症例
成人のNuck管水腫内に再発した卵巣粘液性境界悪性腫瘍の1例
竹内 正久
1
,
井上 貴史
1
,
大川 彦宏
1
,
中村 聡
1
,
卜部 省悟
2
,
板東 登志雄
3
1大分県立病院産科婦人科
2大分県立病院臨床検査科
3大分県立病院消化器外科
pp.285-288
発行日 2019年3月10日
Published Date 2019/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409209611
- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
▶要約
Nuck管水腫は,胎生期に円靱帯が形成される際,腹膜鞘状突起が鼠径管内に入り込み開存したまま残存したNuck管に,液体貯留をきたしたものである.用手的圧迫で縮小する交通性と,変化しない非交通性に分類される.小児例が多く,悪性の再発をきたした報告は過去にない.症例は63歳.卵巣粘液性境界悪性腫瘍ⅠC2期(pT1c2NXM0)に対して開腹根治術を施行後3か月で左鼠径部の腫脹を自覚した.術後12か月で施行した胸腹部骨盤造影CT検査で,Nuck管水腫,水腫内再発疑いと診断し,開腹術を施行した.腹腔内所見で左内鼠径輪にヘルニア門を認め,ヘルニア囊から遺残している子宮円靱帯に沿って索状構造物を認めた.ヘルニア囊と索状構造物を摘出し,鼠径ヘルニア手術に準じ修復した.初発時の摘出標本とNuck管水腫内の組織像が似ており炎症を伴っていることから,もともと交通性で円靱帯に沿ってNuck管内に再発したため水腫となり,炎症により非交通性となったと考えられた.
Copyright © 2019, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.