臨床婦人科産科 30巻11号 (1976年11月)

特集 産婦人科内分泌異常症候群

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 古く多くの先人達はいくつかの特異な症候を共通にもつ特殊な病態があることに気付き原因が不明なままに「症候群」としてその臨床像を詳しく観察し,記録に止めた。

 たとえば100年以上も前にChiari (1852),Frommel (1882)らは分娩後の持続的な乳汁分泌と無月経を主徴とする症例を報告したが,今日では彼らの名前だけでその症候群の疾病概念が構想できるまでにポピュラーなものとなったし,1930年も後半になると臨床内分泌学の分野ではStein—Leventhal (1935),Sheehan (1937),Turner (1938),Albright (1937)らがあいついで月経異常を伴う特殊症候群を報告し,この時期は臨床内分泌学の一つのエポックとなった。

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 汎適応症候群を理解しその意義を知るためには,まずある視点を容認することが必要である。この概念は病気に対する一つの考え方を示したことからはじまっている。特異的な器質疾患から派生する非特異的症候群や反応性症候群を重視することである。分析方法は医学進歩の重要な要因であり,現代では化学機器や技術の進歩により微量定量が可能となって診断と治療に利している。しかし,一方で臨床医はなお病因的にも治療的にも不明の病態に出合うことが多い。例として適切な診断の下に手術が行なわれたにもかかわらず,ショック,血管内凝固症候群,無尿等の術後症候群をきたす事実を指摘できよう。

 汎適応症候群は疾患を総括的に把握せんとする一つの学説としてその存在理由があり,機能異常からひき起こされる器質疾患群,さらに精神身体医学等へと連なる医学の思潮でもある1)。感染症において,感染菌とともに生体の感染成立のための条件が問題となることと軌を一にしている。

Ⅱ.臓器別にみた症候群 A.性腺機能異常に関するもの

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 原発性の性腺機能低下は単純性の機能不全によるものもあるが,大部分は性腺の発育異常によるものである。発生原因はまだ完全に解明されてはおらず,卵巣の分化,発育過程の各時期において,またその程度によっても種々の臨床像を示す。家族内発生も多く遺伝学的,細胞学的に興味深い。

 最近染色体および染色質などの細胞学的並びに内分泌学的検査法の向上により多彩な病像が解明されつつある。性腺が形態的にも組織学的にもはっきりしない場合は半陰陽として取扱われるものもあり,これら病像の発生学的理論的方向を決めるものとしていくつかの研究発表者の名が付せられている症候群がある。そのうちでもターナー症候群は代表的である。

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定義

 1935年にStein & Leventhal1)が両側卵巣の被膜の肥厚を伴う嚢胞性変化が臨床的には不妊,無月経または稀発月経,男性型多毛,肥満などの原因となることをはじめて報告した。彼らは組織学的検査の目的で卵巣を楔状切除したところ約90%の症例に排卵性周期が回復することに驚き併せて報告し,それ以後Stein-Leventhal症候群が独立した疾患として取り扱われるようになった。

 卵巣の形態的変化は時に鵞卵大に至る種々の大きさの腫大を示し,粗大な隆起を示すやや固い光沢のある白膜に被われ,割面には大小多数の嚢胞が見られ,その中には漿液性黄色の透明液を入れている。組織学的には正常卵巣における白膜の厚さの平均約100μに対し本症では333μ(144-594μ)と肥厚しており,嚢胞が大きいほど内腔の表層をなす顆粒膜層は萎縮し,かつ内莢膜層の肥厚が著明であり,しばしば間質のルテイン化が認められる。

黄体機能不全症候群 木川 源則
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定義

 排卵後に形成される黄体の生理的意義は,progesteroneを産生し,子宮内膜に作用して妊卵着床の態勢を準備することである。黄体が活発にprogesteroneを産生する期間は,2週間であるが,その機能に欠陥があってprogesterone産生の量や期間が不十分の場合黄体機能不全と呼ばれる。黄体機能不全では子宮内膜に十分な分泌像変化が起らず,着床が障害される。したがって黄体機能不全は不妊の原因として重要視される。また黄体期の短縮による月経の周期異常やprogesterone産生低下による機能性子宮出血の原因ともなる。

