特集 産婦人科内分泌異常症候群
Ⅳ.症候群鑑別診断法
多毛を伴う症候群
佐藤 恒治
1
1群馬大学医学部産科婦人科学教室
pp.940-945
発行日 1976年11月10日
Published Date 1976/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205518
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Androgenは陰茎,前立腺,精嚢などの発育や男女両性の第一次性徴,libidoを刺激することができるステロイドであり睾丸,副腎皮質,卵巣それに恐らく他の器官からも分泌される。正常女性のandrogenは,その大部分が副腎皮質性のものであるが,卵巣からも分泌されており性毛の発生と維持ならびにlibidoに関与している。しかし副腎性器症候群,Cushing症候群あるいはある種の卵巣腫瘍のように過度のandrogen産生を伴う内分泌疾患では,部分的な脱女性化や体型の男性化,性機能の異常が現われてくる。
多毛症の原因として考えられているものは表1のようである。男性化症状が著明であり,そのひとつの症状として多毛が認められる副腎性器症候群あるいは卵巣男化胚細胞腫などとは異なって男性化徴候の全くあるいはほとんど認められない。すなわち体毛のみが著明に増加する多毛症(特発性多毛症idiopathic hirsutism)がある。これには民族的,遺伝的因子,体質的因子が関与しているものがあり,たとえば地中海域諸国の白人種には多毛の傾向がみられ,またHamiltonらは白人と日本人に明らかな毛の量の差をみている。
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