巻頭言
循環器領域におけるトランキラキサント
三輪 清三
1
1千葉大学医学部内科
pp.227
発行日 1964年4月15日
Published Date 1964/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201306
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近代医学が目進月歩の発展を遂げ,心臓循環器系の分野においては,心臓の手術,人工心肺装置,人工調律装置(artificial pacemaker)など新しい試みが成功し,これらの研究を行なつている病院では患者もその医学の恩恵に浴する事が出来るようになつてきた。診断の面においても然りで,昔は聴診器のみで,心臓弁膜症と診断されていた患者が,心電図,ベクトル心電図,レントゲン検査心音図,血管造影,色素稀釈曲線,心臓カテーテル法などの精密検査によつて,機能的雑音の持主であることが判明したり,又雑音は著明でなくとも高度の弁膜症がある事が判つて手術により軽快することもあるのである。しかしこれらの特殊検査は専門的に研究と熟錬とを要することである。
また,循環器領域における薬物療法の中で,トランキラキサントの使用はしばしば有効なことがある。これは最初筋弛緩剤として強力に作用する新しい薬剤として1958年に登場したものであるがその上メプロバメートと同様の精神安定作用をもつている。その薬理作用は大脳皮質下部および脊髄のポリシナップスをブロックして筋肉の異常緊張を解く中枢性の筋弛緩作用と考えられている。又大脳皮質を含む高位中枢に作用し,中枢性の鎮静作用をもつていることが特徴である。
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