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はじめに
産婦人科領域では従前から良性疾患や不妊症を対象に腹腔鏡手術・子宮鏡手術が広く行われ,日本産科婦人科内視鏡学会(内視鏡学会)から「産婦人科内視鏡手術ガイドライン」が上梓されている.他方,婦人科悪性腫瘍,特に早期子宮がんの治療成績は良好であり,多くの患者が再発なく経過することから,治療後の生活の質や整容性の保持と早期社会復帰を目指して,婦人科悪性腫瘍に対しても内視鏡手術を行うことが求められる機会が増えている.
ガイドライン第二版では悪性腫瘍に対する腹腔鏡下手術についてのCQが設けられ1),2016年4月からはⅠA期相当の子宮体がんに対して「K879-2腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術(子宮体がんに限る)」が保険適用となった.2018年2月の第389回中央社会保険医療協議会総会において2018年度診療報酬改定が厚生労働大臣に答申されたことを受け,2018年4月から子宮頸がんに対しても保険診療として腹腔鏡手術を行うことが認められ,「K879-2」の名称も「腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術」に改められた.さらにⅠA期相当の子宮体がんに対してdaVinciサージカルシステム®などの手術支援用ロボット(内視鏡手術用支援機器)を用いて腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術を行うことも「K879-2」として認められた.
新しい術式が保険適用となったことを受けて,現在,内視鏡学会では悪性腫瘍手術に関する多くのCQを盛り込む形で第三版のガイドライン改訂作業を進め,本年度中の上梓を目指している.またこれまで日本産科婦人科学会(日産婦)と内視鏡学会や日本婦人科腫瘍学会など産婦人科関連の学会だけではなく,日本内視鏡外科学会と足並みを揃えて申請を進めることで,過去2回の保険改訂で「K879-2」が新設,適応拡大されてきた経緯がある.ただ現時点では,施行すればするほど赤字となる術式があること,難易度の異なる手術が1つの算定コードにまとめられており難易度に応じた加算を目指す必要があること,保険適用となっていない他の術式についても保険適用を獲得する必要があること,など引き続き取り組むべき課題も多い.2020年に適切な保険改訂および適用拡大を勝ち取るためには産婦人科全体で,「K879-2」を適正に運用することと,次にどの術式が保険適用を目指すべきかについて意見を統一しておくことが肝要である.本稿では,新適用となった「K879-2」の要件と,これから保険適用を目指す術式についても解説する.
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