臨床婦人科産科 73巻2号 (2019年3月)

今月の臨床 NIPT新時代の幕開け―検査の実際と将来展望

NIPTの基礎

  • 文献概要を表示

●Non-Invasive Prenatal genetic Testing(NIPT)は,母体血漿中に存在する胎児に由来するcell-free DNA(cfDNA)を用いて行う出生前遺伝学的検査である.検査には限界があり,あくまでスクリーニング検査である.

●21トリソミー,18トリソミー,13トリソミーに加え,性染色体異常,micro deletion/duplication,単一遺伝子病のスクリーニングも技術的には可能となってきた.

●性染色体異常,micro deletion/duplication,単一遺伝子病のスクリーニングにおいては,遺伝カウンセリングはより複雑となり,偽陽性率は高くなり,臨床で用いるためにはさらなる検証が必要である.

  • 文献概要を表示

●NIPT受託サービスは欧米のみならず世界の多くの国々で展開されているが,各国の導入の状況はさまざまである.

●NIPTの普及によって,欧米では従来の侵襲的な出生前検査の実施数は減少している.

  • 文献概要を表示

●NIPTの日本への導入は大きな混乱なく行われ,産科臨床で実施するためのNIPTのデータが蓄積された.

●周産期遺伝カウンセリングを行う施設の整備が促進された.

●出生前診断に関する社会の関心と理解が高まった.

  • 文献概要を表示

●【母体血漿中cfDNA】母体の血漿中に存在する細胞外遊離DNA断片のことを指す.母体成分だけでなく胎盤由来成分が10%程度を占めるといわれている.胎児分画の断片サイズは比較的小さいことが知られている.

●【染色体異数性】特定染色体が配偶子形成期に正しく分配されずに生じる,染色体数的異常の1つである.代表的なものが21トリソミーで,21番染色体のDNA量は通常よりも過剰となり,その領域のSNP genotypesも変化する.

●【massively parallel sequencing(MPS)】次世代シークエンサーを用いてDNAテンプレートを同時並行に配列決定する方法である.NIPTでは,全染色体を網羅的にシーケンシングする方法と,当該染色体に関連する領域のみシーケンシングする方法がある.

  • 文献概要を表示

●双胎妊娠でも単胎妊娠とNIPTの陰性的中率は変わらない.

●確定検査には羊水検査を必要とするが,双胎の一児に対しての選択的中絶は原則として認められていないため,クライエントには難しい選択になるかもしれない.

●胎児21・18・13トリソミー以外についての双胎妊婦に対するNIPTで,その精度についての報告はほとんどない.

  • 文献概要を表示

●NIPTでは陽性・陰性以外に結果の報告ができない「判定保留」がある.日本人では判定保留は初回採血の約0.3%に起こり,2度目の採血でも判定保留となったものは約0.1%ある.

●NIPTでは陰性と報告されていても当該染色体異常の罹患児が出生する「偽陰性」が,日本人では約0.01%ある.

●NIPTでは陽性や判定保留となった場合に,目的とした染色体異常以外の染色体異常やがんなど,本来の検査目的ではない疾患が偶然に発見される「偶発的所見」がある.

  • 文献概要を表示

●NIPTは出生前遺伝学的検査の1つの選択肢に過ぎない.クライアントが各検査を理解して納得した選択ができるよう,正確な情報提供と意思決定の支援が求められる.

●NIPTの最大の特徴は,従来の非確定的検査よりも陽性的中率が高くなることである.

●出生前遺伝学的検査は,望まない結果であった際のことをクライアントが事前に考えておく必要のある検査である.

NIPTの将来展望

  • 文献概要を表示

●NIPTの臨床研究が開始された当時は母体年齢を含むハイリスク群に限定した適応制限は妥当であったが,現在ではすでに科学的な根拠は失われている.

●日本国内のデータから,NIPTの経験的な陽性的中率はこれまで考えられていたより高く,34歳以下の妊婦においても十分な有効性が示唆される.

●日本における1st trimester胎児の21トリソミーの頻度はこれまで知られていたより低いと考えられる.