Hepato-ovarian症候群 福西 秀信
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定義

 肝・胆嚢機能障害があり,このために月経前乳腺症や月経障害,不妊,流産などの卵胞ホルモン過剰状態からくると思われる諸症状を呈するものをHuet (1932年)は,肝・卵巣症候群syndromehépato-ovarienと呼んだ。

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Ⅰ.卵巣欠落症候群

(Castration syndrome)

 〔定義〕卵巣欠落症候群は,両側卵巣が摘除されるか,または放射線照射あるいは全身障害により卵巣の機能喪失をきたし,その結果卵巣ホルモンの欠落に生体が適応できないときに出現する症候群である。

 〔症状〕局所症状として無月経,性器の萎縮,全身症状として自律神経症状が主体となり,頭重,のぼせ,肩こり,冷え症,血管運動神経症状 (顔面発赤,熱感),精神神経症状,代謝障害などが現われる。この欠落症状は卵巣機能が盛んな年代であればあるほど,愁訴が強くなる。

Ⅱ.臓器別にみた症候群 B.視床下部下垂体性異常に関するもの

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Ⅰ.Fröhlich症候群(肥胖性性器発育不全症)

 〔定義〕女性型の肥胖と性器発育不全の2症状を示す1症型として,Frohlichが1901年に報告して以来,この症状を有するものをFrohlich症候群というが,またはBabinski-Frohlich症候群と呼ばれることもある。

 〔病因〕多くは,腫瘍まれに結核などの炎症や外傷などによる間脳下垂体系の器質的あるいは機能的障害により起こるものであり,視床下部原発病変の場合には,まず,視床下部前部の障害により飽食感覚が低下して肥胖が起こり,次に視床下部中後部の性中枢の機能低下により,Gn-RF分泌が障害され二次的に下垂体からのGonadotropin分泌が低下し,三次的に性腺機能の低下が起こるものと考えられている。下垂体に病変が原発する時は性腺機能は早期に侵されるが,病変が視床下部におよんで後に肥胖が出現するものと考えられる。

Chiari-Frommel症候群 広井 正彦
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定義

 本症は1852年Chiari,Braum,Speath1)が初めて報告し,その後1852,1855年にFrommel2)が強調したもので,産褥後の授乳が長期間持続し,無月経を伴うもので,他の器質的な疾患を合併しないものをChiari-Frommel症候群という。

Argonz-del Castillo症候群 広井 正彦
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定義

 産褥後の授乳と関係なく,1942年Schachter1)は乳汁分泌と無月経を訴えた症例を報告,その後,1946年Mendelら2)によりその詳細が報告された。1951年Forbesl,Albrightら3,4)は,乳汁分泌と無月経を訴える症例のうち,トルコ鞍の拡大とprolactin分泌の亢進,gonadotropin機能の低下と性器の萎縮を報告し,本症の原因に中枢の障害があることを指摘した。その後1953年Argonz,Del Castillo5)はhyperestrinism,乳汁分泌,hypo—gonadotropinuriaをもつ4例の症例を報告し,トルコ鞍の拡大が常にみられるものではないことを報告した。したがって今日では主として産褥でない時期の乳汁分泌無月経症候群(galactorrhea—amenorrhea syndrome)中,下垂体腫瘍などの中枢障害を伴うものをForbes-Albright症候,中枢障害を伴わないものをArgonz-Del Castillo症候群と区別している。

 乳汁分泌を伴う症候群を大別すると表1,2のごとくである。しばしぼ乳汁分泌無月経症候群中,末梢肥大症や尿崩症を合併することがある。

Forbes-Albright症候群 広井 正彦
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定義

 1951年Forbes,Albrightら1,2)が乳汁分泌と無月経を訴える症例のうち,トルコ鞍の拡大のあることを報告して以来,無月経乳汁分泌症候群のうち下垂体腫瘍に由来するものをForbes-Albright症候群として区分することになった。近年,腫瘍のみでなく,下垂体に異常を認めたものを総括して本症候群とよんでいる。

