれほど侵されていなくても,拡散過程がうまく行なわれないような病的状態がもし存在するならば,その症状として,dyspneaやanoxemiaなどがおこり得るであろう。このような場合,拡散のrateを量的に測定することが出来れば,診断学的にも病理学的にも大変重要でかつ興味あることとなる。

 物理学上,物質の輸送現象の一つとして,流体の濃度が場所によつて異なり,濃度勾配が出来ている時,濃度の高い所から低い所へその物質が移動してゆく現象を拡散と呼んでいる。この時,濃度勾配の方向にX軸をとりこれに垂直な平面のA cm2を通してdt時間に移動する物質の量をdM,濃度差をCとすれば,の関係がある。すなわち,単位時間に単位面積を横切つて移動(拡散)する物質の量は,その濃度勾配∂c/∂xに比例する。これが所謂Fickの法則であり,δは拡散恒数diffusion constantと呼ばれるものである。今,肺胞毛細管膜を通してのガス交換にこの法則を適用すると次の式が考えられる。

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I.はじめに

 Fluothaneが低血圧を起すことは1956年Ra—ventós1)33)及びJohnstone2)によつてそれぞれ動物実験及び臨床上でのFluothaneの紹介と同時に既に発表されており,その原因については以後無数の報告がある。低血圧はおよそFluothane濃度に平行するが3)9)11)14)19)20),必ずしも濃度とは一致しない4)5)6)7)8)10)

 一方,Fluothaneは組織の酸素消費量3)7)17)35)48)や,心筋の酸素消費量をその仕事量に比例して減じ12),抗ショック作用も想像され得るから21)27),その低血圧が生体に及ぼす影響30)は案外少いかも知れない35)。しかしまた,Nunn15)は酸素消費量の減少は睡眠時と大差ないと反対しているし,Freeman18)は脱血犬でEtherと差がない生存率を報じている。

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I.緒言

 じん肺症においては,病像とその程度が複雑でその為招来される肺機能の損失も種々である。ここに肺機能の評価に際して肺の換気面のみの検査では不充分で,肺内ガス混合更に肺拡散能力等も測定される必要があると考えられる。

 昭和35年に制定されたじん肺法に基づく心肺機能検査も1),この点についてかなりの考慮がはらわれている。しかし,実際上の問題として肺内ガス混合及び肺拡散能力を測定することは,一般的に言つてかなり困難なので,運動負荷法によつてこの欠点が補われるように意図されているわけである。またこの外,主治医の意見や患者の自覚症状が重要視されているのもこの為と考えられる。

基本情報

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呼吸と循環
12巻4号 (1964年4月)
電子版ISSN:1882-1200 印刷版ISSN:0452-3458 医学書院

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