  • 文献概要を表示

●次世代シークエンシング(NGS)に代表される新しいゲノム技術は,母体血を用いて胎児の染色体数的異常を評価する非侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)を可能とした.

●最近では同様のDNA解析技術を使用した胎児の単一遺伝子病を調べる検査が欧米で実用化されている.

●本稿では,母体血漿中の胎児由来のcell-free DNAを分析して単一遺伝子の変異を調べる原理や,検査の対象となっている単一遺伝子病について,および検査の今後の展望について解説する.

  • 文献概要を表示

●現時点では,国内におけるNIPTの対象疾患は13トリソミー,18トリソミーおよび21トリソミーであり,性染色体数的異常は含まれていない.

●NIPTにより胎児の性染色体数的異常の検出が可能であるが,その陽性適中率は13トリソミー,18トリソミーおよび21トリソミーのそれと比較して劣る.

●性染色体数的異常に関するNIPT偽陽性の原因として「vanishing twin,confined placental mosaicism,母体の性染色体異常あるいは男性からの移植歴(骨髄や臓器)」などが,偽陰性の原因として「胎児に限局した性染色体モザイク」が報告されている.

●性染色体数的異常に関するNIPTは非確定的検査であり,その最終診断には羊水検査などの確定的検査が必要とされる.したがって,妊婦とパートナーが検査の意義を十分に理解するため,検査前後の遺伝カウンセリングは必須である.

  • 文献概要を表示

●NIPTによる全ゲノム解析(genome-wide NIPT)が可能な時代になっている.

●本検査は7Mbレベルでの欠失/重複分析が可能である.

●非確定的遺伝学的検査であり,コピー数バリアント(CNV)の確定には染色体マイクロアレイを行う必要がある.

●幅広い臨床遺伝学領域を網羅するためには,エビデンスの集積が必要である.

  • 文献概要を表示

はじめに

 産婦人科領域では従前から良性疾患や不妊症を対象に腹腔鏡手術・子宮鏡手術が広く行われ,日本産科婦人科内視鏡学会(内視鏡学会)から「産婦人科内視鏡手術ガイドライン」が上梓されている.他方,婦人科悪性腫瘍,特に早期子宮がんの治療成績は良好であり,多くの患者が再発なく経過することから,治療後の生活の質や整容性の保持と早期社会復帰を目指して,婦人科悪性腫瘍に対しても内視鏡手術を行うことが求められる機会が増えている.

 ガイドライン第二版では悪性腫瘍に対する腹腔鏡下手術についてのCQが設けられ1),2016年4月からはⅠA期相当の子宮体がんに対して「K879-2腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術(子宮体がんに限る)」が保険適用となった.2018年2月の第389回中央社会保険医療協議会総会において2018年度診療報酬改定が厚生労働大臣に答申されたことを受け,2018年4月から子宮頸がんに対しても保険診療として腹腔鏡手術を行うことが認められ,「K879-2」の名称も「腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術」に改められた.さらにⅠA期相当の子宮体がんに対してdaVinciサージカルシステム®などの手術支援用ロボット(内視鏡手術用支援機器)を用いて腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術を行うことも「K879-2」として認められた.

 新しい術式が保険適用となったことを受けて,現在,内視鏡学会では悪性腫瘍手術に関する多くのCQを盛り込む形で第三版のガイドライン改訂作業を進め,本年度中の上梓を目指している.またこれまで日本産科婦人科学会(日産婦)と内視鏡学会や日本婦人科腫瘍学会など産婦人科関連の学会だけではなく,日本内視鏡外科学会と足並みを揃えて申請を進めることで,過去2回の保険改訂で「K879-2」が新設,適応拡大されてきた経緯がある.ただ現時点では,施行すればするほど赤字となる術式があること,難易度の異なる手術が1つの算定コードにまとめられており難易度に応じた加算を目指す必要があること,保険適用となっていない他の術式についても保険適用を獲得する必要があること,など引き続き取り組むべき課題も多い.2020年に適切な保険改訂および適用拡大を勝ち取るためには産婦人科全体で,「K879-2」を適正に運用することと,次にどの術式が保険適用を目指すべきかについて意見を統一しておくことが肝要である.本稿では,新適用となった「K879-2」の要件と,これから保険適用を目指す術式についても解説する.

