臨床婦人科産科 73巻3号 (2019年4月)

今月の臨床 いまさら聞けない 体外受精法と胚培養の基礎知識

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●体外受精は一般的で安全な不妊治療との認識があるが,受精のプロセスや胚の発育において,生理的な受精や胚発生と異なる側面をもっている.

●卵細胞質内精子注入法は体外受精よりも多く実施されているが,受精のプロセスが生理的なそれと大きく異なる.また,先体酵素が卵子内に持ち込まれることによるダメージが危惧される.

●胚の発生については,経時的な胚発生の各状態を理解し,異常発生があったときに的確にその異常を認識できることが大切である.

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●体外受精では,適切な排卵誘発管理により成熟した卵子を採取するとともに,受精能の高い精子をいかに準備できるかが重要である.

●顕微授精は,重症男性因子を中心とした受精障害に対して有効な治療法であり,受精率が高いからといって適応外の患者に行うべき方法ではない.

●体外受精と比較して,顕微授精による児の先天異常や神経発達障害などのリスクが指摘されるようになってきている.

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●異常受精は無前核,一前核,三前核,四前核以上に分類されるが,無前核とそれ以外の異常受精でそれぞれの発生機序は異なる.

●不受精の場合,卵子の活性化が主な原因と考えられる.

●異常受精と思われた一前核,三前核の取扱いとしては,胚盤胞まで培養し,将来的には次世代シークエンスによる着床前診断や遺伝子診断が必要になるだろう.

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●出産に至る胚の雌雄前核消失直前の雌性前核と雄性前核の大きさはほぼ同じである.

●reverse cleavageと呼ばれている分裂の後戻り現象には,2つの異なったパターンがある.

●滑面小胞体凝集塊(sERC)を有する卵由来胚は,初期胚発生過程において,第二極体放出失敗および細胞分裂失敗が起こる頻度が高い.

良好胚盤胞とは 沖津 摂
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●胚盤胞はGardner分類などを用いてその形態から評価するのが最も簡便で有益な方法である.

●トップグレードの胚が複数存在する周期では,卵細胞質内の異常の有無や前核消失時間,第一卵割時間,異常分割(1細胞期から3細胞期,4細胞期などへの直接分割)の有無など,胚盤胞に至るまでの途中経過のパラメータを二次的に活用することが有益である.

●タイムラプス録画装置は特に二次的パラメータを検出するには有益である.

●評価者間のばらつき是正には,自動評価ソフトウェアや胚盤胞の体積測定機器などの導入が有効である.

●胚盤胞評価には時間軸を考慮する必要がある.

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●タイムラプスシステムによるヒト初期胚の動的解析により,受精および卵割過程の詳細が明らかとなった.

●タイムラプス観察により,ヒト初期胚の発生過程における種々の現象やタイムコースを踏まえた胚評価が可能となった.

●ヒト胚を胚盤胞期まで長期間体外培養することは,胚に対して負の影響を与える可能性があることが明らかとなった.

胚培養の実際

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●日本における生殖補助医療により出生した児の約8割は凍結胚によるものである.

●凍結胚移植など採卵周期と胚移植周期が異なる場合,移植日に移植した胚の日齢を加味して分娩予定日を決定する.

●凍結胚にて妊娠した場合,自然妊娠と比較して出生児体重が大きくなることが多く,癒着胎盤や妊娠高血圧症候群を発症するリスクが高くなる.

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●単一胚盤胞移植により多胎妊娠の発生機序が明らかになった.長期培養により1絨毛膜性双胎のリスクが上昇する.

●胚盤胞までの長期培養により,分割期胚移植に比較し着床率が向上する.卵巣過剰刺激症候群(OHSS)軽減・多胎防止の目的からfreeze-allのうえでの単一胚移植が推奨される.

●長期培養により体外受精児の男児率が高く,凍結融解移植児の出生児体重増加,早期産率上昇,ゲノムインプリンティング異常症の発生頻度増加傾向がみられる.

胚培養液の進歩 宇津宮 隆史
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●培養液は当初,体細胞培養液を改良して作製され,無機塩類とグルコースが主体であり,その後,アミノ酸やキレート剤が添加された.

●胚の成長に合わせたsequential mediumと胚の選択吸収に任せたsingle mediumが作製され,効果は同等であり,その長短を理解して選ぶべきである.

●ヒト卵管内液の分析に基づいた新しい培養液が日本卵子学会主導で開発され,実用化された.従来の培養液に比べ,その成績は良好である.

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●未熟卵の採卵を避けるためには,適切な刺激法と卵胞径やE2値などから判断される採卵決定のタイミング,トリガーの方法が重要である.

