臨床婦人科産科 71巻9号 (2017年9月)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

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●PGD,PGSといわずに,「PGT(PGT-M,PGT-SR)」,「PGT-A」を使うことが望ましい.

●国内ではPGT-M,習慣流産を対象としたPGT-SRが,症例ごとの審査を経て実施されているが,PGT-Aは実質的に禁止されており,情報は諸外国の論文からしか得られない.

●PGT-Aは理論的には有効と思われるが,胚のモザイク,胚の自己修復能,解析技術の限界などから,PGT-Aの有効性はいまだ明確には示されていないため,今後,国内で実施される場合には,研究的診療として十分な説明と同意のもとで実施する必要がある.

胚側因子による流産

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●「画像で確認できない妊娠のロス」や「部位不明の妊娠(PUL)」には「生化学的妊娠」と一部の「臨床的流産」や「子宮外妊娠」が含まれる.

●不育症における流産について,米国生殖医学会(ASRM)は「臨床的流産」のみとしているが,欧州生殖医学会(ESHRE)は「生化学的妊娠」も含むべきとしている.

●生殖補助医療実施例では生化学的妊娠と診断される率は高く,着床前スクリーニング(PGS)により生化学的妊娠が減少するかを検討する必要がある.

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●形態が良好な胚のなかにも染色体異常が半数以上含まれ,特に女性年齢の上昇によりその異常率は上昇する.異常は主として卵子が原因と考えられる.

●卵子形成と精子形成における減数分裂は大きく異なり,長期間の休止期をもつ卵子は異数性異常が多く,精子は減数分裂後に生じる構造異常が多いのが特徴である.卵子形成には,女性年齢の上昇に伴いコヒーシンなどに異常が生じやすくなることが染色体分離異常の原因となっている.また,受精卵(胚)には受精後の分離異常が原因のモザイクも高頻度に存在する.

●流産の大部分は児の染色体異常が原因であり,流産率を低下させる唯一の方法は胚の染色体を解析する着床前スクリーニングである.

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●均衡型相互転座(転座)や逆位,挿入といった均衡型の染色体構造異常を親がもっていると,配偶子が形成される段階で不均衡になり,受精卵も不均衡型になる可能性がある.

●転座の切断点はさまざまであり,不均衡型転座となった場合,ほぼ出生が望めないものから,無症状のものまで差が大きい.

●切断点から,流産率や不均衡により何らかの症状をもって生まれてくる児の確率を求めようとする方法がいくつか考案されてきた.

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●習慣流産においても自然流産最大の原因は胎児(絨毛)染色体異常であり,その発生に影響する因子としては母体年齢が最も重要である.既往流産回数との関連性については明らかではない.

●習慣流産患者においては,染色体正常流産を繰り返す場合もあれば,染色体異常流産を繰り返す場合もありうる.

●自然流産を繰り返した場合や不育症患者に対して治療を行うも再度流産に至った場合は,その後の診療のために流産染色体検査を考慮すべきである.

母体・子宮側因子による流産・不育症

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●抗リン脂質抗体が不育症のリスク因子として重要であり,「抗リン脂質抗体症候群」の診断基準が示されているが,既往異常妊娠歴などについて診断基準には合致しない「抗リン脂質抗体陽性不育症例」も存在する.

●抗リン脂質抗体による不育症の発症メカニズムとして,絨毛間腔における血栓形成亢進とともに抗リン脂質抗体による絨毛組織に対する直接障害が重要である.

●抗リン脂質抗体陽性不育症に対する治療については,発症メカニズムを考慮した場合,抗凝固療法に加え免疫抑制療法を併用することが理論的に重要である.

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●第Ⅻ因子欠乏症は,出血性素因がなく,血栓性素因に関しても証明されていない.また不育症との関連性についても不明である.

●プロテインS欠乏症は本邦における先天性血栓性素因のなかで最も頻度が高い.静脈血栓塞栓症のリスク因子であり,不育症(特に妊娠中期・後期死産)との関連がある.

●第Ⅻ因子欠乏症合併妊娠とプロテインS欠乏症合併妊娠の問題点は,不育症の治療目的で抗血小板療法や抗凝固療法をすべきかどうかについて確固たるエビデンスがない点である.

子宮形態異常 杉浦 真弓
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●子宮奇形をもつ不育症患者に対する手術の優位性は明らかになっていない.

●双角子宮,中隔子宮,単角子宮,重複子宮といった子宮大奇形は不育症の原因であるが,不妊症との関係ははっきりしていない.

