呼吸と循環 10巻3号 (1962年3月)

巻頭言

心臓腔X線造影の4半世紀 玉木 正男
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 ヨード含有造影剤の水溶液を静注して右心腔経由で肺血管を造影した報告はすでに1920年代からみられるが,人生体心臓について各房室の造影を始めて報告したのはキューバのハバナ大学Caste—llanos一派とニューヨークのSteinberg,Robb両氏とである。

 すなわちCastellanosは1937年の秋にAngio—cardiografia radio-opacaという題目でスペイン語の報告を発表しているが,氏のfull-nameがAugustin Castellanos-Gonzalez であることからみても自分こそACGの元祖であると先年キューバを訪ねた筆者にユーモラスに語つていた。ただし氏はこれを小児に実施し,しかも,創始当時は右心腔とチアノーゼ型心奇型での大動脈の造影像を記載しているのみである。小児のみならず成人の各種疾患についてしかも右心腔はもちろん左心房,左心室,大動脈までの造影を始めて報告したのはSteinberg,Robb両氏(1938年)であるが,Castellanosのグループの用いた35%Urose—lectan B 35%Perabrodilにくらべてはるかに高濃度(70%)のDiodrast(Perabrodilと同じ物質)を始めて入手でき,これを急速に静注したことが成功のかぎであつたと思われる。

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 心手術の効果は保存療法と長期にわたつて比較してはじめてその真価がわかる。しかしこうした比較は文献にもきわめて数少い。著者はRo—yal Victorial Hosp.の僧帽弁切開626例(うち妊娠合併28例を除く)を,保存療法諸報告と比較した。手術症例の77%は婦人,平均年令33.8才。手術はfinger fracture 61%であるが,その不成功例にはvalvoto—me 31%,transventricular dilator(8%)を用いた。手術死4.2%。右室肥大を伴つた症例に死が多い。20才以下の症例では手術死ゼロ。2回以上手術を行つたもの7%。その死亡は6%である。若いものは一般に成績が良い。術前重症disabilityは十分には回復しないが,経過を追つてみるとGrade 1,2というのがだんだん減つてゆく。術前細動のあつたものの回復は,それのないものより良くない。ECGで右室肥大の徴のあつたものの62%は正常化し,肺逆流の73%に雑音が消えた。この成績は直ちに保存療法のそれと比較するわけに行かないが,Rowe(1960)の250保存療法例は性別・年令別が著者例によく一致したが,Grade 4がRowe症例には極めて少い。かりにGrade 2を比較すると,手術療法では6年後の生存率92%,Rowe 58%で著しい差である。

綜説

小児の肺機能について 石田 尚之
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I.緒言

 今までの呼吸生理学の進歩のあとをかえりみると,まず臨床的要請があつたことは勿論であろうが,戦後の測定器具の進歩により,第1に方法論が先行し,理論がそれにつづき,臨床的応用で実を結ぶという道程を通るの感が深かつた。即ち肺生理学の分野に於ては,今日の理論が明日への臨床へ直結しているの感を深くするものである。

 ところが小児に於ては,この肺生理学の出発点であつた方法論に於て,すでに被験者の協力を得られないという最大の難関があり,又器具を特別に小児用に作らねばならぬという面倒があり,それに何よりも臨床的要請という"後おし"が弱かつたということがある。そのため成人の肺機能検査に関する数多くの業蹟に較べ,小児の分野のみひとりとり残された感のあることは事実である。

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(II)人工心肺の臨床

 ここ数年来,人工心肺装置の臨床への応用によつて,多くの心臓疾患に対して直視下手術が可能となるとともに,その進歩によつてより安全により完全に病変の修復が行われるようになつて来た。即ち,多くの先天性心疾患に対して日常広く直視下手術が行われ,また後天性心疾患とくに弁膜症に対しても逐次直視下手術が行われつつある現状である。