視床下部性無月経症候群 仲野 良介
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概念

 女子の性機能が中枢神経系の統禦を受けていることは古くからよく知られた事実であった。つまり,いろいろな精神的要因が,大脳皮質—視床下部—下垂体—卵巣—子宮という一つの系を主軸とする女子性機能の発現に大きな影響を及ぼすことは周知の事実であり,そのもっとも顕著な例を想像妊娠pseudocyesisや戦争無月経Kriegsamenor—rhoeにみることができる。中枢神経系のうちでも,内分泌の中枢が局在する視床下部が特に性機能の発現に大きな影響を及ぼすわけで,視床下部障害に起因する無月経を視床下部性無月経hypo—thalamic amenorrheaとし,病因が複雑多岐にわたるためこれを視床下部性無月経症候群として一括している。ただし,無月経というのはあくまでも症候論上の概念であり,内分泌学的病因論の進歩した今日のレベルからいうとむしろ視床下部性無排卵症hypothalamic anovulation,あるいは三次性性腺機能低下症tertiary hypogonadismといった病因論上の概念を明確に打ち出すことがより望ましいと思われる。

 先にも述べたように,心因性の要因が中枢神経系,特に視床下部をへて無月経の原因となるという意味から視床下部性無月経と心因性無月経psychogenic amenorrheaはしばしば同義語として用いられている。

月経前緊張症候群 森 一郎
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定義

 月経前緊張症とはFrank (1931)1)によってはじめて用いられたpremenstrual tensionの訳語とされているが,彼は月経前の種々の障害のうちで,精神・神経症状を主徴とし,月経開始とともに症状が消散するものをとくにとりあげ,この範疇にいれている。ところが尾島2)は,Frankがあげているような精神・神経症状はもちろん,その他の月経前障害も,程度は異なるがほとんどが月経中やそのあとにも認められることがあるから,月経前・中の諸障害は,一連の,本態を等しくする異常で,月経前緊張症はそのうち精神・神経症状の著しい特殊な型とみなしたがよいとしている。

 一方五十嵐3)は,以上では,月経の発来に伴う性器に起因する障害も含まれるので,これを除く意味でか,月経前数日に出現し,月経終了後は消失する性器外の症候群で,精神緊張を主徴とする症候群と定義している。なおこのほか,症状の発現の時期について,月経前3日以上前から出現するとか,10〜14日頃からはじまるとか,かなり限定して考えているものもある。

更年期障害症候群 森 一郎
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定義

 成熟婦人の性機能は,大脳皮質(環境刺激→心因)—視床下部(情動・自律神経・内分泌中枢)—下垂体—末梢内分泌臓器—標的臓器相互間の密接な関係で調和が保たれているが(図1),更年期(著者は一応37〜55歳頃と考えている)になると,これらの諸臓器の機能には加齢に伴う変化が起こり性腺機能を中心に内分泌環境は一変してくる。

 すなわち,今日までのわれわれの検索の結果では,更年期になるにつれ,卵巣ではgonadotropin(G)のとりこみがしだいに悪くなり,C-AMPは低下し,estradiol (E2)産生の低下,testosterone(T)産生の亢進,progesterone (P)産生の低下へと変わるが,steroid hormone (SH)のこのような傾向は,更年期障害(更障)不定愁訴群の血中所見ではさらに著明になっている。一方,視床下部—下垂体系のGの産生分泌能は,上述の卵巣の変化を反映してか急激に亢進し,閉経からこの傾向が著明になり(更障不定愁訴群ではとくに著明),70歳位までこれが続く。LHとFSHの増加率は,はじめは前者,あとからは後者が高率となっている。

Albright症候群 福西 秀信
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定義

 ① disseminated osteitis fibrosa ② cutaneous pigmentation ③ sexual and somatic precocityの3主徴を示す症例が,Albrightら(1937,1938)McCuneら(1937)により発表されたことからAlbright症候群もしくはMcCunc-Albright症候群とよばれる。

