Japanese
English
ジュニアコース
一酸化炭素肺拡散能力
Pulmonary Diffusing Capacity for Carbon Monooxide.
沼田 克雄
1
Katsuo Numata
1
1東京大学医学部麻酔科
1Dept. of Anesthesiology, Faculty of Medicine, University of Tokyo.
pp.281-286
発行日 1964年4月15日
Published Date 1964/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201312
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.肺拡散能力の概念
呼吸器としての肺の基本的な機能すなわちガス交換は肺胞毛細管膜を隔てて肺胞気と肺毛細管血が相接触し,その間をガスが物理的な拡散現象で移動することで行なわれると一般には考えられている。従つて,ある患者で換気機能そのものがそれほど侵されていなくても,拡散過程がうまく行なわれないような病的状態がもし存在するならば,その症状として,dyspneaやanoxemiaなどがおこり得るであろう。このような場合,拡散のrateを量的に測定することが出来れば,診断学的にも病理学的にも大変重要でかつ興味あることとなる。
物理学上,物質の輸送現象の一つとして,流体の濃度が場所によつて異なり,濃度勾配が出来ている時,濃度の高い所から低い所へその物質が移動してゆく現象を拡散と呼んでいる。この時,濃度勾配の方向にX軸をとりこれに垂直な平面のA cm2を通してdt時間に移動する物質の量をdM,濃度差をCとすれば,の関係がある。すなわち,単位時間に単位面積を横切つて移動(拡散)する物質の量は,その濃度勾配∂c/∂xに比例する。これが所謂Fickの法則であり,δは拡散恒数diffusion constantと呼ばれるものである。今,肺胞毛細管膜を通してのガス交換にこの法則を適用すると次の式が考えられる。
Copyright © 1964, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.