 外科手術の対象となる多くの先天性,後天性疾患には,常温下もしくは低体温法のみによつて手術が可能なものがある反面,人工心肺を用いる方がより望ましいもの,もしくは人工心肺によらなければ手術が不可能なものもある。いま日常屡々遭遇する心疾患についてこれらの関係を示すと第1表の如くである。

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 心房中隔欠損症に対する外科的療法の端緒は1948年Murray1),Swan2)による所謂Closed methodによつて開かれ,次で1952年Gross3)は独自なAtrial wellを用いるSemi-open methodを考案した。1953年Lewis and Taufic4)及びSwan5)等は低体温法応用による血行遮断時間の延長を臨床的に採用して直視下閉鎖術に成功し,同年Gibbon等6)は自ら考案した人工心肺装置を用いて体外循環下の直視下閉鎖術端を開いた。

 本邦に於ては昭和29年9月,著者等7)がBjork-Cra—foordのPurse-string suture method8)によつて初めて本症の外科的閉鎖に成功して以来,尚一部にはClosed methodが用いられてはいるが,低体温法或は人工心肺装置使用による直視下手術が行われ欧米に劣らぬ成績を挙げている。

ジュニアコース

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I.まえがき

 呼吸を行なう主な目的は大気中からO2を摂取し,身体各部の細胞にO2を必量な量,かつ充分な圧力のもとに送り込み,一方新陳代謝によるガス体の最終産物であるCO2を体外に放出することである。而して運動時・発熱時など体内の代謝が旺盛となれば,換気量を増加してO2の要求に応じ,CO2の放出もまた増加する。安静時或は一定の運動を負荷しながら換気量を測定し,又呼気の分析を行つて摂取したO2の量,排出したCO2の量を知り,更に呼吸商を求め,その状態における必要とした熱量を計算することは古くから行なわれていた。

 他方最近の肺機能検査に当つては屡々呼気の分析が行なわれるに至つている。例えば呼吸死腔を求める際,Bohrの式を利用するならば動脈血のPco2と共に呼気のPco2を測定して計算する。又肺気量のうちスパイログラフィーによつて求めることの出来ない機能的残気量の測定の際,窒素洗い出し法(Nitrogen washout method)を用いるならば,洗い出されたN2量と7分後に肺胞に残つているN2濃度を求めなければならない。その他肺内ガス混合の測定,拡散能力の測定の際等にガス分析が実施されている。

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I.はしがき

 さきに著者等は,肺胞気圧の上昇により肺血管抵抗の増加がみられることを認め,これを既に報告1)した。陽圧呼吸により肺血管抵抗の増大がみられることは,ほぼ成績が一致しいるが,そのメカニズムになると,それが肺の膨脹の結果肺血管床の伸展,血管腔の狭小化を来し,その為血流に対する抵抗が増大したのか,或は肺胞気圧そのものが肺血管床に作用して,それを外から圧迫し,その為肺血管抵抗の増大をみたのか,意見は必ずしも一致していない。そこで肺のもう一つの血管 系である気管支血管についても同様な実験を試み,その血管抵抗がventilatory air pressureによりいかなる影響を受けるかを観察すると共に,その実験成績より肺血管抵抗増大のメカニズムについても,考察を加えてみたい。

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I.序論

 炎症性所見を伴わない心内膜の肥厚を特長とするendocardial fibroelastosisは,主として乳幼児に見られる。生前に診断されることが少く,そのほとんどが剖検によつて始めて確められる。本症は1818年,Kreysigによつて記述されたといわれて以来,数多くの報告がある。我国においても,昭和27年以来,金子・品田,吉村・永岡・福島・山本,松本・時見・香川,森・小西・川村・福原・山崎,石川・島海・朝倉,志方,柳川・大国,小松代・長岡,田中・高橋・小森・甘楽らが本症例を報告している。

 私は生後4日で死亡した女児で,僧帽弁と三尖弁の肥厚が特に著しいendocardial fibroelastosisの1例を剖検する機会を得たので報告する。

基本情報

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呼吸と循環
10巻3号 (1962年3月)
電子版ISSN:1882-1200 印刷版ISSN:0452-3458 医学書院

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