Sheehan症候群 高橋 克幸
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定義

 分娩後に下垂体前葉の壊死によっておこる下垂体機能障害および二次的にこれらの標的内分泌腺の機能が障害されておこる病的状態をSheehan症候群あるいはSimmonds-Sheehan症候群と呼んでいる。Sheehanは下垂体の中等度以上の壊死をおこす原因疾患として,分娩後出血と稽留胎盤などが多いとしているが,その他分娩前出血群,ショック,帝切などもSheehan症候群の原因となることがしばしばあると報告している1)

 下垂体よりgonadotropinを放出させるLH-RHが合成され,実地臨床面で下垂体疾患の診断や治療に用いられるようになったので,既往歴や症状などから比較的容易に診断できるSheehan症候群も,科学的に疾患の軽重度や時には潜在時に早期診断することも可能になった。下垂体壊死は組織の再生が不可能なので,今後は潜在時に発見する方向で本疾患が検討され,早期に治療されることが期待される。

Lorain-Levi症候群 福西 秀信
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定義

 下垂体機能異常に基づく侏儒(pituitary dwar—fism)と性器が小児様で未発育(sexual infantilism)を示すものをいう。Lorainが1871年このような症例を報告し,Levi (1908)はinfantilismを示す症例の中のトルコ鞍の拡大・変形したものを記載したことからこの名がある。

嗅(覚)・性器症候群 福西 秀信
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定義

 嗅覚障害(anosmiaもしくはhyposmia)とhypogonadotropic hypogonadismによる排卵障害を合併した珍しい症候群(Olfacto-genital syn—drome)で,すでに100年以上前にMAESTRE DESAN JUANによって記載されているが,最近になってKallmann (1944)の家族系図に基づく遺伝関係の追求以来,Kallmann症候群ともいわれている。本症候群は女性のみならず男性にもみられる。

Ⅱ.臓器別にみた症候群 C.副腎機能異常に関するもの

副腎性器症候群 鈴木 秋悦
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定義

 副腎性器症候群(Adrenogenital Syndrome)とは,副腎皮質から男性ホルモンが過剰に分泌される結果,性早熟とか男性化などの特徴的な病像を示す症候群で,副腎でのステロイドホルモン生合成に不可欠の酵素系の欠損による先天性副腎性器症候群と,副腎皮質の腫瘍(腺腫,癌)が原因である後天性副腎性器症候群に分ける。

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Ⅰ.Cushing症候群

1.定義

 本症は,副腎皮質性glucocorticoidsの分泌過剰を伴い,原因の如何にかかわらずHarvey Cushing(1932)1)の記載した臨床像,すなわちBuffalo型肥胖(central obesity),高血圧,皮膚線条,多血性満月様顔貌,多毛症,月経異常などを呈する症例を総称してCushing症候群と呼ぶ。このうち特に下垂体性ACTH過剰分泌による両側副腎皮質過形成に基づいたhypercorticolismのあるものをCushing病と呼んでいる。

Ⅱ.臓器別にみた症候群 D.甲状腺機能異常に関するもの

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 甲状腺疾患には様々なものがあるが,それを甲状腺機能の面から整理すると,甲状腺機能異常をおこさないもの,機能亢進をおこすもの(甲状腺機能亢進症)ならびに機能低下をおこすもの(甲状腺機能低下症)の3群に大別出来る。

 しかし,このうち産婦人科臨床にも関係のある甲状腺疾患というと,それは後の2群であり,発生頻度を考慮すると,甲状腺機能亢進症の比重がとりわけ大きい。そこで,本稿では,まず甲状腺機能亢進症を,次いで甲状腺機能低下症を取上げ,それらを内科的側面と産婦人科的側面の両面から眺めて見たいと思う。