●採卵時未熟卵だった場合の培養として,IVM mediumやblastocyst mediumを使用する方法,卵胞液,卵丘細胞を使用する方法,成長因子を添加する方法,などが試みられているが,いずれもまだ確立された方法ではない.

●未熟卵で採取されても,採卵当日のうちにMⅡ卵に成熟した卵子にICSIを実施した場合,採卵時MⅡ卵に比し,受精率・良好胚率は低下するが,胚盤胞に到達した胚の妊娠率は良好である.

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●着床しない原因の主たるものは胚の染色体異数性であり,女性の加齢とともに発生率は上昇する.

●良好胚を複数回移植しても着床が得られない場合は着床不全を疑い,不育症に準じた精査・治療を行う.

●子宮内フローラやERAなど,着床障害と子宮内環境の関連に関して研究がなされ,臨床でも実用が始まっている.

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●IVMはPCOS/PCO患者に対して,OHSSのリスクのないARTを提供することができる.医療の最重要事項は安全性である.安全性を考えれば,PCOS/PCO患者に対するARTの第一選択肢としてIVMを用いるべきである.

●IVMの技術的困難さが懸念されているが,われわれの19年間の実績で示されているように,採卵や培養業務は通常ARTに比べ特段困難ではない.

●IVMの臨床成績は日本産科婦人科学会のART臨床成績と同等である.当院においては通常ART成績に比べ低率ではあるが,最新のhCG非投与の試みでは妊娠率の向上がみられる.PCOS/PCO患者に対してはARTの第一選択肢として,IVMと通常ARTを同列に提示してよいと考えている.

連載 教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール

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症例①

▶患者

 35歳,G3P0SA2,身長160cm,体重80kg.

▶主訴

 不妊外来で妊娠成立するも異所性妊娠の疑い.

▶既往歴 30歳 : 腹腔鏡下卵巣開孔術.

▶現病歴

 不妊外来へ通院中に,クエン酸クロミフェン内服,hCG筋注,配偶者間人工授精にて妊娠が成立した.人工授精後23日目(妊娠5週2日),経腟超音波断層法にて子宮内に胎囊は確認できず,付属器周囲にも認めなかった.血中hCG値は6,249mIU/mLであった.異所性妊娠の疑いで,正常子宮内妊娠の可能性はないと診断し入院とした.

連載 Obstetric News

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 陣痛誘発はさまざまな妊娠週数で行われるが,多くの母体と胎児状態に対し,産科医療の重要な問題点を含んでいる.

 妊娠41週以降に合併症がない妊婦に対して行う陣痛誘発は,周産期罹患と死亡のリスクを減少させる可能性があることを示すデータもある.例えば,22の無作為化臨床試験を対象にしたメタ分析では,待機管理に比べ,妊娠41週以降の陣痛誘発は周産期死亡(相対リスク0.32),帝王切開率(相対リスク0.89),胎便吸引(相対リスク0.50)をそれぞれ有意に減少させたことが示されている.反対に,合併症がない妊娠で妊娠39週未満に行う陣痛誘発は,呼吸性合併症リスクの増加に関連するということは十分に確立されている.

連載 Estrogen Series・180

米国の自動車番号 矢沢 珪二郎
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 米国の自動車に割り当てられる州の登録番号(ライセンス プレート)は,アルファベットと数字をランダムに組み合わせたものである.

 例えば,TDP 684などとなる.第二次世界大戦中に各自動車に振り当てられた番号は,まったくランダムになされていた.

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▶要約

 Growing teratoma syndrome(GTS)とは,胚細胞腫瘍に対する化学療法中または後に病変が緩徐に増大し,その病変が病理学的に成熟奇形腫を呈する疾患である.GTSは診断までに数年を要した症例も報告されているが,20年以上経って診断された症例は稀少である.今回,初回治療から23年を経てGTSと推定された1例を経験したので報告する.症例は46歳,未産婦.近医内科で腎機能障害の精査の際に腹腔内腫瘍を指摘され,CA125,CA19-9の上昇から婦人科疾患を疑われ当科へ紹介となった.腹部単純CT検査にて,腹腔内に著明な石灰化と脂肪を含有する複数の腫瘤性病変を認め,肝臓実質まで病変を認めた.既往歴として,23歳時に他院で進行卵巣癌の診断で,手術加療および術後化学療法が施行されていたが詳細不明であった.既往歴と諸検査の結果よりGTSが第一に考えられた.開腹術での腫瘍生検を行ったところ,標本の病理組織診断は成熟奇形腫であり,GTSと推定された.

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基本情報

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臨床婦人科産科
73巻3号 (2019年4月)
電子版ISSN:1882-1294 印刷版ISSN:0386-9865 医学書院

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