連載 教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール

  • 文献概要を表示

症例

▶患者 26歳.

▶既往歴 特になし.

▶妊娠歴 0妊0産.

▶理学的所見

 身長166cm,体重82kg,BMI 29.7,体温38.4℃,心拍数122/分,血圧109/68mmHg,SpO2 98%.

  • 文献概要を表示

選択基準

 満期または満期を超えた妊婦を対象とした.この段階で危険因子がある妊婦は,通常,介入が必要となることから,合併症リスクの低い妊婦のみを対象として,陣痛誘発群と待機管理群(陣痛の自然開始まで待つ)を比較した.満期または満期を超えた,陣痛開始前破水における陣痛誘発は今回のレビューには含まれていない.

連載 Estrogen Series・179

  • 文献概要を表示

 米国では,テストステロン(testosterone)の使用は2001年から2011の10年間に,実に3倍に増加した.アンドロゲンは性的ポテンシーの増大,またボディビル・重量挙げでの筋力増強などに際して有効な増強剤として,米国で10年間以上使用されてきた.実際,アンドロゲンまたはテストステロンはさまざまなスポーツにおいてプロでもアマチュアでも頻用されているらしい.アンドロゲンは経皮的に自己投与が可能なため,簡便で今でも使用者は多いが,これらのテストステロン使用は,その大部分が明瞭な医学的適応がないもの,とみられている.

 さらに2013年および2014年に,テストステロン使用者に心筋梗塞および脳卒中がより多くみられるとの報告が発表された.また,米国FDAは2014年1月31日付けのSAFETY BULLETINにて,テストステロン使用の安全性の問題を取り上げた.

  • 文献概要を表示

▶要約

 症例は38歳,5妊4産.妊娠反応陽性のため前医を受診し,胎児死亡の診断で,最終月経より妊娠19週2日に当院を受診した.超音波検査では子宮内に胎児を認めず,子宮漿膜面に胎盤付着,その頭側に浸軟した胎児を認め,腹腔妊娠と診断した.造影CTおよびMRI検査にて胎盤は子宮動脈より栄養され,子宮漿膜面に広範に癒着していると考えられた.術中所見では胎盤は子宮と右卵巣固有靱帯に及んでおり,子宮と右付属器とともに胎盤を完全に摘出することができた.術後経過は良好で,術後8日目に退院となった.

 妊娠中期以降の進行した腹腔妊娠では,手術時に胎盤の処理に苦慮することが多い.術前の造影CTやMRI検査は,胎盤の栄養血管や癒着の程度の評価に有用であると考えられた.

  • 文献概要を表示

▶要約

 Nuck管水腫は,胎生期に円靱帯が形成される際,腹膜鞘状突起が鼠径管内に入り込み開存したまま残存したNuck管に,液体貯留をきたしたものである.用手的圧迫で縮小する交通性と,変化しない非交通性に分類される.小児例が多く,悪性の再発をきたした報告は過去にない.症例は63歳.卵巣粘液性境界悪性腫瘍ⅠC2期(pT1c2NXM0)に対して開腹根治術を施行後3か月で左鼠径部の腫脹を自覚した.術後12か月で施行した胸腹部骨盤造影CT検査で,Nuck管水腫,水腫内再発疑いと診断し,開腹術を施行した.腹腔内所見で左内鼠径輪にヘルニア門を認め,ヘルニア囊から遺残している子宮円靱帯に沿って索状構造物を認めた.ヘルニア囊と索状構造物を摘出し,鼠径ヘルニア手術に準じ修復した.初発時の摘出標本とNuck管水腫内の組織像が似ており炎症を伴っていることから,もともと交通性で円靱帯に沿ってNuck管内に再発したため水腫となり,炎症により非交通性となったと考えられた.

--------------------

目次

読者アンケートのお願い

バックナンバー

次号予告・奥付

基本情報

03869865.73.2.jpg
臨床婦人科産科
73巻2号 (2019年3月)
電子版ISSN:1882-1294 印刷版ISSN:0386-9865 医学書院

文献閲覧数ランキング(
3月23日~3月29日
)