Ⅱ.臓器別にみた症候群 E.胎盤機能異常に関するもの

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 胎盤は胎児と母体との間にあり発生学的には胎児の付属物ではあるが,胎児は呼吸作用,物質代謝等生命保持や発育に必要な総ての機能を胎盤に依存している。したがって胎盤の機能不全は胎児の発育,生命をも脅かすこととなる。母体内の胎児の状態を知りこれを管理することは産科臨床上きわめて大切であるがその意味においてもこの胎児の生命線ともいえる胎盤機能を正確にかつ迅速に知り得ることは重要となる。しかし胎盤機能は多岐にわたりその生理機能の総てが明らかとされていない現在,「胎盤機能不全」の定義は,明確でなく臨床的には広く「何らかの原因によって胎児をとりまく環境が障害され,そのために胎児が発育障害をうけ,また生命の危険にさらされる状態」をいい,さらには「これらをもたらす胎盤の機能的器質的異常」をさしている。最近の内分泌学や代謝学の進歩,medical electronicsの導入によってこの胎児および胎盤の生理ならびに病理の解明に新生面を開きつつある。なかでもステロイドホルモン特にエストロゲン分泌に関しては単に胎盤だけではなくその生成には胎児が重要な役割を果している。したがってエストロゲン(estriol)を測定することは胎盤機能のみではなく胎児—胎盤系を一つのunit1,2)としその機能をとらえることとなる。

Ⅳ.症候群鑑別診断法

多毛を伴う症候群 佐藤 恒治
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 Androgenは陰茎,前立腺,精嚢などの発育や男女両性の第一次性徴,libidoを刺激することができるステロイドであり睾丸,副腎皮質,卵巣それに恐らく他の器官からも分泌される。正常女性のandrogenは,その大部分が副腎皮質性のものであるが,卵巣からも分泌されており性毛の発生と維持ならびにlibidoに関与している。しかし副腎性器症候群,Cushing症候群あるいはある種の卵巣腫瘍のように過度のandrogen産生を伴う内分泌疾患では,部分的な脱女性化や体型の男性化,性機能の異常が現われてくる。

 多毛症の原因として考えられているものは表1のようである。男性化症状が著明であり,そのひとつの症状として多毛が認められる副腎性器症候群あるいは卵巣男化胚細胞腫などとは異なって男性化徴候の全くあるいはほとんど認められない。すなわち体毛のみが著明に増加する多毛症(特発性多毛症idiopathic hirsutism)がある。これには民族的,遺伝的因子,体質的因子が関与しているものがあり,たとえば地中海域諸国の白人種には多毛の傾向がみられ,またHamiltonらは白人と日本人に明らかな毛の量の差をみている。

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 内分泌異常症候群およびその周辺の疾患を身長の異常から眺めた鑑別診断法について概説したい。身長の異常は小人症,巨人症に大別される。

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 肥満やるいそうを一症状とする疾患は数多くある。ちなみに田坂・木本・大渕監修「症候学事典」を通覧しても肥満では33疾患,るいそうでは38症候群を数えることができる。このような原疾患の一症状としての肥満症あるいはるいそうは症候性肥満症,症候性るいそう症と呼ばれており,原因とみなされる疾患が見出されない単純性肥満症,単純性るいそうと区別されている。

 肥満症の大部分は単純性肥満症であり,症候性肥満症の占める割合は少なく,原因疾患の特徴が明瞭に現われると鑑別は比較的容易であるが,単純性肥満症でも肥満症の合併症のため症候性肥満症との鑑別が問題となる場合がある。

卵巣腫大を伴う症候群 田中 良憲
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 内分泌異常と関連のある卵巣腫大は,非腫瘍性腫大とホルモン分泌性腫瘍の2群に大別される。ここでは本特集の目的に従って主として前者について分類,診断などを中心に解説したい。

全身倦怠感を伴う症候群 布川 修
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 全身倦怠感を伴う症候群というものが定義上からまだ確立されておらず,さらに内分泌異常を伴う症候群となると非常に広範囲になってくる。ヒトの生体環境はhomeostasisを保つべくhormone,酵素あるいはビタミンなど相互に作用しあっているものである。

 近年,生体のbiorhythmusの研究の進歩はめざましく,それにはたす内分泌の役割は大きく,その分泌異常は何らかの生体balanceのみだれとなり,日常生活を障害するものといえる。