●子宮奇形合併妊娠は周産期異常(反復流産,子宮内胎児死亡,早産,胎位異常,帝王切開,子宮内胎児発育遅延,前置胎盤,常位胎盤早期剝離)の増加と関連があるためハイリスク妊娠として扱い,周産期センターなどでの管理が望ましい.

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●不育症における子宮内膜異常の病的意義や治療意義については,限られた疾患以外は不明な点が多く,いまだ研究途上の分野である.

●不育症における黄体機能不全の病的意義や(特に原因不明不育症に対する)黄体補充療法の有効性を支持する報告もあるが,推奨レベルでのエビデンスはない.

●総合的・系統的な不育症の原因検索を行ったうえで,子宮内膜異常や黄体機能不全の原因としての重み付けを行い,それに基づいた個別的な対応が求められる.

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●高プロラクチン(prolactin : PRL)血症を起こす原因のなかで最も多いのはPRL産生下垂体腫瘍(プロラクチノーマ)であり,次いで視床下部機能障害である.さらに薬剤性や原発性甲状腺機能低下症などが続く.

●PRL値が上昇すること自体が流産の直接的かつ単独の原因であることは証明されていないため,高PRL血症の原因となる疾患を正確に診断し,その病態を把握することが適切な治療につながる.

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●甲状腺機能異常は,亢進であれ低下であれ,着床を阻害して流産リスクが上昇するため,妊娠する以前に甲状腺機能異常の是正を心がけることが肝要である.

●妊娠を希望する女性においては,潜在性甲状腺機能低下症の管理が重要で,血中TSHを2.5μIU/mL未満に,コントロールしておきたい.

●甲状腺機能亢進症への治療は,妊娠中は放射線ヨードの使用は禁忌であることから,妊娠前に診断し,十分コントロールしておく.

連載 教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール

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はじめに

 われわれの施設では,鎖骨上窩リンパ節腫脹を契機にびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma : DLBCL)の診断に至った妊婦を経験し,報告した1).本症例では,身体所見としてみられたリンパ節腫脹は軽度で,血液検査値の異常も軽微であった.この症例をふまえて,周産期における悪性リンパ腫の診断に際して注意すべき点について考えてみたい.

連載 Estrogen Series・164

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 早発閉経に関して,米国産婦人科学会は以下のような推奨と結論を発表している.

*早発閉経では患者は病理学的な状態にあり,単に自然な閉経が促進されたものと考えるべきではない.

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▶要約

 劇症型A群溶連菌感染症は致死率の高い重篤な感染症疾患の1つである.症例は49歳,突然の発熱と下腹部痛を認め救急外来を受診し,受診直後にショック状態に陥った.各種培養からA群溶連菌が検出され,同菌によるToxic shock-like syndrome(TSLS)と診断された.抗菌薬治療に加え,受診から53時間後に腹腔鏡下洗浄ドレナージを行った.その後は全身状態が改善し,第29病日に退院した.A群溶連菌分離株の遺伝子型解析の結果は,emm76型で,Streptococcal pyrogenic exotoxin遺伝子speB,speFを保有していた.劇症型A群溶連菌感染症には外科的介入も含めた早期の治療が必要であり,洗浄ドレナージには腹腔鏡が有用な場合もある.

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▶要約

 子宮頸部明細胞腺癌は,子宮頸癌の0.4%を占める非常に稀な疾患である.今回,子宮峡部を占拠し,原発部位の診断に苦慮した子宮頸部明細胞腺癌の1例を経験したので報告する.症例は36歳,1経妊0経産,2か月前からの不正性器出血を主訴に受診.子宮腟部の所見は正常であったが,子宮頸管内の細胞診と組織診から明細胞腺癌の診断が得られた.骨盤MRIでは子宮頸部から峡部を占拠する5×3cm大の腫瘍を認めた.原発部位が最大の問題点となったが,内診や画像などの臨床所見と,免疫組織学的検討を加えた病理所見から,子宮頸部明細胞腺癌Ⅰb2期の診断に至り,手術療法と術後追加治療を行った.子宮頸部明細胞腺癌は,極端な内向性発育の性格をもち,扁平上皮癌や他の腺癌と比べ発見が遅れやすく,子宮体癌との区別が必要なケースもあるなど,色々と問題点が多いとされている.子宮頸部明細胞腺癌について文献的な考察を加え報告する.

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第33回 日本分娩研究会

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基本情報

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臨床婦人科産科
71巻9号 (2017年9月)
電子版ISSN:1882-1294 印刷版ISSN:0386-9865 医学書院

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