乳汁漏を主徴とする症候群 平野 睦男
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正常の乳汁分泌機序

 estrogen,glucocorticoidおよび成長ホルモンにより,原始乳管が増殖し乳房は発育するが,妊娠初期にはさらにprogesteroneやprolactinも乳房発育を促進する。分娩後,乳汁分泌は主としてprolactinおよびglucocorticoidの関与により開始するものと考えられており,また成長ホルモンやoxytocinもまたこれに関与する。さらに吸引(suckling)刺激は知覚神経から脊髄に伝達され,視床下部に達し,下垂体からの上記ホルモン分泌を促進する。

産褥期における症候群 平野 睦男
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Chiari-Frommel症候群とSheehan症候群

 産褥に合併する内分泌異常症候群としては,Chiari-Frommel症候群とSheehan症候群がある。前者は乳汁漏と無月経を主要症状とし,分娩後の視床下部機能障害によって発症すると考えられている。後者は分娩時の出血またはショックにより下垂体前葉に虚血性壊死を生じ,これにもとづく下垂体前葉機能低下症である。両者とも分娩後に発症するが,その臨床像は全くことなり,この間の鑑別は困難ではない(表1)。

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 性機能分化の異常を伴う症候群には多数の疾患があり,その臨床症状も多岐であるため,これらの疾患を系統的に分類することは難しい。細胞遺伝学,臨床内分泌学などの進歩によりこれら疾患の原因について多くの新知見が得られているが,同一の臨床症状が異なった原因からおこり,またその逆に,一つの原因から程度の異なる種々の性分化異常をおこすことなどで,さらに疾患の分類を複雑にしている。臨床的な便宜上,表1のごとく分類する。性腺分化の異常では多くの場合に染色体の異常を伴い,この中には卵巣,睾丸の両組織を共有する真性半陰陽(true hermaphrodite)も含まれる。一方,男性半陰陽(male pseudohe—rmaphrodite)では性腺は睾丸であるが,外性器または内性器に女性化が認められ,また女性半陰陽(female pseudohermaphrodite)では性腺は卵巣であるが,性器発育に男性化が認められ,多くは性染色体は正常であり,ホルモン作用の異常によるものが大部分である。性分化の異常を伴う症候群の主なものについてこの分類に従い,その臨床症状,診断について述べる。

臨床メモ

産褥乳腺炎と授乳 竹内 久彌
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 授乳中に起こった乳腺炎に対する処置として,授乳を中止させるべきか否かの判断はそれほど簡単ではない。一般に成書には局所の安静と抗生物質の投与が膿瘍形成の予防になると記されているが,必ずしも授乳を中止させなくても良いとする意見もある。

 Marshallら(J.A.M.A.,233,1975)は,CaliforniaのKaiser—Permanente Medical Centerで1973年8月までの2年2ヵ月間に取りあつかわれた産褥乳腺炎についての調査から次のような結果を得ている。すなわち,総分娩数5,155のうち母乳哺育を確立した者は2,534名であったが,それらのうちから65例の急性産褥乳腺炎が散発的に起こっていた。ここでの乳腺炎とは乳腺部の局所的発赤・疼痛と発熱(口内温で38℃以上)を伴ったものをいう。その原因として9例が哺乳停止による乳汁欝滞からであり,8例に乳頭亀裂があった以外は不明である。

トピックス

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 最近,子宮内膜癌が増加しているが,この早期発見に細胞診がよく用いられてきている。このためにわが国でもルーチンに用いられて来ている方法として,腟頸管スメアがあるが,必ずしも検出率がよくなく,常に一定した成績をえにくかった。そこで子宮内膜の掻爬による組織診が行なわれるようになったが,一かき診による他の部位の癌の発見の出来にくいこと,数ヵ所掻爬することによる内膜の障害や出血,感染などの障害もあり,日常の診療に必ずしも広く用いられない傾向にあった。

 このためにらGravleeら1)は噴出式注入器(Jet washer)を考案し,水を子宮腔内に噴出させて表在にある剥離しやすい細胞を集め,これを鏡検することにより診断した。彼は53例の子宮癌患者にこの方法を用いて全てに癌を認めることが出来たと報告した。その後この方式の優秀さが報告され,広く応用されるようになった。

基本情報

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臨床婦人科産科
30巻11号 (1976年11月)
電子版ISSN:1882-1294 印刷版ISSN:0386-9865 医学書院

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